リアクション
終章
完全破壊のち豚汁パーティ
祭りが終わったモコトの町。ものの見事に雪山すべてを吹き飛ばした参加者たちは、地元のおばちゃん総出で作ったアツアツの豚汁を啜っていた。
そして大きな掲示板の前では、町長自らマイクを握り、相変わらず治らない語尾の『だべ』口調で表彰を行っていた。
アグレッシブ賞 ルカルカ・ルー、ダリル・ガイザック、カルキノス・シュトロエンデ、夏侯 淵の四名。
ビューティフル賞 紫月 唯斗。
アイディア賞 ハイコド・ジーバルス、ソラン・ジーバルス、ニーナ・ジーバルスの三名。
アグレッシブ賞に関しては文句なしのルーのチーム。天変地異を引き起こすといったパフォーマンスどころか災害クラスのスキルで優勝。ハデな破壊を披露したチームはたくさんいたが、その中でも頭一つ抜き出る成績となった。賞状と賞品を授与する際、
「あんなこと普段からやったら駄目だ、だべ?」
などと町長から念を押されたほど。
ビューティフル賞の唯斗はきわどい接戦の末、優勝した。セレンフィリティ・セレアナペアとは点数差などあってないようなもので、美しい花を剣で作り上げた(速すぎて見えなかったがきっとそうだと思っている)唯斗と、花火と爆弾と剣の舞で観客の注目を集めた上位ランカーの先駆けセレンフィリティペアとの評点は実は表彰のぎりぎりまで続けられたほど。
アイディア賞のハイコドチームは、玉を作って高速回転させるという誰も想像していないパフォーマンスを披露し、審査員も賞賛。考え付いても実行できる人はそうはいないだろうという点と、狼にまで変身して大暴れするという人間離れした大技を披露したという二点が評価されての優勝となった。そのほか、雪玉という意味では自ら雪玉となって転がり、雪山を10本ぶち壊すという荒業を披露した(と審査員たちは思っている)葛城 吹雪や、機晶合体と歌で大暴れした輝チームともものすごい接戦となった。
優勝した3チームは、この祭りの取材に訪れたマスコミ関係の方々に熱烈なインタビューを受けていた。
「セレン、ごめんね。優勝獲れなくて」
「ん? なにシケたこと言ってるのよ。楽しくてスカッとしたからいいじゃない。ほら、豚汁のおかわりに行くわよ、セレアナ!」
「楽しかったね! おねーちゃん!」
「ええ。優勝を取れなかったのは残念ですが、陽太には良い土産話ができましたわ。ノーン、豚汁のおかわりはよろしくて?」
「ふー……豚汁、温かくておいし……」
「一仕事終わった後の豚汁は格別だね、アデリーヌ!」
「うん、いい感じの連係だったね! もっと一撃の攻撃力を高めれば雪山を2、3本多めにぶっ壊せれたかもだし。もぐもぐ」
「お疲れ様、透乃ちゃん。朧さんもお疲れ様……豚汁、飲む?」
「よ、陽子ちゃん、虚無霊って、そんなの飲むのか?」
「やっちゃんも式神に上げてみたら? 案外飲むかもしれないよ? こくこく」
「よ、お疲れ二人とも。ほら、豚汁」
「わーい! ありがとーきょーちゃん! すっごく楽しかったの!」
「おかげでゆいの服がびしょ濡れになってしまいましたわ。着替えを持ってきておいてよかったですわ」
「うーん、あったまるね、豚汁。灯、紅葉、今回の成果には満足してる?」
「うん! いい宣伝になったと思います! 最強アイドルとしてまた一歩前進しました! 豚汁あっつい!」
「アイドル活動なのかどうかはともかく、とても楽しかったです。あ、おいしー」
「そんなに落ち込むことないですよ、ハデスさん。慣れてないスキルが暴発するなんて、よくある話です。ねえ、色花さん?」
「朱鷺さんの言う通りです。私も習得するときは苦労した。にしても、豚汁あったかくて美味しい。ずず……」
「あ、いや……いつの間にそんな話になっているんだ? そしてなぜ俺は豚汁をご馳走になっているんだ?」
それぞれが思い思いの形で、時に隣のチームを交えて、豚汁パーティを楽しんでいた。
彼らのパフォーマンスはマスコミ関係及び動画に詳しい方々の手によって動画サイトにアップロードされ、契約者、とりわけ優勝したチームのパフォーマンス動画は再生数が桁違いに伸びて行ったとか。
ちなみに氷系のスキルを持っている契約者たちは地元の子供たちの為に、少し広めのスケート場を作ってあげた。
蒸発して雲のようになった雪が上空にたんまりあるので、それらを使って作り出したものだ。ほんとうはスキー場にしたかったのだが、地元の人間はスキーがあまりできないという事実が発覚し、滑るだけなら慣れれば滑られるスケート場に変更。元気の有り余っている契約者も交えて、楽しいスケート遊びが、夜も更けるまで続いた。
第一回雪山大破壊祭り。
果たして第二回があるのかどうかは来年の降雪量次第だが、またたくさんの参加者を募って行いたいと町長は言う。
宴もたけなわ、町長は言葉の終わりに、ルーのチーム、ハイコドのチーム、そして唯斗に盛大な拍手と賛辞を述べた。
もちろん、語尾に『だべ』と付けて。
雪が降るとテンションが上がります、佐久間豊です。残念ながら我が地元では今年はほとんど雪が積もりませんでした。皆様の地元はいかがですか? 今回は皆さんにスカっと爽快なシナリオを作ったつもりです。爽快さが足らないと感じられた方、大変申し訳ないです。精進致します。ともあれ、多数のご参加ありがとうございました。ストレスは身体に溜めるとよくないので、たまには思い切りスカっとするくらい発散したほうがいいと思いますよ。もちろんリアルでは破壊工作や爆弾、超奥義などではなく、ボーリングやカラオケやゲームなどで、皆で健全に競い合ったり、息を合わせて協力したりでお願いします、だべ?