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リアクション
■貴方の死に様、こんなモノ
【ヘリワード・ザ・ウェイクの死に様】
燃え盛る豪邸を眼下に、自分が率いる空賊団が教導団の戦艦により包囲されている。
ヘリワードの駆る艦もまた、無事ではなく、所々から火の手が上がり、至る所に団員達が倒れていた。
そして、仲間達の倒れるブリッジでヘリワードもまた教導団員の放った弾丸により、血の海に沈むこととなっていた。
動画はそこで終わったようだ。
「これは……」
何故、こんな結果になるのか、どうしてなのかは一切わからない。
ただ、イヤホンを通じて耳に残った罵倒の声だけがヘリワードの耳には残っていた。
「来たわね……」
自分の名前が表示されるなり、セレンは素早くマウスを動かして動画を表示する。
セレアナもそれに気づいたようで傍に座っていた。
【セレンフィリティ・シャーレットの死に様】
とあるどこかの街角。
子供が信号を無視して道路を横断しようとしたところへ走ってくる大型トラック。
跳ね飛ばされる直前でセレンが子供を突き飛ばし、響く衝撃音。
子供は助かったものの、セレンは血まみれであり生きてはいないだろう。
そんな彼女に駆け寄り、抱え上げ、必死になり起こそうとする愛すべき人の姿。
正直、セレンは動画を見て公開していた。
「セレン。 でもこの事件、前もって意識しておけば回避できるんじゃない?」
「そうね、その為にも見直しましょう」
既に依頼とは違うところではあるが、それでも今後のために見直しておきたい。
そう思う2人は動画を再度読み込み直す。
細かい部分もしっかり見ておこう、そう意識を集中させる。
だが、表示された場面は先ほどの街角ではない。
「えっ」
移っているのは今、2人がここにいるカフェテラス。
2人は動画を食い入るように見ており、次の瞬間糸が切れたようにその場に倒れる。
―――背筋を舐める、不気味な気配。
「セレアナッ!」
セレンは咄嗟にセレアナを抱きかかえ、椅子から転げ落ちる。
死んでない。
「ヘイリーッ!?」
だが、丁度反対側からリネンの悲鳴が響く。
リネンがヘリワードの元に駆け寄ると、彼女はピクリとも動かず、机に突っ伏している。
「ちょっと、死なないんじゃなかったの!」
ゆさゆさとリネンがヘリワードの体を揺らすが一切の反応がない。
まるで、時間が止まってしまったかのように。
「リネンさん!」
慌てるリネンの元に貴仁とかつみ達がばたばたと駆け寄っていく。
「うむむ、突然ヘリワードの動画が更新されたと思ったらすでに時遅しとは……」
ヘリワードの見ていた動画はパソコンの目の前で糸が切れたように倒れるシーンが繰り返されている。
「何かが動画サイトに手を加えた……? 少し調べてみよう」
エドゥアルトはそういいながら、【神の目】を用いて動画を注意して調べる。
だが、動画からは何も感じ取れない。
しかし、この周囲を取り囲むおぞましい何かを感じ取る。
ゆっくりと振り返るエドゥアルトの目には、しっかりと映っていた。
唾液を口から零れさせ、やけに長い舌を携えた犬の様な、異なる存在。
「なんだ、これ……」
呆然とするエドゥアルトが存在を認知したことに気づいたのか、犬は勢いよく飛びかかってくる。
「させませんよ!」
貴仁が咄嗟に抜き放った刀が、犬の爪を阻み、かつみが引き剥がすように蹴り飛ばす。
「こいつがヘイリーをやったのだとしたら……容赦はしないわっ!」
追撃と言わんばかりに、リネンの剣が閃き、半透明の『犬』を胴体ごと切り裂いた。
「―――あっ?」
その瞬間だった、先ほどまで全く反応を見せなかったヘリワードが起き上がり、周りで戦闘態勢を取っている面子を見て瞬きしている。
「ヘイリー、よかった!」
「え、何が起きたの……? 動画を見てただけだと思ったんだけど」
ヘリワードは何が起きてこんな事態になったのかはわからないようで、完全に混乱しているようだ。
「変ですね、ヘリワードさんは確か一度死んでも復活できるはずなんでしょう?」
ナオの疑問にリネンは頷く。
「うむむ、つまり『死』んではいなかったと?」
「あの犬、一体何者が……」
ノーンやエドゥアルトが考えるが一向に答えは出ない。
だがしかし、あの存在がこの事件を引き起こしているということだけは確信が持てていた。
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