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古城変死伝説に終止符を

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古城変死伝説に終止符を

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「学校で話を聞いて来てみれば、大変な事になっていますね。前回よりは片付いている気もしますが」
 イルミンスール魔法学校生の月詠 司(つくよみ・つかさ)エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の話とシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)の一言で再び古城にやって来た。
「なぁに、ツカサ? 困っている友達を助けるのは当たり前の事でしょ♪」
 シオンは胡散臭そうな笑みを浮かべながら司をここに行かせる事となった言葉を口にした。
「……それはそうですが。とにかく聞き込みをしましょうか。前住人の成仏の手伝いにもなるでしょうし」
 司はシオンを不審そうに見ていた。また前回の大掃除の時のような目に遭うのではと。
「言ったそばから登場よ」
 司の訴えを気にしないシオンは周囲に現れた前住人達を指さした。
「い、いきなりですか。この場は逃げますよ」
 司は逃走を開始した。シオンも後から付いて行きながらこっそり色眼鏡を取り出していた。前回、ここで拾いオルナに承諾を得て貰った物だ。

 前住人達を振りきり落ち着いた所で
「前住人の注意を引きつけて何とか原因解決に挑むメンバーの負担を減らすにはどうしましょうか」
 司はどうしたものかと考え始めた。
 そこに
「どうするってこうするのよ★」
 用意していた色眼鏡を俊敏に司に装着させるシオン。
「ちょっ!?」
 隙を突かれた司は回避する暇無く再び色眼鏡の妄想に取り憑かれる事に。
 装着完了と同時に前住人が意味不明のモニュメントを投げてきた。
「あ、危ない!」
 シオンは『行動予測』で素早く攻撃を避けた。
「ハッハッハッ、お転婆さんだな〜♪」
 司も『行動予測』で難なく避けるが、それ以上におかしな事が起きていた。
 色眼鏡の影響で前住人が妹に見え、世話焼きお兄さんに変貌していた。そのせいか口調もすっかり変わっている。ちなみに妹以外に対しては普通に見えて対応も出来る。
「出た出た♪」
 シオンは愉しそうにこれから始まるカオスにわくわく。
「どこに行くんだい? おいかけっこかい。兄さん、負けないぞ」
 攻撃を避けられ諦めて逃げる前住人を楽しそうに追いかける司。
「……ん? 泣き声」
 シオンも追いかけようとするも少女の泣き声に足を止めた。
 泣き声と共に現れたのはミエットだった。
「……その姿は、ミエットね。この家に魔法使いさんがいると聞いたんだけど知らない?」
 シオンは屈んでミエットと視線を同じくして優しく話しかけた。司を弄る以外に魔法使いさんについて調べようと考えていたのだ。
「……あの子……可哀想……泣いてる」
 ミエットは泣きながら途切れ気味に答えにならない答えを口にする。
「あの子っていうのは貯蔵庫にいるリリトっていう女の子の事?」
 シオンは何とか情報を聞き出そうと艶やかな笑みを浮かべ、ミエットを安心させようとするが、ミエットはなおも泣いてばかり。
「……痛いよ……怖いよ……重いよ……」
 突然、ミエットの泣き声に怯えが混じったかと思ったら周囲に溶け込み消えてしまった。
 シオンはゆっくりと立ち上がり、
「……あの子、リリトの様子が分かるって事? 感受性が高そうだし影響を受けているって言っていたから何か通じているって事かもしれない。それに自分の死亡原因も思い出し始めているみたいだし……何かの下敷きになって亡くなったっぽい感じね。ここでの騒ぎに動きが出始めたという事かしら。もしかしたら今回で終わるかも」
 得た情報をまとめていく。その内容からこの騒ぎが終わる可能性を知る。ただ分からないのは魔法使いさんの事だけだが、それも他の人が調査をしているので問題無い。
 思考を終わらせたシオンは司の方に視線を向けた。
「そんな汚い言葉一体何処で覚えたんだい? 兄さんは悲しいぞ」
 と司は前住人に罵詈雑言を浴びせられても微笑ましそうな顔で追いかけていた。
 とりあえず、シオンは目の前にある状況を愉しむべく司を追った。
「何これ、またあの眼鏡を使ったの〜? 何かツカサのキモさがさぁ、前ン時よりも酷くなってる気がするんだけどぉ、気のせい〜?」
 追いついたシオンに対して司と一心同体であるミステル・ヴァルド・ナハトメーア(みすてるう゛ぁるど・なはとめーあ)が司の口を使って悪態をついた。
「さぁ、眼鏡には何も細工なんてしていないけど。相手が幽霊だからでしょ」
 シオンは肩をすくめてミステルに適当に答えた。
「何かキモイ」
 ミステルはそう言いつつ接近する前住人達にZEGA《Chrome》を差し向けて幻覚で蝕ませて追い払ってし愉しんでいた。
 ミステルはこの後もこのまま愉しみ、司は妄想にすっかり振り回され、シオンは聞き込みをして前住人達が記憶を思い出しつつある事を確認していた。

 古城。

「再びここに立ったでありますよ!」
 ウルバス老夫妻達から事情を聞いた後、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は再び立つ秘境化しつつある城内に声を上げていた。
「分別箱は他の人に任せてあたし達は部屋の掃除をするよ」
 セイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)は侵入前の打ち合わせで北都達が担当すると分かっているので分別箱については後回しにするつもりだ。
「今回は足の踏み場があるでありますが、分別ぐらいはして欲しいであります」
 吹雪は床を見た後、ごみが溢れている分別箱に目を向けた。
「そうだけど。吹雪もほっとくと部屋がこうなるじゃないの」
 セイレムは肩をすくめながらツッコミを入れた。
「むむ」
 吹雪は軽くうなり声を上げた。
 とにかく吹雪達は一部屋ずつ清掃する事にした。とは言え実験室や厨房などには人が行っているので一番難儀な場所と思われる浴場へ向かう事にした。当然その道々廊下の清掃も忘れずにしてごみは他の人の邪魔にならないように部屋の隅にまとめて行った。

 浴場前の廊下。

 到着早々凶悪そうな前住人達に襲われる吹雪達。
「まずは幽霊を一掃してから掃除をするよ。という事で、はい」
 セイレムはアサルトライフル型の『光条兵器』を手渡した。
「一掃でありますな」
 『光条兵器』を構え、飛んでくる物を撃ち落としたり前住人を狙い撃ちして追い払う吹雪。
「あたしは魔法で」
 セイレムは『天のいかづち』で雷を前住人達に落雷させて退散させた。

 幽霊一掃が終了し早速、清掃開始と思いきや
「何か転がっているでありますよ!」
 吹雪が足元に転がる紙包みを発見し拾い上げた。
「あそこで大変な事になってるよ」
 セイレムは吹雪が拾った物よりもいつの間にか廊下の後方で発生している火事を気にしていた。しかも人がいる。
「大変でありますな!」
「幽霊が転がっている魔法薬にでも火を付けたのかな」
 ただ事ではない様子に吹雪とセイレムは現場に急いだ。