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リアクション
(……やっぱそう来るよなぁ)
昌毅が小さく溜息を吐く。最後、所長室での立ち回りの際昌毅は大型銃の【シュヴァルツ】【ヴァイス】を扱っている。
(ど、どうするんじゃ! このままじゃわしも危ないんじゃが!?)
カスケードが絶望したような表情で昌毅に耳打ちする。立ち回りの際、カスケードは昌毅から銃を一丁受け取っているのである。
(ふっふっふ、落ちつくのだよ)
その隣では阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)が余裕そうな表情を浮かべていた。
(そりゃおぬしは何もしとらんからのぉ! もう駄目じゃ……どうあがいても死ぬんじゃ……)
カスケードが今にも崩れ落ちそうなくらい絶望的なオーラを出していた。
(おまえちょっとは落ちつけ……仕方ねぇ、いっちょやってみるか)
昌毅は再度、小さく溜息を吐いた。
「さて、俺が契約者だと?」
昌毅がそう言うと、恭也は頷く。
「成程……確かに最後の段階であんな大型拳銃を持っていた。だが、ちょっと待ってほしい」
そう言うと昌毅は皆に向き直る。
「この中でアレが俺の持ち物だと証明出来る奴はいるか?」
昌毅の問いに、皆首を横に振る。
「まあそうだよな。ありゃ研究所で拾ったもんだからな」
「証拠でもあるのか?」
恭也に言われ、昌毅は頷く。
「よくVTRを見てみるといい。俺は一発も撃っていないだろう? カスケードも言っていたが一般人である俺には拳銃なんて馴染みがなさ過ぎて拾ったはいいが扱えるものじゃなかったんだよ。代わりにでかいからいざという時に身を守るための鈍器として使おうと思っていたくらいだ」
「そ、そうじゃな。確かにありゃ鈍器として扱った方がいいじゃろう」
カスケードが隣でうんうんと頷く。
「……ふむ、確かにその様ですね」
VTRを眺めてなななが頷くと、恭也から笑みが消える。
「……所で、だ。おまえはどうして銃器なんて扱えるんだ? 確か兵士から取ってたよな? 処刑にもそれを使ってたみたいだが、普通に安全な街中で生きてきたのなら普通銃なんて……ましてや適当に研究所内で拾って始めて見たはずの銃器を正しく扱えるなんてありえなくないか?」
昌毅がそう言うと、恭也の表情が強張る。
「言われてみれば確かにそうっすね。兵士から取るのも手慣れた感じでしたし、問題なく撃ってたっけ。だから俺も撃ち殺されたわけだし」
明志も追い打ちをかける。形勢が逆転していた。
「……容疑者恭也、言いたい事は無いようですね?」
ななながそう言うと、何か言う前に恭也が爆散する。
「ん? そういや生き残ってる中でもう一人兵士から銃持ってる人居なかったっけ?」
ふと、思い出したように明志が言う。
「そ、そうじゃ! もう一人いたはずじゃ! 銃器を奪って、しかも人を平気で盾にするような奴じゃった!」
カスケードが思い出したように大声を上げた。
「……カスケードの奴、どうしたんだ?」
少し様子がおかしいカスケードに、昌毅が首を傾げる。
「自棄になっているのだろうな。万一なななから生き残っても、那由他らに面白半分で殺されると思い込んでいるのだろうよ」
「まあおまえならやりかねんからな」
那由他の言葉に、昌毅が納得したように頷いた。
「人を平気で盾にしようとする奴は与えられた資源を浪費させ任務の妨害を行おうとしたに違いないのじゃ! 更に奴は銃も問題なく扱っていた! 疑いようのない反逆者じゃ!」
「ふむ……容疑者美羽の事ですかね?」
ななながそう言うと、カスケードは「そうじゃ!」と大声で答えた。
「成程、確かに証拠は揃っています。疑いようのない反逆者として処刑しましょう――では、容疑者カスケードの陰にずっと隠れていた反逆者、美羽を処刑します」
「……え?」
カスケードがゆっくり振り返る。そこには、
「……一人で死ぬのはさびしいもんね」
と、隠れる様に寄り添っていた美羽がいた。
直後、美羽は爆発する。その爆発に、カスケードは巻き込まれた。どちらも致命傷の一撃。既に両者残機は無かった。
そこで漸く、辛うじて残機が残っていた恭也が戻ってくる。
(くっ……まさか逆転されるとはな……だが残機が残ってたのはラッキーだった。何とか生き残れそうだな)
恭也が安堵したように息を吐いた。
「さて、処刑された容疑者恭也が戻ってきましたね……では容疑者恭也、処刑される前に何か言い訳はありますか?」
「……お待ち下さい親愛なるななな様。今処刑されたばかりなのですが」
「先程は銃器を扱えることで契約者としての容疑をかけられ処刑しました。後貴方には容疑者吹雪同様、ZAPして回り任務を妨害したという容疑が残っていますよ」
なななが笑顔で答えた。
(か、完全に殺す気だ! 殺す気でかかって来てやがる!)
恭也が吹雪に目をやる。何かあったら手を組めるかと思ったが、「自分は悪くない」と呟きガクガク震えるだけで役に立ちそうは無かった。
(死んでたまるかってんだよチクショウめがぁ!)
覚悟を決めたように、恭也が顔を上げる。
「……確かに俺は他の奴らをZAPしていた。だが、それは親愛なるななな様の『反逆者は処刑』という言葉に従っただけだ! ZAPが問題だというのなら契約者を庇う事と同じ、つまり契約者という事になる! 違うか!?」
「ふむ、確かにそうかもしれんな」
恭也の言葉に反応したのは、意外にも那由他であった。
「……だが、ここで少し考えてみて欲しいのだよ。契約者は一般人である那由他達にはとても倒せないほど強いといわれているのだよ。では、契約者を難なく処刑した者達は一体なんなのか」
那由他は恭也を見据えて更に続ける。
「一般人では倒せない契約者を倒せるのだから当然それかそれ以上に強いに決まっているのだよ……そうなるともう契約者しかありえないのだよ!」
そう言って那由他は恭也に人差し指を突きつけた。
「ふむ、言い逃れは出来ないようですね……反逆者……いや、契約者恭也」
なななは笑みを浮かべて恭也を見る。
「一つ教えましょうか、契約者恭也。私は『反逆者を見過ごすことは反逆に当たる』とは言いました。しかし『反逆者を処刑して良い』とは特に言っていません。そして何より――」
なななは少し間を作って、口を開いた。
「――今回、別にZAPスタイルじゃないんですよ」
「ンなオチありかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
恭也の身体が爆散した。残っていた残機は尽きた為、ガメオベラ行きである。
「さて、後は契約者吹雪……おや?」
なななが目をやると、吹雪は彼女の足に縋りついていた。
「お願いであります! 他の連中はどうなってもいい……あんな奴ら処刑されようが構いませんであります……『自分だけ』は! 『自分だけ』は助けて欲しいであります! お慈悲を! お慈悲をでありますぅッ!」
今にも靴を舐めん勢いである。
あまりに見苦しい様子に、流石のなななも戸惑った様子を見せる。
だが、他の面々はそうではなかった。
『見苦しすぎるわぁッ!』
吹雪はなななから引きはがされると、生き残った面々から次々と暴力を振るわれる。フルボッコであった。
薄い本にはならなそうな程暴力的な意味で乱暴された吹雪は、ビクビクと痙攣していたがやがてピクリとも動かなくなる。
そこに残ったのはぼろ雑巾のような吹雪。残機は無い為復活することなく、そこに捨てられていた。
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