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【祓魔師】アナザーワールド 2

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【祓魔師】アナザーワールド 2

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第5章 荒廃する時 Story5

 先発組みの弥十郎は全精神をアークソウルに集中させ、炙霧の気配を探し進んでいる。
 それらしいものは未だ見つからず、焦りの感情を必死に抑える。
「―…だいぶ奥のほうにいそうだね」
「あ、定期連絡がきたわ」
 和輝からテレパシーを受けた賈思キョウ著 『斉民要術』は農業専門書が、小さな声音で仲間たちに知らせた。
『こちら和輝。今の状況を知りたい』
「(炙霧とサリエルの発見はまだよ。後、まだ敵にも見つかってないわ)」
『了解。引き続き捜索を頼む。発見次第、俺の携帯に着信を残すように』
 そう言い切るとテレパシーを切った。
「皆、例の2つの気配うちどちらか感じたら、和輝に連絡してあげて。着信だけでいいからね」
 弥十郎たちは斉民の言葉に頷き、引き続き捜索に集中する。
「それにしても、だいぶ進んだわね…」
「後戻りできない任務だし、全力で頑張らないとね」
 目印なんて残してしまえば、侵入者がいると教えているようなもの。
 ここでイージーミスは命取りになってしまう。
 まさに片道切符の状態だった。
 もとより覚悟の上であり、命を失うかもしれない場所へ赴けるのも、仲間との信頼あってことだ。
「(パラミタをこんなにしちゃうなんて。悪い子め、ワタシが絶対見つけてやるよ)」
 ペンダントを強く握り、さらに祈りに集中して現況を探す。
 分かれ道にさしかかった時…。
 弥十郎の意識のイメージに、魔性とも人とも区別し難い者の気配が飛び込んできた。
 “橙色のこの感じ…、魔性と人のハーフ?こんな気配、あの子しかいない!”
 そう感じた弥十郎はすぐさま和輝の携帯へ着信を残す。
「聞いて、皆。今…あの子の気配、炙霧を見つけたよ」
「そこにサリエルもいるのでしょうか?」
「1つに集中していたからそこまでは…」
 ミリィの問いに分からないと言い、ふるふるとかぶりを振った。
「たぶんだけど、近くにはいるんじゃないかな」
「そちらはお任せください」
「うん、頼りにしてるよ♪」
「はい!わたくしも皆さんと共に、この世界を守ってみせますわ」
 にっこりと年相応の少女の顔で微笑み返し、探知に戻ったとたん祓魔師としての顔に戻り探知に集中する。
 彼の言葉通り、おそらくサリエルもその近くにいるはず。
 まずは左の道はどうだろうか。
 かぶりを振る弥十郎の仕草を目にし、イメージの範囲から炙霧が外れてしまったのだと理解する。
 こっちの道は違うと判断し、ならもう片方の道の先にだろう。
 今度は頷いている姿に、こっちで正解なのだと分かり、ほっと息をつく。
「―…一際大きな気配、これがサリエルに間違いないですわ」
「やばいな、ボコールも待機しているぞ」
「ソーマ。ここは、何人かと合流してからのほうがよさそうですよ」
「分かってるって、リオン!」
 いきなり突っ込んでいくマネはしないと言い放ち、大人しく待機する。
「和輝さんに連絡を入れました。まもなく追いついてくれると思いますわ。…さっそくどなたからか通話が……」
 目印がなくともソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)や斉民たちの気配を辿れば、合流しやすいだろうと思い、あえて道順などのメモはとらなかった。
 全員と対話できる通話モードに真宵から連絡が入り、とれかかっているイヤホンを片耳に入れなおす。
『もうすぐつくから、ちゃんと見張っててよ』
「えぇ、今は敵の気配は動いてないようですわ」
『途中でグラキエスたちと合流したわ。全員合流するまで待機なのかしら』
「目的としては3つありますから、そのほうがよいかと」
『分かったわ。と、言っている間に着いたけどね』
 アークソウルで仲間の気配を辿ってきた真宵が、ミリィに向って片手をひらひらと振った。
「まだ到着してないのは数人かしら?」
「そうですね…。あっ、いらっしゃったみたいですわ」
 カティヤたちの気配を感じ振り返ると、まだ合流できていなかった者たちの姿が見えた。
「皆さん、町中の活動お疲れ様ですわ。これから任務を続行するのですが、すぐいけそうですか?」
「―…ふふ、全然大丈夫よ」
 本当は水魔を鎮めるためにかなりの精神力を消耗しているものの、自分たちだけ泣き言を言っていられないと精一杯の笑顔を見せる。
「お父様、さっそく任務の分担をいたしましょう」
「そうだね、ミリィ。最優先するべきことは、サリエルを止めること。直接、彼の相手をしてくれる者はいるかい?」
「はいっ、は〜い!ルカたちに任せて♪」
 ルカルカがピンと片手を上げて声音を押さえて言う。
「お、カティヤが的になると言っている。さすが女神様だな」
 羽純は“女神”と心にもないことを言い、彼女の背を押し出す。
「ちょ、ちょっと!何するのよ。んもう、強引な子ね…。まぁ、ここまできたんだから引き受けるわ♪」
「ありがとう。一番苦しい役割になるから、あまり無理すぎないようにね」
「その間に、器の奪還ってことね?」
「そうなるな。で…誰かやってくれる人はいるかな?」
 カティヤに頷き“器”の確保を誰が受けてくれるか、仲間たちの顔を見て聞く。
「私がやるわ。絶対助けるんだから!」
「すごい気合いだね。美羽さんは本使いだからサポートが必要だな」
「その役割はわたくしに決まっているわ」
 自分以外はありえないという態度で、涼介の前にずいっと真宵が出る。
「あはは、先生はいろんな人に好かれているな」
「当たり前なのです。真宵は…」
「こらこらそこっ、余計な誤解を受けること言わないでちょうだい!」
 まだラブの意味で勘違いしているテスタメントの頭を、拳でぐりぐりし制裁して黙らせる。
「それと、大元の相手は誰が……」
「私たちにお任せください!」
「うん、分かった。フレンディスさんたちに任せるよ。では、もうひと頑張りしようか」
 涼介の言葉に仲間たちが一斉に最高難易度の任務の続行を始めたのだった。