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リアクション
三階・夜炎鏡の間
部屋の中央には棺が横たえられており、厚いガラスの蓋越しに、夜炎鏡が眠らされているのが見える。
この階にはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)と彼女のパートナーが残った。他の契約者たちは、すでに上の階を目指している。
「やれやれ。寝顔は只のガキなんだがなー」
棺を覗き込みながらベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)が言う。彼のとなりでは、ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)が夜炎鏡に自分の境遇を重ねていた。
「……駒として利用されている間は、気楽でいられるんだ。物事を考える必要がないからさ。でも、いちど疑問を抱くと今までの自分が全否定されたようで、急に怖くなる」
ジブリールはベルクを見上げてつづける。
「オレ、夜炎鏡は何にでも好奇心を示すだけの子供に見えたんだ。だから夜炎鏡がやってきたことを否定するんじゃなくて、他に面白いと感じる事を皆で模索していけば、自然と新しい世界を知るようになって……。殺し以外にも興味を示すと思う」
「たしかに世間を教えれば、変わるかもしれねぇが。こいつが大人しく耳を貸すとは思えねぇな」
血まみれのチェーンソーを楽しそうに振り回す夜炎鏡を思い出し、ベルクは苦笑する。まずはこいつの物騒思考を何とかしねぇ限りそれも叶わぬ夢ってヤツだろう。
ジブリールの代わりに答えたのは、フレンディスだった。
「あの時マスターはおっしゃいました。夜炎鏡には善も悪もない……。しかしながら、それは私達も同じ立場なはずです」
「そうだな」
――だから、厄介なんだ。台詞の続きをベルクは呑み込んだ。
人の倫理を超越した者どうしが戦えば、それは文字通りの死闘になるだろう。すでに真実を計る天秤は傾いている。その釣り合いを保つためには、フレンディスか夜炎鏡、どちらかの命を乗せるしかない。
(物騒思考ならフレイも相当だ。もはや刀で説得するしかねぇだろう)
ベルクが、殺気立つ忍者さんの背中をポンッと押した。
「八紘の妨害は、俺とジブリールで警戒しておく。――フレイは存分に殺りあってこい」
フレンディスは小さく頷きを返すと、棺の前に立った。
「夜炎鏡さん、聞こえますか? 私、僭越ながら、先の裸踊りにお付き合い出来なかったお詫びと致しまして。私たちにふさわしいお遊び……殺し合いをしに参りました」
寝ている間に攻撃を仕掛けることもできたが、そんな無粋なまねはしない。無下に楽しみを奪わぬようフレンディスは相手が目覚めるのを待つ。
棺の蓋が、カタカタと動き始めた。
夜炎鏡の目覚めを感知したフレンディスは、身構えながら告げる。
「……さぁ、殺りましょうか」
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