空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

古城変死伝説に終止符を

リアクション公開中!

古城変死伝説に終止符を

リアクション

 実験室。

 ダリルが霧吹きを手に戻ってから速やかに完成した薬を大量の霧吹きに入れた後、周辺に落ちていたディバックに入れて散布の準備は整え終わっていた。
「……何とか終わったね。後は散布して貰うだけ」
 ローズは幽霊浄化薬を完成させた事に満足そうだった。
「これからみんなどうするの? ルカ達は前住人の相手をしながら手記以外に黒幕の魔法使いさんや魔術師について何か無いか調べるつもりだけど」
 ルカルカがローズ達の予定を訊ねた。
「オレは清掃だな。行く前にこの魔法薬の分別を手伝ってくれ」
 シンが真っ先に答え、薬制作後に分別して貰おうとまとめていた薬の事を話した。
「もちろん、手伝うよ。ダリル、薬完成の連絡を入れなきゃ」
 ルカルカは即答えた。騒ぎを収める一番の方法は協力し合う事だから。
「そうだな。しかし、取りに来るまで待つ暇は無い。外にいる者にでも預けておくか」
 ダリルはそう言って古城の外にいる者に事情を話して薬を託してから町にいる者に連絡を入れてから実験室に帰還した。
 魔法薬の分別はローズとダリルのおかげで速やかに終了した。
 その後、ローズ達は転がる魔法薬やごみの分別や清掃に従事した。ルカルカ達は城内を歩き回り、前住人の相手をしながら魔法使いさんやどこぞの魔術師の手掛かり探しも兼ねて貯蔵庫へ向かった。

 城内巡回中。
「名も無き旅団の手記とかいう本が気になるよね。今回の事件と似ていて不可思議な魔術師が登場したみたいな事が書かれてたとか」
 ルカルカは手記を話題に挙げた。正体不明の魔術師には何度も関わった事があるので少々気になっている。
「あぁ、本の魔術師と現在イルミンスールを騒がしている者と魔法使いさんが同一人物かはすぐに判明するだろう。おそらく同じだとは思うが」
 ダリルは多くの説得者達の事を思い出していた。
「だね。でもせっかくの手掛かりなのにすっきりしないよね。手記の気になる文章、後でみんなと話したいな。今回手に入れた情報を知ったらエリーはどうするんだろう。きっと何とかするとは思うけど」
 ルカルカは友人であるエリザベートの事を思い出していた。校長であるエリザベートが何もしないはずは無いだろうが大変な事になるだろうと。ちなみにルカルカ達がここに来たのはエリザベートから聞いたからだ。
「それにしてもここは賑やかだよね。今回は悪臭はなくて悪霊が居るって事で」
 ルカルカは友人の心配から前回の古城大清掃に気持ちを移した。妖しげな煙の中、オルナ捜索をよく頑張ったものだ。
「……そうだな」
 ダリルはうなずいた。
 ルカルカ達は敵意持つ前住人を退けつつ友好的な前住人から入手したのは死の直前の話ばかりで貯蔵庫に向かったのはリリトの説得後だった。フレンディス達に遭遇し共に異変は無いかと調査するが何も見つからなかった。

 イルミンスールの町。

「古城の方は人手がいるだろうから俺はこっちを何とかするか」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は古城から漂う煙の影響で暴れ回っている幽霊の相手をするべく町にいた。
「何とか傷付けないようにしたいが」
 陽一はあちこちで悪さをする幽霊達を見ていた。迂かつに攻撃しては消滅させてしまうのではと危惧している。
「幽霊を正気に戻す術は何とかなるはずだ。今はやるべき事をするのが先決だ」
 陽一は古城の行った人達が町で暴れる幽霊達を何とかしてくれるだろうと期待し、町の人を幽霊達から守るべく避難誘導を始めた。連れて来た特戦隊達にも手伝って貰い素早く行う。
「ここは危険ですから早く安全な場所へ」
 陽一は蒼き水晶の杖で幽霊達の動きを封じながら速やかに誘導していく。
 それだけではなく突然の事に狼狽える住民に対しては『幸せの歌』で落ち着かせたりと忙しく駆け回っていた。
 この後すぐにダリルから町の騒ぎはやはり古城から出ている煙によるものであると知らされた。

 忙しい避難誘導の最中。
「避難誘導、お手伝いします」
 オルナを連れたササカがやって来た。
「……病み上がりなのに」
 オルナはやる気のササカとは正反対の様子。
「……もう大丈夫なのかい?」
 陽一は腕や顔に手当の跡があるオルナを気遣った。
「えぇ。ただの寝不足のようでしたから。ほら、オルナ」
 答えたのはササカであった。オルナを小突いて言うべき言葉を促す。
「……迷惑を掛けてごめん」
 ササカに促されオルナはぺこりと頭を下げて謝った。
「いや、元気そうでよかったよ」
 陽一はオルナの元気そうな姿にひとまず安心した。
 そうして、少々和んでいた時、
「うぉっ、ポルターガイスト!!」
 オルナが悲鳴じみた声を上げた。
 陽一達目がけて様々な物が飛んで来たのだ。
「心配無い」
 陽一は素早く漆黒の翼を大きく広げて防いで幽霊を諦めさせて追い返した。
「助かりました」
「……あぁ、幽霊、こわっ」
 ササカは礼を言うもオルナは自業自得だというのにビビっていた。
 二人の無事を確認した後、
「ん、連絡?」
 陽一に連絡が入った。急いで出るとダリルから幽霊浄化薬が出来上がったから古城まで取りに来てくれという内容であった。

 連絡を終えた後。
「幽霊浄化薬が出来たそうだ。これから向かおうと思うんだが、一緒に来てくれた方が……」
 陽一はオルナ達に一緒に来るように言った。特戦隊がいたとしても古城の方が町よりも安全なので。
「そうですね。この子の家にいる人達にも会う必要がありますし」
「……ササカ、何が言いたいか分かってるって」
 ササカは横目で親友を見ながら即答しオルナはどれだけの人に迷惑を掛けてしまったのか思い知っていた。
 陽一は『イナンナの加護』で警戒しつつオルナ達を守りながら古城へ向かった。