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平行世界からの贈り物

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平行世界からの贈り物
平行世界からの贈り物 平行世界からの贈り物

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 上映会の招待を受けルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は向かう途中で購入した酒を飲みながら流れる自分とメルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)の映像に目を向けた。

 ■■■

 シャンバラ教導団付近の食堂。

「……確か」
 入店するなりルースは、誰かを捜して周囲を見回した。
 その時、
「父さん、こっちだ」
 娘のメルヴィアが席から立ち上がって父親であるルースを呼んだ。現実では当然親子関係ではない。
「遅れてすみません、メルヴィア」
 ルースは急いでメルヴィアの所へと急いだ。
「いいって、私も今来たばっかりだ」
 改めて席に着いたメルヴィアには気を害した様子は無かった。
 そして、二人はすぐに料理を注文した。
 親子の会話は注文した料理が運ばれてから始まった。

「今日この町に来たと聞きましたが、猛獣使いの仕事はどうですか?」
 ルースはサーカスで猛獣使いとして活躍中のメルヴィアに訊ねた。職業柄パラミタのあちこちを巡業しているため会うのは久しぶりだ。現実は猛獣使いを引退し軍人となっている。
「何とかやってるよ。父さんはどうなんだ? やっぱり軍人の仕事は忙しいのか?」
 メルヴィアは料理を口に運びながら酒を飲む父親に訊ね返した。
「そうですね。ほとんど帰宅するのは夜遅くですから」
 ルースは少し苦い笑いを浮かべながら答えた。
「無理するなよ」
 メルヴィアは少し手を止めてルースを気遣った。
「メルヴィアも気を付けるんですよ。動物好きとはいえ、猛獣が相手なのですから」
 ルースは娘から受けた言葉をそのまま返す。
「……ったく、大丈夫だって。そうそう」
 ルースの心配にメルヴィアは肩をすくめた後、おもむろにサーカスのチケットを取り出して父親に差し出した。
「これはサーカスのチケットですね」
「そうだ。当分はこっちにいるからさ。息抜きでもいいから来てくれよ」
 チケットを受け取ったルースが聞き返すとメルヴィアは笑顔で言った。
「えぇ、休みを取って必ず行きます」
 ルースは笑んで行く事を約束するなり、忘れないようにとポケットに仕舞った。
「……待ってるよ。それより父さん、やりたい事はまだ諦めて無いんだろ。軍を引退したら孤児院を開くっていうやつ」
 にこやかな顔からメルヴィアはふと真剣な顔になった。
「諦めていませんよ。必ず実現します。その時、メルヴィアの猛獣ショーを見せてあげようと思います」
 ルースはまだ先の未来を考えながら言った。
「そうだな。その時が来たら思いっきり協力する。ほら、父さん飲め」
 メルヴィアはそう言うなりルースに酒を注いだ。
「ありがとうございます」
 娘に酌をして貰った酒をルースは本当に美味しそうに飲んだ。

 ■■■

 鑑賞後。
「平行世界のオレもなかなか幸せそうで良かったですね」
 ルースは映像に満足していた。