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DIE4章 大体20時またぐ頃ってダレてくるからテコ入れ

――ホテルの殺人事件の裏側で原因不明の騒動が巻き起こり、被害者まで現れつつあるが事態はどちらも収束の様子を見せそうにない。
 時刻は夜も更ける頃になったが、突如発生した吹雪は益々勢いを強くしている。まるで、まだこの事態は終わらないとでもいう様に。

「……ふぃー……あったまるわー……」
 露天風呂、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が湯船に浸かり蕩けた表情となる。
「あらあら、さっきとは随分と違った緩みっぷりね」
 その表情を見たセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がからかう様に言う。
「仕方ないでしょ、そんな緊張も続かないわよ」
 蕩けた表情のままセレンフィリティは言い返す。彼女は洗い場などに何か危険物は無いか、足元にこう、いい感じで滑る物は落ちてないか。湯船に辿りつくまで緊張の糸を張りつめていたのである。
「まあ、何も無かったんだけどね」
「だからって気を緩め過ぎよ。何があるかわからないんだから」
「大丈夫でしょ。何もなかったし、人もいる中で襲ってくることないって」
 窘めるセレアナにセレンフィリティは手をひらひらと振る。
「そ、そうですよね。これだけ人が居れば襲われることもないですよね」
 若干不安気な様子を残しつつ、白石 忍(しろいし・しのぶ)が笑みを浮かべる。忍は一人でいるのが不安になり、人の多い露天風呂に浸かりに来たのである。
「それにしても、凄い吹雪ですぅ」
 外を眺め、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が呟いた。隣にいた佐野 悠里(さの・ゆうり)も「本当、凄い吹雪だわ……何時になったら帰れるんだろう」と呟く。
 2人の言う通り、吹雪は勢いを増すばかりである。露天風呂はどういう造りになっているのか、吹雪が吹き込んで来ない為問題なく入れているが、一体何時止むのか全く想像がつかない。
「……ほ、本当に大丈夫でしょうか」
 忍が不安そうな表情で呟く。
「まあ止まない物は仕方がないわ。気楽にやりましょうよ」
 リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)が湯船に浮かべた盆の徳利を手に取り、杯に中身を注ぐ。くい、と中身を煽ると「っくぅ〜! やっぱり露天風呂っていったらこれよねぇ!」と赤く染まる顔を綻ばせる。
 ちなみに中身はアルコールではなく、アルコールっぽい何かである。顔が紅潮しているのは温泉のせいだ。実年齢はともかく、外見年齢的にアウトだったのでホテル側からアルコール類が提供されなかったのだ。そうとはつゆ知らず、おはようからおやすみまで飲み続ける勢いで、合間合間食事など挟みながら朝からずっと浸る様に飲んでいた。
 しかしノンアルコールだというのにリーラは酔った様子を見せていた。多分雰囲気で酔ったんだろう。
「そうねぇ、温泉くらい気楽に浸かりたいわ」
 そう言ってセレンフィリティはセレアナにしな垂れかかる。そしてどさくさに紛れて手を詳細に記述すると全年齢指定的に考えて色々とアウトな方面に伸ばす。
「どさくさに紛れて何しようっていうのよ」
 その手をセレアナが窘める様に叩く。
「何って、ナニに決まってるじゃないの」
 然も平然とお前は何を言っているんだ。「こんな状況で」とセレアナは溜息を吐いた。
「こんな状況だからよ……怖いのよ……怖いから温もりが欲しいだけであって決して『ぐっちょんぐっちょんの泥沼の様な【自主規制】に溺れるこのチャンスを逃してなる物か』ってわけではないのよ?」
「セレン……本音が駄々もれな上、さっき部屋でもそう言って襲おうとしたわよね?」
 そう言われ、セレンフィリティは「何の事?」と言わんばかりに目を逸らした。
 尚も「いいじゃないのよ」ともたれかかるセレンフィリティに「そんな気分じゃないわよ」とセレアナはあくまでスルーの態度を取っていた。
「悠里ちゃん、見ちゃだめですよぉ?」
 ルーシェリアは抱きしめる様にして悠里の目と耳を覆う。保護者的に考えてアウトなので。
「……お、お母さん……苦しい……」
 悠里はルーシェリアの胸に埋まる形で窒息しそうになっていた。じたばたともがいて漸く開放される。
