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リアクション
★コーン・スーって誰ですか? よく分かりませんが私は土星くんの喜びが楽しみなのです★
『ここに彼を讃えよう
さあ目を見開け 耳を澄ませ』
小さな体をちょこまかと動かし、レナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)は何かの準備をしていた。
しかしふと、空を見上げる。天井には青――どうやら今、地上は晴れのようだ。
青空に雲が混じる。その雲のひとつがまんまるとしていて、レナリィはくすりっと笑った。どこか『彼』を彷彿させる雲に、先日のことを思い出したからだ。
レナリィはその日、遺跡にいた。土星くん 壱号(どせいくん・いちごう)の仕事を手伝うためだ。
「コーン、これは何をする機械なんだ?」
同じく手伝いに来ていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が首をかしげた。――え、コーンって誰だって? サア、誰でデショウ?
『ん? ああ。それは……簡単に言うと空気清浄機やな。まあ他にもいろいろ機能持っとるんやけど』
「なるほど、地下だからな……しかし随分と変わった構造をしているようだが」
『わしに詳しいこと聞かんでくれ。知らんことも多いんや。やから壊れたその装置は直せん』
「でも、ここで作られたんでしょ?」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が聞く。実はルカルカとダリルがここにいるのは手伝いの他に、土星くんをここに引き止める役割もあったりする。
土星くんが苦笑した。
『まあ、せやけどな……わしはあくまでも住居の制御が仕事で、そりゃメンテなんかはするけど、ほとんどは内部プログラムが自分でなんとかしよるし、構造はよく分からん』
もしかしたらダリルの方がようけ知っとるかもな。
土星くんはそういいながら、遺跡の奥へ奥へと進んでいく。今、この遺跡を綺麗に掃除しながら、使えそうな部品や機械を探している。壊れていても直せる範囲なら直し、住居に持っていくのだ。
持って行ってどうするかと言うと
『しっかし小型移動施設か。考えもせんかったわ』
「街の周囲はまだ未知の部分が多いからな。
その危険を調べ、また資源を探し、ニルヴァーナの遺跡が有ればその探索拠点となる小型の移動施設があればいいと思っただけだ」
ダリルが『移動式住居を小型簡易に再現して小さな移動施設を作れないか』と提案し、試験的にやってみようということになった。
この遺跡は土星くんらスークシュマの工場であると同時に、移動式住居の工場でもある。もしかしたら使える部品があるのではとやってきているのだ。
「これは使えるのでは?」
『せやな。ちょっと見てみるか』
何かの装置をいじり始めた2人から少し離れ、ルカルカが周囲を見渡す。
元工場なだけあって装飾品などない殺風景な景色だ。土星くんはここで生まれて、すぐに大勢のニルヴァーナ人と共に危機を脱した。だからこの地にあまり思い出はないらしい。覚えているのは、住居に入れなかった人たちが手を振って見送ってくれた笑顔だけ。
いつも通りに見える土星くんの顔を横目で見て、ルカルカはまた探し始めた。そして何か輝くものを見つけた。
「……おーい、こんなのみつけたよー」
『おお? これは……』
駆け寄ってきた土星くんが驚く。土星くんらスークシュマが座る制御台だった。これがないと、スークシュマといえど住居を動かせない。
『……まだ登録されとらんな。これなら他のスークシュマでも動かせる』
スークシュマ一機に住居一つ。同じスークシュマでも他の住居は動かせない仕組みになっている。
「じゃあ、コーンの仲間にも役目が増えるのね」
「何か出来ることがある方が、彼女にとってもいいだろうな」
『せやなぁ』
「でもうまくいくかはダリルと土星君次第。頑張れ、まん丸!」
『ああ、忙しくなりそうや。またこんどキルルもこっち呼んで……って、なんや、そのまん丸て』
呆れた声を上げる土星くん。ダリルはその様子を見て
(やはりまん丸で一位、というわけではないようだが、結局、何の1位だったんだ?)
あまり深く追求するとバレるので問うことが出来ず、謎は謎のままだった。
そして休憩中。レナリィが手土産として持ち込んでいたお菓子をみんなでつまむ。
「おーめでとう、おーめでとうー。まんまるまんまる、おめでーとうー♪」
『……なんやねん、その歌は』
「まんまるおめでとうの歌よ」
『は? なんや。今、まんまるってのが流行っとるんか?』
「まんまるって可愛いじゃない……あ、このお菓子美味しい」
『どれどれ……おお、中々ええの。甘さ加減もちょうどええわ』
「そっか。よかったぁ」
少し変わった料理が好きな土星くんだが、普通のものが嫌いなわけでもないようだ。甘いもの、そうでないもの。両方楽しげにつまんでいる。
『よっしゃ、休憩はこれぐらいにすんで。制御台見つかったし、本格始動できそうやからな!』
そう気合の声を上げた土星くんだったが、手と口元がお菓子まみれだ。格好がつかない、と皆で笑う。
レナリィは最初、土星くんが寂しい思いをしていないかと遺跡へ足を運んだのだが、この調子なら大丈夫そうだと、今はお祝いの準備に集中している。
「……ふふっ。このこと知ったら、どんな顔するかなぁ〜」
今からその日が楽しみだ、と笑った。
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