空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

王子様とプールと私

リアクション公開中!

王子様とプールと私
王子様とプールと私 王子様とプールと私

リアクション



【キロス、災難到来中】

「先ほどから何人もの方が遊んでいたこのウォータースライダー……わたくしも是非やってみたいですわ!」
 ヴァレリアに手を引かれて、キロスはウォータースライダーにやってきた。
「おう。乗ろうぜ」
 キロスとヴァレリアがウォータースライダーに向かった。その時、キロスはヴァレリアの背を見ていて、ふと気がつく。そう言えばヴァレリアは、武芸に秀でたヴァルトラウテ家の屋敷に??トラップだらけの屋敷に住んでいたのだ。こういったアトラクションは得意かもしれない。
「楽しみですわね!」
 ルンルンと鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、ヴァレリアはウォータースライダーに向かった。
 その、直後。
「ウォータースライダーがあるのね、これは是非体験してみなくちゃ♪」
 白波 理沙(しらなみ・りさ)が、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)とウォータースライダーに向かっていた。二人は散々色々なプールを巡って来ていた。
「このウォータースライダー、結構長そうね。面白そうだわ」
 雅羅も乗り気で、ウォータースライダーに乗ることにした。――だがしかし、災厄体質の雅羅がいる時点で「平和に楽しめた」で終わるはずがない。
 皆がウォータースライダーを滑り始めた時、どこからともなく、ゴゴゴゴ……と、不穏な音がし始めた。
「……あら? 水が止まった?」
 雅羅は、急に滑りが悪くなって気がついたのだ。
「こんな途中で止まっても……どうしたらいいのかしら」
 雅羅があれこれと悩んでいる頃、同じく理沙は異変に気がついていた。
「……えっ!? なんで後ろから水が押し寄せて来るの!?」
 突然、ウォータースライダーが故障したのである。かといって理沙にはどうすることもできず、ただ水に背を押されてもの凄い速さで滑り落ちて行ったのだった。
 その現象は、キロスとヴァレリアにも起きていた。
「……あ? 止まった?」
 キロスは自分のコースに水が流れてこなくなったのを訝しんで、キョロキョロと周囲を見回した。
 ??その時キロスの視界に、流れる大量の水から逃れるようにウォータースライダーをダッシュで駆け下りてくるヴァレリアの姿が映ったという。

「水に飲まれないようにする鍛錬は、よく行っておりましたの」
 無事全員が救出された後のこと。ニコニコと笑うヴァレリアに、キロスは盛大な溜め息をつく。
「ヴァレリア……あれは鍛錬のためのトラップじゃないんだぞ。良い子が真似したらどうするんだ」
 後で聞いたことだが、ウォータースライダーの故障の原因は、何故か水を流すパイプ部分に海から入って来てしまったタコが詰まったせいだったそうな。雅羅の災厄の力は恐ろしいものである。
 キロスとヴァレリアが話している近くでは、理沙と雅羅が休んでいた。
「雅羅、大丈夫? 疲れてない? というか、今ので相当体力を使った気がするけど……。疲れたら休憩を入れるからすぐ言ってね」
「ありがとう。理沙も今の騒動で体力使っちゃったと思うし、少し休みましょうか」
 雅羅も理沙の提案に乗った。
「それなら、クレープを食べに行かない? ほら、あそこのクレープは女性に人気のフルーツたっぷりのクレープなんですって、アレも食べてみたいと思ってたのよね」
「美味しそう。食べに行きましょ」
 雅羅の歩いて行く先々で看板が落ちて来たり、何もしないうちからテーブルが崩れたりと色々と事故は続いたが、どうにか理沙と雅羅はクレープをベンチに座って食べていた。
「ついつい、はしゃいじゃったけど、私のペースに合わせてたら多分雅羅は大変だと思うのよね。それでもいつも付き合ってくれてありがとね」
「こちらこそ、いろいろと変な事故に巻き込んじゃって申し訳ないわ」
「大丈夫よ。私たちどっちも怪我がなくて良かったわね」
 雅羅と理沙はひと時の休息をたのしんだのだった。