リアクション
執筆の幕間2
「あらら、なんだか、私の思っていた展開とちょっと違ってきています。ああ、これが、複数マスターの醍醐味ということなのでしょうか。やはり、ここからは、私がハデス様に取って代わってお書きしましょう」
そう言うと、今度はアルテミス・カリストがドクター・ハデスの端末の前に座りました。
転
「おねえちゃん、このスリッパを使って。コイノボリを元に戻せるはずよ」
集会所から飛び出してきたアルディミアク・ミトゥナが、ココ・カンパーニュにむかって持ってきたツッコミ用スリッパを投げ渡しました。
「これを使えばいいんだな。サンキュー」
パシンと小気味いい音をたててスリッパを受け取ったココ・カンパーニュが、両手にそれを持って身構えました。
「なんでやねん!」
パシン!!
ココ・カンパーニュが、ジャンプ一番、手近なコイノボリをスリッパで叩きました。あんまり大胆に動くと、コイノボリドレスの裾がギリギリの高さなので、ちょっと危険です。
「はうあっ」
叩かれた、コイノボリが力を失ってへなへなと地面に舞い落ちます。
「よし、いけるよ!」
そう言うと、ココ・カンパーニュは反撃に転じていきました。
★ ★ ★
「リンよ、なんでこんなことをしている」
巨大コイノボリに乗ったリン・ダージの前に立ち塞がったジャワ・ディンブラが訊ねました。
「あたしの目的は、世界征服よ! そのために、コイノボリたちがあたしの部下になるよう、ビュリの魔法に細工をさせてもらったわ! さあ行きなさい、コイノボリ怪人たち!」
本当は逆のような気もしますが、今や悪の首領役に乗りに乗っているリン・ダージが、そう言ってコイノボリたちに攻撃を強化するように命じました。
とたんに、コイノボリたちが、唯一有効な武器を持ったココ・カンパーニュを倒そうと集中します。
ツッコミ用スリッパという最強の武器を手に入れたものの、たった一足のスリッパでは、突っ込みを入れていくにも限度というものがあります。
「そうはさせぬ」
ジャワ・ディンブラとペコ・フラワリーが、あわててココ・カンパーニュの掩護に回りました。
「まだ、スリッパならありますよ」
高天原咲耶が、予備のスリッパを取り出します。
「私も戦います」
そのスリッパを受け取ったアルテミス・カリストが、ココ・カンパーニュを守って雑魚コイノボリと戦っているペコ・フラワリーとジャワ・ディンブラの掩護にむかいました。
「があんばってくださあい〜」
ゆっくりと緑茶を飲みながら、チャイ・セイロンがペコ・フラワリーたちを応援しました。自分は、ちゃっかりと観戦組です。
そのときです。
「チャバダバチャバダ〜、う〜」
突然、謎の天の声が聞こえてきました。
「ぶーっ」
その不意打ちに、思わずチャイ・セイロンがお茶を噴き出します。運の悪いことに、それがアルテミス・カリストの持っているスリッパにかかりました。
「ああ、緑茶は、カテキンはダメです!」
そう高天原咲耶が叫びましたが、時すでに遅しでした。
アルテミス・カリストがコイノボリをスリッパで叩くと、なぜか敵はへなへなっとはならずに、逆にシャキンと背筋を伸ばしたのです。
「これは、コイノボリに背骨ができているアル。骨のあるルコイノボリね。やるアル」
なんだか、よく分からないことをバニラ・テシガチャが解説しました。
「背骨ができたというのでしたら……」
ペコ・フラワリーが、そのコイノボリに突っ込んでいきました。
コイノボリが、強力な柏餅爆弾を吐きつけてきて応戦します。ペコ・フラワリーの服が柏餅によって引き裂かれました。それには構わず、ペコ・フラワリーがコイノボリを三枚におろします。
「あー、あのおねーちゃん裸だー」
スレンダーなペコ・フラワリーの裸体を見て、村の男の子が叫びました。
「あらあら」
それを見ていたチャイ・セイロンが、コイノボリの抜け殻を拾おうとしますが、逆に別のコイノボリから攻撃を受けてすっぽんぽんになってしまいました。
「あれれえ〜」
間の抜けた悲鳴を聞きつつ、さっきの男の子がまたも女性の裸を目撃してぶっ倒れます。
「早く、隠しましょうねえ」
そう言うと、チャイ・セイロンがペコ・フラワリーにコイノボリの抜け殻を渡し、自分も別の抜け殻の中に潜り込みました。ペコ・フラワリーの方は、両肩でかろうじて引っ掛かって止まっていますが、胸の部分はすかすかです。逆に、チャイ・セイロンの方は、胸の部分がぱつんぱつんで、ちょっときつそうでした。
★ ★ ★
「何よ、コイノボリだって、一本筋を通すために、必死に戦っているのよ。見なさいよ、あのコイノボリなんて、背骨まで自然発生したんだから。あれを見て、みんな、コイノボリがかわいそうだと思わないの?」
「むっ、それもそう……なのか?」
リン・ダージに言われて、なんとなくジャワ・ディンブラがコイノボリもかわいそうな生き物なのかもしれないと考えて、攻撃の手を緩めました。いや、コイノボリは、もともと生き物ではないのですが……。
★ ★ ★
「へへへへっ、大漁大漁」
マサラ・アッサムが、コイノボリと戦うみんなの間を走り回って、柏餅を回収していきました。
「小ババ様、後で二人で食べような」
「こばー」
「わーい」
なぜか一緒に喜ぶビュリ・ピュリティアと共に、小ババ様の声が聞こえます。ところが、その姿はどこにも見えません。
「あれ、小ババ様?」
マサラ・アッサムが、小ババ様を捜して辺りを見回しました。
「ふふふ、小ババ様はあたしが確保しちゃいましたあ」
そう言うと、たっゆんな胸の谷間に小ババ様を隠したチャイ・セイロンがほくそ笑みました。
★ ★ ★
「いいかげんにしろー!」
ココ・カンパーニュが、空中にいるリン・ダージめがけて大きくジャンプしました。
「ありがたや、ありがたや……」
村人たちが、下からそれをじっと見あげます。
「ていやっ!」
スパコーン!!
「はうあっ!?」
ココ・カンパーニュにツッコミ用スリッパで叩かれて、リン・ダージが巨大コイノボリの上から滑り落ちていきました。
巨大コイノボリの方も、上に飛び乗ったココ・カンパーニュに突っ込まれて大人しくなります。
「おっと」
「きゅう〜」
落ちてくるリン・ダージを、下でペコ・フラワリーが受けとめました。その後から、巨大コイノボリに引っ掛かって脱げ落ちたリン・ダージのパンツがひらひらと舞い落ちてきます。
かくして、全てのコイノボリは元のただのコイノボリに戻り、村に平和が戻ったのでした。