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人狼と神隠しとテンプルナイツ

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人狼と神隠しとテンプルナイツ

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〜城調査〜

「突き当たり?」
 目の前に立ちはだかる壁に川村 詩亜(かわむら・しあ)たちは、足を止めた。
 薄暗い城の中、壁に掛けられたローソクの光を頼りに周りを見渡すが、来た道以外ほかに道はない。
 どうやら廊下の突き当たりにたどり着いたようだった。
「わー、なんか読み物があるよ〜?」
「本棚って……どうみてもただの本棚じゃないの!」
 好奇心の塊を惜しみなく出すかのように川村 玲亜(かわむら・れあ)は廊下においてある本棚を見つける。
 それをみて、ただの本棚だとミア・マロン(みあ・まろん)があきれた。
「あ、玲亜。罠がどこにあるかわからないんだから、そんなうろちょろしたらーー」
 本棚へ近づこうとする玲奈を詩亜が止めようとしたときだった。
 玲亜が一冊の本を、本棚から取り出すとともに「ガコッ」という音とともに、本棚は左へとスライドしていった。
「え?」
 行き止まりだったはずの廊下に活路が開かれる。その予想外の仕組みにミアは唖然とした。
「へぇ〜色んな仕掛けがこのお城さんにあるんだねお姉ちゃん」
「うん、この調子なら、なにか大事なことも秘密部屋なんかに隠されてるかもしれないわね」
「……なんだか面白そう!」
 目をきらきらと輝かせながら、玲亜は我先に開かれた扉の奥へ走りだそうとする。
 ミアはそんな玲亜の手を、がっしりとつかんだ。
「えっ、ミアちゃん。この手はどういうことなのかな?」
「あんたはほっとくと、そうやってそのまま迷子にならないわけがないんだから!」
 ミアは強い口調で言った。
 玲亜はすこし嫌そうに「え〜大丈夫だよ」と腕を何度も離させようとするも、ミアは離さなかった。
「このお城から出るまで、この手は絶対に離さないからそのつもりでいるように!」

「お〜、お〜、仲が良いな」
「なっななな、どう見たら仲がよく見えるのよ!?」
 2人のやりとりを、にやにやと眺めながらオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)が歩いてきた。
 オルフィナは葛城 沙狗夜(かつらぎ・さくや)と一緒に城を調査しているところだった。
「さて、じゃあ俺は先行かせてもらうぜ」
 オルフィナは、詩亜を追い越し、開かれた扉の先へと進む。
「ええ。私たちもついて行きますわ。ほらほら、二人とも早く進みまーーあ」
 詩亜もオルフィナについて行くように、後ろ向きに扉の方へと向かっていく。
 不意に「かちっ」という何かを押したような音が響いた。
「ジュルル」
「な、何か……向こうから出てきてるような。」
 水音を立てて、どろどろとした緑色の液体が来た道である廊下に次々と現れてくる。
「ん〜、ありゃスライムじゃねえか?」
 オルフィナは目を細めて、謎の液体の正体を見極める。
「ス、スライム……それなら」
 詩亜が”パイロキネシス”を試みる。
 スライムたちは火に巻き込まれる。その火はたしかに数十体のスライムを蒸発させる。が……
「あー、量が多すぎるな」
 まるで人ごとかのように、オルフィナは言った。
 スライムは減るどころか、次々とわき出てくる。とてもじゃないが詩亜たちには手に負えない数だった。
「どうしたら……」
「こうなったら、あれじゃん。逃げる!」
 オルフィナの号令とともに、詩亜たちは一斉に、開かれた扉の奥へと走り込む。
 それからまもなくしてだった。

「師匠、そんなに急がれてどうしました?」
「沙狗夜!! グッドタイミング」
「え」
 おそらく反対側の廊下と繋がっていると思われる扉から出てきた沙狗夜をオルフィナの肩を抱える。
 そして、そのまま。
「頼んだぞ!」
「え、あ……」
 オルフィナは沙狗夜をそのまま、自分たちの後ろ、スライムの方へと投げる。
 不幸にも、その先には落とし穴があり、沙狗夜の姿はまるで地面に吸い込まれるように目の前から消えてしまった。
 スライムも同じように穴へと吸い込まれ、もとい沙狗夜を追いかけていく。

「おーい、大丈夫か〜?」
「師匠。見てないでたすけてくだーーあ、そ、そんなところにはいってきたらーー」
 沙狗夜は穴からのぞき込んでくる、オルフィナに抗議しようとした。
 が、次々とスライムは沙狗夜の足下に集まって、服の中へと入りこんでいく。
 その冷たさと、ぬるぬるとした気持ち悪さが、沙狗夜を襲っていた。
「どっかからロープを見つけて助けてやんよ。だからちょっと待ってろ」
「さ、さすがに……あ……もう限界」
 沙狗夜はさらに息を荒げながら答えた。

「なんだろうこの銅像」
 沙狗夜がスライムに襲われている中、詩亜が廊下に置かれた銅像に目を引かれる。
 人狼の形をした銅像の胸元には何かが刺さっている。
「……これは新発見かもしれないわね!」
 興味深さと好奇心から、詩亜は”サイコメトリ”をかける。
「人狼は槍に……弱い?」
 読み取るのに苦労したものの、一瞬見えたのは長い槍が突き刺さり、苦しむ人狼の姿だった。
「これ……みんなに教えてあげないと……あら?」
 オートマッピングに切り替えておいた、銃型HCを取り出す。
 そこにはいつの間にか、マッピング情報が送られてきていた。
 しかも驚くべきことに、そのマッピング情報には先ほど、詩亜達が引っかかったスライムについても書かれていた。
 たまたま、気がついていなかったようだった。
 (見なかったことにしようかしら……)
 詩亜はたった今、罠の位置情報についての情報を受け取ったと、オルフィナ達には伝えるのだった。