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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

リアクション

「ふむ、確かに容疑者恭也も至る所で処刑している様子が見られますね」
 ななながVTRを観ながら呟いた。流れている映像は、様々な所で恭也が反逆者と見做した者を処刑している場面である。
「……確かにその通りですね、親愛なるななな様」
 恭也はというと否定することなく、しかもなななに対して敬意を払う様に答える。余裕そうな態度に、僅かになななが感心したように「ほう」と呟いた。
(……冗談じゃねぇぞこんな茶番で死んでたまるかってんだよ! 何が何でも生き延びてやらぁチクショウがぁ!)
 だが内心はそれどころではないようである。
(くっそどうする……このままじゃやべぇ……誰かなすりつける相手は……最初にかみついた奴は……ああさっき死んだっけな。それ以外は武器庫漁った奴……ってほとんど死んでるじゃねぇか! 生き残ってる奴は……駄目だ弾薬くらいしか持って行ってねぇ上に見当たらねぇ! 他に! 他に誰か……)
 何か思いついたのか、恭也は表情を変えると立ち上がった。
「だが任務失敗の理由はもっと他にある……この任務が失敗した理由というのは契約者が俺達の中にいたからです。それはななな様が言う通り一人ではありません。既にもう何人か処刑されていますが、まだ一人残っているのです!」
「ほほう、それは一体誰ですか?」
「その者は研究所員を扇動し、所長の反乱、そして暴動へと持ち込みました。ある意味では研究所壊滅の引き金……これでお分かりでしょう?」
 それに対し、なななではなく明志がああ、と納得したように手を叩いた。
「なるほど、確かに言われてみりゃ」
 そう言って明志が見た先に居たのは、藤林 エリス(ふじばやし・えりす)であった。
「研究所壊滅の原因って結局エリス嬢が三桁レベルの僕連れてきた様なもんだよなぁ。ありゃ洗脳に近いって」
「これでわかりましたねななな様。あのコミーが反逆者だという事が!」
「……容疑者エリス、どうですか?」
 すると、エリスはゆっくりと立ち上がる。

「よく聞け資本主義の豚共!」

「あ、コミー状態は解除しといてください。アカいのって地味に編集面倒なので」
「えぇー……しょうがないなぁ」
 なななに言われると、エリスは渋々な様子ながら頷く。
「……さて、あたしが反逆者みたいに言うけど、それは大きな間違いよ。あたしはただ企業内労使関係の健全化による生産効率向上に寄与しただけ。洗脳なんて人聞きの悪い」
「いやいや、そんな言い訳通用すると思うか? あんなに声高に『革命を』とか言ってただろ?」
 恭也が言うが、エリスは不敵な笑みを浮かべる。
「確かに革命とは口にしたけど所長を倒せとも、施設を破壊しろとも、一切言ってないわよ。非暴力的無血革命だってあるんだし、暴力的破壊行為を指示した覚えは無いわね。あたしはただ健全な労使関係構築のために、全世界的に合法的で一般的な労働者の権利と争議権について助言を行ったに過ぎないわ」
「いやでも、流石に三桁レベル暴動に扇動したようなもんじゃね?」
 明志の言葉に、エリスが呆れた様に言う。
「何言ってるのよ。争議行動の具体的内容については、当事者である研究者達の自主的な判断の結果。研究所内の労使双方の責によるものよ。まぁ、自爆なんていう暴力的手段で不当に団体交渉を拒否したあの所長は、明白な不当労働行為を行った反逆者だったわね」
 エリスは「やれやれ」と首を横に振る。
「ふむ、確かに容疑者エリスは説いただけですからね。反逆者、とするのには少し弱いかと」
「いやななな様、奴がコミーなのは確定ですよ!?」
「うーん、でも別にコミーは反逆者じゃありませんから。何処かと勘違いしていませんか?」
「なん……だ……と……!?」
 恭也の表情がこわばる。
「……ってか、この任務ってエリス嬢一人でなんとかなったんじゃ」
 明志が小さく呟く。
「その場合貴方達がコミーに染まってとんでもない事態になると思いますが?」
「考えただけでもぞっとするなそれ……」
 カオス間違いなしだ。
「というわけで……容疑者恭也、貴方の容疑はそのままですが?」
 なななはそう言って視線を向けた。
「……おや、他に何かあるようですね?」
 だが、恭也は笑みを浮かべていた。
「……所で親愛なるななな様に御質問です。最後に所長室で俺と相対した者なのですが……奴は契約者しか使えないような武器を扱っていたにも関わらず結局処刑を免れています。これはどういうことでしょうか?」
 そう言って恭也は斎賀 昌毅(さいが・まさき)に視線を向けた。