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王子様とプールと私

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王子様とプールと私
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 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)と更衣室の出口で待ち合わせをしていた。
「あ、セイニィ……」
 セイニィは、健康的な体にぴったりと合った、動きやすそうな黄色のビキニを着ている。そんなセイニィの姿を牙竜は直視できずに、思わず視線を下方に彷徨わせた。
「な、なによ。何かいいなさいよ」
「すまない。取り乱した……」
 牙竜は赤面したまま、言葉を続ける。
「正直に言うと、すまないセイニィ……よく似合いすぎて直視できなかった……」
「な、なによそれ! もう少し早く慣れなさいよね」
 セイニィは牙竜の先を歩き始める。
「ほら、プールを楽しむんでしょ?」
「……ああ」
 セイニィに促されて、牙竜は急いでその後を追って行った。

「ところで、せっかくのプールだ。一つ勝負してみないか?」
 プールサイドを歩いていると、牙竜がそう持ちかけた。
「勝負? 何をするの?」
「このプールで1往復の競争だ。競争で勝った方が食事代をおごると言う条件で、どうだろう?」
「いいわよ。速さなら負けないわ」
 セイニィはその勝負を受けて立ったのだった。

「俺の負けか……約束通り俺がおごるぜ」
 プールの端に腰掛け、牙竜とセイニィは息を整えていた。ギリギリでセイニィの方が速かったのだ。
「とりあえず。運動したから飲み物を買って一息つこうぜ……水分不足は怖いからな」
「確かに喉が渇いたわね」
 セイニィはキョロキョロと辺りを見回し「ジュース」の文字が書かれた看板を目に止めた。
「あそこでジュース売ってるわよ。行きましょ」

 牙竜はセイニィと歩きながらぼんやりとセイニィの姿を眺める。
「セイニィ、動くとよくわかるけど……」
「何?」
「君は魅力的な女性だな」
 大真面目な顔で言う牙竜に、セイニィの顔がすっ、と赤味を帯びる。
「そ、そんな真面目な顔で言わないでよね!」
 赤くなったセイニィも可愛いな……と牙竜はぼんやり思っていたのだった。

 牙竜とセイニィはジュースを買って、ベンチに座って休んでいた。
「そう言えばさっきフリューネを見かけたが……なんか不審者ぽかったな」
「不審者ぁ? どんなことしてたのよ」
「いや、いかにも怪しげな黒のサングラスをかけていて、コソコソ何かの後をつけているみたいだったぞ。変なサングラスのせいで余計に目立っていたというか……」
「それは確かに……何してるのかしらね」
「セイニィ、一応後で事情聞いておいた方が良くないか?」
 そんなことを牙竜とセイニィに言われているとは知らずに、ヴァレリアの保護者二人はこそこそとプールサイドを歩き回っていた。