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人狼と神隠しとテンプルナイツ

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 第5章 凶暴な町

「……な……どういうことですか、殺気の量が異常ですよ!!」
「えっ。なに、どういうこと?」
 町の一角で人狼達と、戦っていたサイアス・カドラティ(さいあす・かどらてぃ)が、”殺気看破”で感じたその異常な殺気の量に驚いた。
 一緒に居た、ルナ・シャリウス(るな・しゃりうす)には何が起きているのかまったくわからない。
「この殺気の量……人狼達……」
「……思ったよりまずいわね」
「ですね。一度下がって誰かと合流したほうが良いかもしれません」
 深刻そうな表情をしているサイアスにただ事ではないとおもった、ルナは深く頷く。
 しかし、それよりも先に人狼達は走ってきた。
 その早さは先ほどまで見た早さとは違う。まるで地上を走ってない、空を飛んでいるかのような軽快な走りだった。
 次第に人狼達は2人に距離を詰めていく。
「くっ……早いわね。しょうがないわ、一度ーー」
 一瞬、ルナは逃げることをやめようと提案しかけたときだった。
 
 鉄の殴るような「ごつごつ」という音が響いた。
 音に気になる2人は足を止め、振り返るとそこには騎士、グレゴワール・ド・ギー(ぐれごわーる・どぎー)
シャノン・エルクストン(しゃのん・えるくすとん)が立っていた。
「大丈夫?」
「助かりました……突然人狼の様子がおかしくなったので……」
 サイアスとルナはお礼を言うが、シャノンは手を横に振った。
「気にしないで、というか全部グレゴさんのおかげだから」
 グレゴワールはそんな話を聞いていないのか、じーっと剣の柄で殴られて気絶している人狼を眺めた。
 1つだけはっきりしたことがグレゴワールにはあった。
「……厄介だ」
「え?」

 グレゴワールの様子がおかしいことに、シャノンは気がつきグレゴワールの顔、兜を見上げる。
 そんなときだった、向こうから女性が1人走ってきた。
「たーいーへーんーですわ!!」
「何奴!!」
 グレゴワールはすかさず剣を構える。
 女性は、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)だった。
 それを確認するとようやくグレゴワールは剣を下ろした。
「今、赤く光ったの知ってる?」
「赤く……そういえば、さっきお城の方からなにか、光った気がするね」
 シャノンは、城の方から空にむかって赤い光が広がっているのを確認していた。
 ただ、それはてっきり炎が上がったのだろうと勘違いしていたのだった。
「あれ、人狼を凶暴化させる魔法ですわ!」
「凶暴化する魔法?」
 ルナの言葉にエリシアは頷いた。
「そうよ、わたくしもあまり詳しくまではわかりませんでしたが、あれは強化魔法のたぐいですわ」
「弱った……我にはこいつらは切れない。元は人間であろう?」
 なるほどとシャノンは頷いた。
 どうやら、先ほどから人狼を眺めているのはそのせいなんだとわかる。
 よく見れば、人狼……だった少年のポケットからは小さな人形がはみ出ている。
「とりあえず、その光った場所へ向かってみる?」
「マリアさん達が確か居たはず……大丈夫かしら」
 不安そうにエリシアは空を見上げる。
 しかし、グレゴワールは「ふっ」と一息笑った。
「偽物の騎士か。まあよい、とりあえずそちらへ行くことにしよう」

「待ってください」
 グレゴワールが振り返り城へと向かおうとしたときだった、サイアスが声を上げた。
「敵が……近づいてきます。これ……城の方から?」
「マリアめ……やはり使えぬ」
「困りましたわ、他に道はないのですわ」
 どこからか、エリシアは町の地図を取り出すと、道がこのほかにないことを示される。
 すぐに人狼達は目の前に駆けつけてきていた。

「もうこんなところまで来てますの!?」
「こうなったら戦うしかないね」
 口々に言うが、グレゴワールだけ乗り気ではないようだった。

「グオオオオオオオオオオオオオオンッッ」
 今までと違った悲痛のこもった遠吠えが響くと、数体が一斉に襲いかかってくる。
「数は多いけど、みんなで協力すればいけるはずよ。これ以上町に被害を出さないためにも、やるわよ。良いわね?」
「はい!」
 ルナの言葉にサイアスは強く頷くと”歴戦の必殺術”で人狼の弱点を探る。
 すぐにそれが見えてくると、サイアスはみんなに聞こえるように叫んだ。
「臑です!」
「わかったわ!」
 サイアスの言葉に合わせて、ルナは”遠当て”を人狼の臑に当てていく。
 が、迫り来る足取りは止められる物の、気絶などには至らない。
「ふんっ!」
 グレゴワールもその弱点を聞き、脛へと柄を当てていく。

「これでもくらいなさいですわ!」
 エリシアは黒い炎を、”ワルプルギスの夜”を残った人狼たちを一掃していく。
 それに続くようにシャノンも「私も!」といって”火術”を放っていく。

「これは……骨が折れますわ」
 エリシアたちはゆっくりとゆっくりと、城の方へと進んでいく。