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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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「静か過ぎるわね。逆に何か起こりそうな予感がするわ。みのり、大丈夫?」
 アルマーが周囲の惨状を一見した後、傍らにいる菊花 みのり(きくばな・みのり)に声をかけた。みのりが気になると言って付き添って森の西方に来たのだが、森の様子にみのり身を心配していた。
「……声が……求める……声が……きこえ……ます」
 当のみのりは青い瞳を宙にさまよわせ、アルマーにか細く答えながらぼつぼつと歩いている。襲撃者を気にしている様子は全く無い。
「みのり、何が聞こえたんだ?」
 みのりを護衛するグレン・フォルカニアス(ぐれん・ふぉるかにあす)がみのりに訊ねた。
「……皆さんには……声が聞こえないの……ですね」
 グレンに振り向く事無くみのりは自分以外誰も見たり聞こえていない事を口にして急に足を止めた。みのりの瞳と耳には常人には聞こえない見えないものを入れたり映したりするのだ。
「みのり、どうした?」
「みのり」
 グレンとアルマーは急に足を止めたみのりを心配し声をかけた。この二人は、みのりと同じものを見たり聞いたりは出来ないが、心底みのりを大切に思い、守る事を第一に考えているのだ。
「……君達が……浄化を……望んでいるなら……花の…場所、教えて……ください」
 みのりは花冠を失い色濃く森をさまよう悲しさ、怨念、悔恨の抱く亡き人々の姿や声を聞いていたのだ。
「……必ず……花冠を……作り……ます」
 みのりは亡き人に話しかけ続ける。
「……そちら……ですか」
 みのりは導かれるまま再び足を動かす。アルマーとグレンはみのりを守るためにそれぞれ左右を固めていた。
「あら?」
 みのりを守護中のアルマーに連絡が入り、急いで応対した。
 連絡終了後、
「……連絡は誰からだ?」
 グレンが連絡内容を訊ねた。
「それは……」
 アルマーは二人に連絡内容を話した。相手は北都からだった。花保管庫の居場所とそこに要救助者がいる事を伝える内容だった。しかし場所があまりにも離れている事、みのりが花探しをしているため断るしかなかったのだが。

 花探し開始後しばらく。
「花探しですか?」
 木枯と共に花保管庫からの帰りである稲穂がアルマーに声をかけた。
「もしかして保管庫に?」
 アルマーは木枯達の手にある大量の球根や種から来た場所を知ったのだ。
「そうだよ。球根も種も怪我人も助けたよ」
 木枯が花保管庫で起きた事を簡単に報告した。
「そう。お疲れ様」
 社交的なアルマーは木枯達を笑顔で労った。

 隣では
「……こちら……ですか」
 みのりが亡き人達と会話をしていた。
「鬱陶しいな」
 みのりの隣にいるグレンが何気に強く凶暴化している花妖精達を七輝剣で手加減をしつつ『チェインマイト』で取り囲む大量の花妖精達を気絶させていた。悪い森ではないのでそこに住む花妖精もまた悪人ではないため皆峰打ちである。実はみのり達を襲う花妖精はみのりに潜む魔力に微量ながら影響を受けていたのだが、当人もアルマーやグレンも知らない事である。

「何かいるのかな?」
「……何も見えないですね」
 みのりの発言できょろりと周辺を見回す木枯と稲穂。当然何も見えないし聞こえない。
「みのりは普通の人には見えたり聞こえないものが分かるの」
 アルマーがみのりの代弁者として木枯達にみのりが関知しているものについて話した。
「……そうなんですか」
 稲穂はそう言って静かになった。元記憶喪失の幽霊だったという経歴から何かを考えている表情だった。
「この森にいる浄化を求める人の思いとかが漂っているのかもね」
 木枯はみのりのように見えたり聞こえたりはしないが、何があるのかは予想出来る。
「おそらくね。その人達からみのりは花の場所を教えて貰っているみたいなの」
 アルマーがみのりの無事を時々確認しながら木枯達に答えた。
「……その人達は少しだけ救われたかもしれませんね。自分達の声や姿を見る事が出来る人に出会えて……誰にも見えなかったり言葉が届かないほど寂しい事はありませんから」
 稲穂は見えぬ人達がみのりに花の場所を教えた心境が何となく分かるような気がしていた。
「……きっと浄化されるはずだよ」
 木枯は稲穂が何を考えているのかを察し、笑顔で励ました。
「そうよ。花はきっと見つけるわ。それじゃ」
 アルマーも笑顔で言ってからみのりと共に花探しに戻った。
「……木枯さん、行きましょう」
「そうだねぇ」
 稲穂と木枯は森の外へと急いだ。その途中、木枯達はシュウメイギク、ショウキズイセンを摘み取った。森の外に出てから犯人についてや現在大変な状況である事を知らされた。

 木枯達と別れてすぐ。
「……あった……」
 みのりが導かれたのは密かに残っていたコスモスの群生地だった。
「……みのり、ゆっくり摘んでいいから」
「花妖精の事は心配しなくて構わねぇから気が済むまで摘んだらいい」
 アルマーとグレンは周囲を警戒を始めると同時に大量の花妖精達が襲って来た。ランタンで追い払い、それが間に合わなければアルマーは『歴戦の魔術』でグレンは剣で襲撃者達を気絶させていった。
「……」
 みのりはアルマーとグレンが護衛をする中、静かにたくさんのコスモスを摘み取った。
「みのり、終わった?」
 アルマーは案配を見計らいみのりに訊ねた。
「……終わった」
 みのりは言葉少なにアルマーに答え、ゆっくりと森の入り口に向かって歩き始めた。
 辿り着くまでグレンとアルマーはしっかりと護衛を務めていた。
 その後、犯人や森についてなど現在大変な状況である事を知らされた。