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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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「誰か倒れているでありますよ!」
「……聞いた祭司の特徴と一致するわね」
 吹雪とコルセアは前方にぼろぼろの姿で倒れている花妖精を発見し、特徴からフウラ祭司と判断し、コルセアが他の捜索者に連絡を入れた。

「……気絶をしているだけでありますよ!」
 コルセアが連絡をしている間に吹雪は倒れているフウラ祭司に近付き、脈拍や鼓動を確認していた。

 すると
「祭司は無事か? 酷い怪我だな」
 『ゴッドスピード』で付近を捜索していたエヴァルトが現れ、すぐに『歴戦の回復術』でフウラ祭司の怪我を治療した。

 治療が終了した時、
「ルカ達も来たよ」
 『空飛ぶ魔法↑↑』を使い祭司捜索をしていたルカルカがダリルを引き連れ、駆けつけた。
「治療は済んだみたいだな」
 ダリルは治療が終わっている事を確認した。
 すぐに目覚める様子が無ければ、誰か抱えて森を出るしかないと皆が考え始めた時、フウラ祭司の瞼が震え、声が洩れた。
「……ん」
 ゆっくりと目を開け、自分を心配そうに見ている見知らぬ顔を視界に入れた。
「あなた達は何者ですか?」
 上体を起こし、警戒と不安が入り交じった声音で捜索者達に訊ねた。
「グィネヴィアに頼まれてこの森を助けに来た者だよ」
 ルカルカが皆を代表して自分達の正体を明かした。
「グィネヴィア様と? グィネヴィア様は大丈夫ですか?」
 フウラ祭司はルカルカの口から出た知った名に逆に心配を見せる。グィネヴィアを知っているため困った事になっているのではないかと。
「……」
 フウラ祭司の予想は見事に的中していて皆は少し押し黙る。
「現在、花妖精に助けを求められてそのまま行方不明の状態だ。ただ、無事である事だけは確認している」
 ダリルが今の状況を包み隠さず、フウラに伝えた。
「……そうですか。助けに行っている人はいるんですよね?」
 フウラ祭司の声は沈み、顔をうつむかせるもすぐに顔を上げて、助けに来た者達の顔を見回した。
「あぁ、心配無い。すぐに見つかるはずだ」
 エヴァルトが力強く答えた。
「花冠もあなたの仲間の事も心配無いわ。みんなが花集めや治療をして回ってくれているから」
 コルセアが伝えなければならない大事な事を続いて報告した。
「そうですか。何から何までありがとうございます。本当なら祭司の私がすべき事なのに」
 フウラは祭司らしく丁寧に礼を述べつつ自分の情けなさにぽつり。
「そんな事気にしないでよ。困った時はお互い様!」
「そうよ。不測の事態というものはあるわ」
 ルカルカとコルセアが励ました。
「ところでペンダントを身に付けた子供を見なかったか?」
 早速、ダリルは甚五郎の連絡で知ったフォリンについて詳細を訊ねた。
「……その子が犯人ですか?」
 フウラ祭司はダリルの質問の意図を知り、逆に問いかけた。
「……そうだ。もし知っているのなら怪しい所がなかったか教えてくれないか」
 ダリルはもう一度同じ質問をフウラ祭司にした。
「泉の方に散歩に行っていている間に花冠が盗まれていてみんなを何とかしようとして巻き込まれたので私は知りません。多分他の子もほとんど知らないと思います。あちこち飛び回ったり遊んだり植物の世話を一生懸命している子達ばかりですから」
 フウラ祭司は申し訳なさそうに頼りにならない答えを口にした。
「……陽気で楽しい森なんだね。話を聞いているとこの姿が元の森なんて思えないよ。浄化をしていけばいつかはこれが真の姿でなくなる。そうでしょ?」
 ルカルカはフウラの答えにがっかりするどころか素敵な場所なんだと思うばかり。
「……はい、そうなればいいと思っています。でも今回の事が影響して時間はもっと掛かってしまうでしょうけど。今はそんな事を言っている場合ではありませんね。早く花冠を作ってみんなを助けなければ」
 フウラ祭司はふらりとしながらも立ち上がり、羽を慎重に羽ばたかせた。
「森の外まで護衛するでありますよ!」
 と吹雪は援護を名乗り出る。
 フウラ祭司の護衛をしながら迅速に森を脱出しようしたが、そうは上手くいかなかった。
「……話し込んでしまったようだ」
 ダリルは前方から攻めて来る襲撃者を見やった。
「たくさんいるね。でも心配無いよ。ルカ達が守るから。あ、そうだこれ、ルカ達が途中で見つけたんだ。花冠に使って」
 ルカルカはにっとフウラ祭司に笑いかけた。その際、自分達が回収した花の事を思い出し、白や黄色、橙や桃色などのカラフルなポーチェラカを託す。
「はい。ありがとうございます」
 フウラ祭司はしっかりとポーチェラカを受け取った。
「ルカ達がひき付けている間にここを離れて」
 ルカルカはダリルと共にフウラ祭司を守るためここに残る事に決めた。
「おい、背後から様子のおかしい花妖精が来るぞ」
 エヴァルトは背後、北からさらに様子がおかしい花妖精が攻めて来ている事に気付いた。
「様子がおかしい? もしかして北から? それならランタンは効果が無いわ」
 エヴァルトの言葉からコルセアは厄介な襲撃者に狙われた事を知る。ランタンが無効である事は情報共有で知っている。
「相手が何かする前に気絶させるでありますよ!」
 フウラ祭司を守るべく吹雪はコルセアと共に背後の襲撃者の相手をする事に決めた。
「……様子がおかしいとはどういう事ですか? 北で何か異変が起こっているのですか」
 北が大変な事になっている事を知らないフウラ祭司は詳細を聞きたがるが、今は話している時間は無い。
「少しな。それより、体は大丈夫か?」
 今すぐフウラ祭司を安全な場所に連れて行きたいエヴァルトは質問に答えるよりも体調を気に掛ける事を優先した。
「大丈夫です。これ以上、お世話になる訳にはいきません」
 フウラ祭司はしっかりとした口調でエヴァルトに答えた。もうあれこれ聞くのは後回しにしようと決めたようだ。
「じゃぁ、真っ暗闇にするよ。その隙にここを離れて!」
 ルカルカはフウラ祭司に攻撃が行かないように【常闇の帳】地球人用で周囲を数秒だけ暗闇に満たした。
「よし、行くぞ」
「はい」
 エヴァルトはフウラ祭司を引き連れ、襲撃者のいない道へと急いだ。

