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―アリスインゲート2―Re:

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「私に話したいこととは何だ? イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)
 フィンクス・ロンバートに名を呼ばれ、「はい」とイーリャが答え、話を紡ぐ。
「話したいこととは……パラミタに移転した人々のことです」
 歯切れ悪く話す。話すのはつまりオリュンズに住んでいた人々のことであり、フィンクスの戦友たるマシュー・アーノルドのことである。
 オリュンズ崩壊後の友人の以後を知らないロンバートにとって、イーリャのする話は会えなくなった友の便り代わりに思えただろう。
 しかし、封の中身がいい知らせを綴じているとは限らなかった。だからこそ、彼女はパートナーのシヴァを伴わずにいる。
「向こうでマシューは元気にしているか? もしかすると向こうでも鬼教官でもしているだろうか?」
「いいえ、中将はもう飛行機乗りではありません……」
「やはり、戦いでの怪我でか?」
 マシューはオベリスク奪還作戦で一命は取り留めたものの片腕と片足を失った。今は義手義足を着用している。
 しかし、伝えたいことはそうではない。
「大将。私が話したいのは……彼らのその後です……」
「……何かあったのか?」
 イーリャの苦渋の顔つきを見て、ロンバートの眉が寄る。
「これはこの世界の誰も知らないでしょう……崩壊の際にパラミタへ移転した人たち――彼らの“【第三世界】での記憶”は全て消えてしまいました……。
 中将も戦いの記憶も私たちのことも。……おそらく、大将の事も……」
 世界崩壊時に限定的にパラミタへと渡れた人々。遺伝子に伝承を受け継ぐ彼らは崩壊する世界を免れてハイ・ブラゼルへと至ったが、代償として高度技術世界の知識と記憶を失い、パラミタと地球のある世界の常識と新たなる記憶の始動のための脳の最適化に見舞われた。彼らが【第三世界】の事を思い出すことはない。
 それは、マシュー・アーノルドという軍人として死闘の空を駆けた英雄の強烈な体験も例外なく消し去った。戦友との記憶も――
「――それで、あいつは今も生きているか?」
「……ええ、ゲートの先にある村で家族と」
 物憂げな表情もせずにロンバートが言う。
「ならそれでいい。おまえが悲観するほどのことでもない――基地でワケも分からずに死んだ連中よりあいつは遥かに幸せだ」
 こめかみの傷をなぞり、続けてこうも言った。
「それに、“死に損ない”にはいい知らせだった」