 ここまで彼女達の格好を記述していなかったが、勿論全裸である。すっぽんぽんである。湯船にタオル? マナー違反じゃないですか。
「あらあらごめん……どうしましたぁ?」
 解放された悠里は、ルーシェリアの胸をガン見していた。
 胸、いや乳と記述した方が良いだろう。乳は湯船にぷかぷかと浮かんでいた。その浮かぶ乳を悠里はガン見していたのだ。
 どうしたのか、と首を傾げるルーシェリアであったが、やがて顔を上げた悠里は真剣な眼差しを向ける。
「お母さん」
 そして悠里は徐に、ルーシェリアの乳を鷲掴む。そりゃもうがっしりと。
「あら、悠里ちゃんどうしましたぁ?」
 一瞬ルーシェリアは驚くが、掴んできたのが娘である為か慌てるようなことは無かった。
「どうしたらスタイルが良くなる、っていうかおっぱい大きくなるの!?」
 悠里はそう言うと掴んでいる乳を揉みしだく。
「あらあら……悠里ちゃんだってその内大きくなりますよぉ?」
 ルーシェリアが言うが、悠里の乳揉みは止まらない。
「でもお母さんの娘だからって同じように成長するとかわからないじゃない!」
 そう言われ、ルーシェリアは困った表情を浮かべた。
「……う、うぅ……出辛い……」
 これらの光景を、隅っこで眺めていた忍が呟く。あまり長風呂するつもりはなく、少し入ってすぐ出るつもりだったのだが誰も上がる様子を見せない。
 セレンフィリティとセレアナはなんやかんやで乳繰り合ってる(ように見える)し、佐野親子は娘の一方的な乳揉みしだき継続中。少々湯気で見え辛い物の何ともエロい光景を繰り広げており上がる様子など皆無である。
「リョージュくん……助けて……」
 忍がいないパートナーに助けを求めるが、居たら居たで問題になっていたと思われる。
「……んー? もうお酒無くなっちゃったわー……ひっく」
 その横で一人アルコール的な物を飲んでいたリーラであったが、飲みきったのか徳利はひっくり返しても一滴も出て来ない。
「しょーがないわねー、次はバーで飲みなおすか……ひっく」
 リーラはそう言って立ち上がる。まだ飲む気か。
「あ、わ、私もあがります!」
 それを見た忍はチャンスとばかりに、慌てて立ち上がる。
「あーなら一緒に飲む――おろ?」
 湯船から上がった所で、ふらりとリーラの身体が揺れ、そのまま倒れそうになる。
「危ない!」
 忍が手を伸ばし、リーラの腕を掴んだ。リーラも足を出して踏ん張ろうとした。が、
「あらー?」
ズルリ、と床が滑った。濡れた風呂場の床はとても滑りやすいので気をつけましょう。
「え、ちょ、ちょ……!」
 忍も堪えようとするが、リーラに引かれた上、同様に足を滑らせてしまう。結果、
「あぐっ!?」
リーラは後頭部を床に強打し仰向け大の字に、
「ひゃああああああぶっ!?」
忍は洗い場の椅子などが積んである場所に頭から突っ込んだ。積み重なった椅子や備品が当たりに散らばってしまう。
 そのまま忍は尻を突きだす様に(こんな感じ→or2)してピクリとも動かない。
「あらあら、大変ですぅ!」
「ちょ、大丈夫!?」
「何!? 何事!?」
「ああもう……だから言わんこっちゃない……!」
 ルーシェリアやセレンフィリティ達も慌てたように湯船から上がり2人を助けようとする。が、
「「「「え」」」」
 足元に転がっていた石鹸を、ほぼ同時に踏んづけた。忍が散乱させた備品に、石鹸が混じっていたようである。
 ほぼ同時に4人の身体が浮かび上がり、受け身を取る暇も無く後頭部を打ち付ける。ゴン、と大きな音が露天風呂に響いた。そしてそのまま大の字になってしまった。
 あっという間に大の字が5つとor2が1つ出来上がった。勿論、全員全裸だ。まさかこんな形でサービスシーンになるとは思いもよらなかった。
 彼女達の救いは、第一発見者は女性だった為衆目に晒されることは無かった、ということだろうか。

     * * *

 一方その頃、リーラのパートナーの柊 真司(ひいらぎ・しんじ)は自宅にいた。
 パートナーが温泉に行く、というので留守番をしていたのであったが、流れていたニュースで現在宿泊しているホテルで事件が起きるという事を知ったのである。
「あいつ、大丈夫か……? いや、まあ大丈夫だろうな」
 露天風呂で後頭部打って大の字、なんて状況なのも露知らず、テレビを眺めているとチャイムの音が。
「ん? こんな時間に誰だ?」
 そのまま扉を開ける。直後、真司の脳天から全身にかけて衝撃が走った。
 殴られたのか、と気づいた時にはもう遅い。声も上げる事も出来ず、そのまま倒れ込む真司。薄れゆく意識の中で自分を襲った者の声を真司は耳にしたのであった。
「あれ? うわやべ、間違えた……」という声を。