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リアクション
■2回目の誕生日
シャンバラ宮殿のアイシャ・シュヴァーラの自室にて。
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、
ロイヤルガード兼アイシャのメイドとして、
アイシャの自室の掃除に訪れる。
「ねえ、アイシャちゃん。もうすぐ、誕生日だね」
詩穂は、アイシャの誕生日、
6月6日が、もうすぐ近づいていることを考える。
今は離れた場所にいる、大切な人を、慈しむように、語りかけながら。
「アイシャちゃんが祈りの間に入ってから、
もうすぐ、2回目の誕生日が来るね」
今年こそはお祝いしてあげたかったけど、
きっとまだ無理だろう。
そう思うと、詩穂は少し切なくなる。
「でも、さびしくないよ。
だって、詩穂とアイシャちゃんは、ここでつながってるから」
胸のブローチにふれながら、詩穂は、心臓のとくん、という音を聞く。
それが、女王騎士の誓いを秘めた、詩穂の想いである。
■
アイシャが、まだ、祈りをささげるようになる前のこと。
空京の町で、詩穂とアイシャは、
お忍びでウィンドウショッピングに出かけたことがある。
アイシャの変装は、詩穂が手伝い、一見して、女王とはわからないようになった。
「買い物もしたいけど、お店の人にばれるかもしれないから、見るだけにしようね」
「そうですね。でも、こうして、詩穂と街を歩けるだけでも楽しいです」
ふふ、と、少女2人は笑い合う。
「あ、ほら、見て、アイシャちゃん!」
ふと、前を向いて、
詩穂がアイシャの手を取って駆け出す。
ショッピングモールの真ん中の広場の噴水から、
水が噴き上がり、虹がかかったところだった。
「わあ……」
アイシャが感嘆の声をもらす。
しかし、しばらくすると、噴水の虹は消えてしまった。
「なんだか、はかないですね。綺麗なものには終わりがあるのかしら」
「うん。でも、終わらないものもあるよ」
詩穂が、残念そうにするアイシャにそっとささやく。
「詩穂の、アイシャちゃんへの気持ち、二人の気持ちだけは、
ずっと、変わらないよ。これからも」
「ふふ、ありがとう、詩穂」
「こちらこそ」
照れたように笑うアイシャに、詩穂も笑いかけたのだった。
■
再び、シャンバラ宮殿。
「ねえ、だから、アイシャちゃん」
詩穂が、そっとアイシャに語りかける。
「たとえ、救わなきゃいけないのが、世界そのものだったとしても。
それでも、詩穂はがんばれるし、
アイシャちゃんもきっとやり遂げられるって信じてる。
だから、直接、お祝いできなかったお誕生日の分も。
戻ってきたら、たくさん、お祝いしようね」
そう言って、詩穂は、祈りをささげる。
ともに、世界のために、祈りをささげている、大切な人のために。
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