 闇は数秒経ってからかき消え、視界が戻った襲撃者が襲いに来る。ルカルカは『2023年モテ期』で惹き付け、もっと厄介な花妖精達と戦闘中の吹雪達の方に行かないようにした。
「少しだけ大人しくしててね」
 ルカルカは如意棒で次々と薙ぎ払って気絶させた。
「そちらはどうだ?」
 ダリルは『グラビティコントロール』で重力を操作して意識喪失にしながら吹雪達の案配を訊ねた。

「終わったでありますよ!」
 『先制攻撃』で吹雪が襲撃者よりもいち早く動き、次々に『手刀』で気絶させ、
「大丈夫よ」
 コルセアが襲う前に地面に伏した花妖精の様子を看ていた。怪我は『歴戦の回復術』で何とかした。幸い気絶しているだけだった。
 この後すぐにローズ達が駆けつけたので任せて吹雪達とルカルカ達はフウラ祭司達を追いかけた。

 退避したエヴァルトとフウラ祭司。
「それで北では何が起きているのですか?」
 森の事が気になるフウラ祭司は再びエヴァルトを問いただした。
「……それは」
 エヴァルトは北に現れた妨害者に保管庫を破壊された事などを話した。
「……保管庫はまた作ればいいですが、みんなが心配です」
 事情を知ったフウラ祭司は仲間の命が奪われてしまうのではないかと気が気でない。
「……そうだな」
 エヴァルトは犠牲者が出ている事を知っていたが脱出してから話す方が良かろうとフウラ祭司を気遣って口にしなかった。話して落ち込んで逃げる力を失わせてはいけないからだ。
「……そうですか」
 それっきりフウラ祭司は仲間の心配について口にしなかった。祭司としての仕事をするのが先だと意を決したようだった。
 少しして吹雪達とルカルカ達と合流し、がっちりと祭司の護衛をしながらそのまま森を脱出した。空から脱出しても良かったのだが、フウラ祭司が南方の様子を見たいと訴えたので陸路で行く事にした。途中、もエースが再生した道に出会い、フウラ祭司は大層驚いていた。皆は誰が作り出したのかすぐに分かり、エースの名を口にしていた。
 そして、森を脱出してからフウラ祭司に森の惨状が詳しく伝えられ、落ち込む様子も見せるもすぐに祭司らしく毅然と振る舞っていた。