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白百合革命(第2回/全4回)

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白百合革命(第2回/全4回)

リアクション


『9.女王の魔道書』

 東シャンバラのロイヤルガード宿舎に、康之と葵は報告に戻ってきていた。
 優子とアレナは回復したということで、料理をして2人を待っていてくれた。
「アレナ、元気になってよかったな。でも、絶対油断するなよ?」
 元気な時こそ心配だと康之は思う。
 優子もアレナもなんだかんだで無茶をするタイプだから目が離せないのだ。
「はい、康之さんと葵さんも、無茶しないでくださいね。今日も元気で戻ってきてくれて嬉しいです」
 アレナは微笑みながら、料理をテーブルに並べていく。
 2人が用意してくれた、スープと、スパゲティとサラダを食べながら、報告しあう。
「今回はちょっと収穫があったんだぜ」
 キマクで聞き込み調査を行った康之は、写真の男性についての目撃情報を話していく。
「それらしい奴が、大荒野の小さなオアシスを拠点としてる、盗賊団の一味と一緒にいたらしいんだ」
 その『焔狼盗賊団』は、既に壊滅してしまったとのことだ。
「そいつは、男か女かよく分からない金髪で金色の目の若者に、べったりくっついてたって話だ。こっちの若者も光の魔法を用いて盗賊行為をしてたみたいだから、人型になった魔道書とか?」
「金色の光の魔道書……」
 康之の言葉に、アレナが手を止めて考え始める。
「あたしからの報告はね、御堂晴海さんが言っていたことなんだけれど」
 葵は、晴海が言っていたことを報告する。
 ヒューはダークレッドホールの近くにはないみたいだということ。
 晴海とヴェントや、集まった人には抑えるだけで精一杯だということ。
 そして、ダークレッドホールは、人為的に魔法の発動で発生させたものではなく、過去の封印か何かが解けかかって発生した現象のような気もする……そう晴海が言っていたと話した時。
「あ、あの……」
 アレナが緊張した面持ちで、フォークを置いた。
「何か心当たりがあるのか?」
 優子もカップを置いて尋ねる。
「女王様の魔道書のええっと……グラ、なんとかさんが、そんな姿だったかと思います。中性的で、金髪で、金色の目でした」
 アレナは遠い記憶をゆっくり探っていく。
「そう……エリュシオンの魔道書に対抗するために、女王様の血で書かれた女王器で……王家の方が使っていました」
 その後、戦争でどのように用いられたのかはアレナは詳しく知らない。封印されてしまっていたから。
「その女王の魔道書が、エリュシオンの秘術書の1冊を長きにわたり封印していた。そして、その封印が解けかけたために、抑えこまれていた秘術書の力――ダークレッドホールが出現した。とは考えれらないだろうか?」
 優子の言葉に、葵は腕を組んで考える。
「脱走した地球化兵のパートナーが、シャンバラの女王の魔道書なのかな? そんなにすごい力を持ってるとは聞いてないけど……」
 エリュシオンの魔道書の力を最大限に引き出せるのは、パートナーでも、魔道書本人もなく、龍騎士だという。
 同じように、女王の魔道書も資格を持たないものは、全ての術を扱うことは出来ないのかもしれない。
「推測でしかないが、調査に当たっている者に伝えた方がいいだろう」
 優子は携帯電話を取り出して、まず宮殿に連絡を入れた。


『10.地下要塞』

 竜司達から話を聞いたリナリエッタは、マインドシールドの能力でガードしながら、鍾乳洞を進んでいた。
 明かりは点けていないが、ディメンションサイトの能力で、周囲の状況は把握できていた。
 竜司は、今回はノクトビジョンを装備してきた。銃型HCでマッピングしておいた地図を見ながら、魔界コンパスで方角を確認しながら進む。
 光学迷彩で姿を見えにくくし、殺気看破やトレージャーセンスの能力で周囲を警戒し、探っていく。
(オレの後ろ歩いとけ)
 リナリエッタの腕を引っ張って、竜司は自分の後ろを歩かせる。
(力強くていい男ねぇ。イケメンじゃなくてもカッコいいわあ)
 リナリエッタは竜司を頼もしく思いながらついていく。
 ほどなくして、以前探索を諦めた場所まで出た。
 この先の突き当りと思われる場所で、異変が起きたのだ。
 竜司は念のため、HCの電源を落し、催眠にかからないよう気をつけながら、護国の聖域、フォースフィールドの能力で防御を固めておく。
(何もない……が、なんか感じるぜェ!)
 竜司のトレジャーセンスに反応があったが、先に道は無く、壁があるだけだった。
 ただ、その壁は鍾乳石とは違う石の、岩壁だった。
(何もなさそうねえ)
 行き止まりの少し前で、竜司とリナリエッタは周囲を確認してみるが何も見当たらない。
 竜司は落ちていた石を奥へと投げてみる。そして「誰かいねえか?」と、呼びかけてもみた。
「あの壁……不自然よね」
 リナリエッタは警戒しながら先に進み、行き止まりの壁に手を当てた。
 途端、ぽうっと、辺りに光が生まれた。
「離れろ!」
「大丈夫、操られたりしな……」
 竜司がリナリエッタの手を掴み、離れさせようとしたが、それより早く。
 壁に魔法陣が浮かび上がる。
 そして、壁から飛び出した光が、リナリエッタの身体を覆い――竜司ごと、壁の中へと引っ張っていった。

○     ○     ○


 リナリエッタと竜司は光の力に引っ張られ、壁の中を十数秒ほど漂った。
 目映い光が収まった後、2人が目にしたのは白い壁、だった。鍾乳洞の中ではない。
 白い壁と、天井、そしてドアが目に入る。
 建物の中の、大きな部屋のようだった。
「あー! ニヒル、てめぇ、また一般人連れ込みやがったな!」
 コンピューターで作業をしていた青年が、竜司とリナリエッタに気付き、絵をかいていた男――銀髪で青い瞳の青年を睨んだ。
(あれは……脱走兵!?)
 リナリエッタは携帯電話を取り出して確認する。
 間違いない、エリュシオンの脱走兵だ。
 ついでに、携帯の電波が届いていないことも確認した。
「いーだろ、仲間沢山いた方が。今日の子はアタリみたいだし、ね、グライド〜。でも僕は、グライドが一番だよぉ〜」
 紙とペンを放り出すと、バタバタとそのニヒルと呼ばれた脱走兵は部屋から出て行った。
「ったく、いい加減にしろよな」
 ため息をついた後、眉間に皺を寄せながら青年は竜司とリナリエッタを見る。
「あのお、ここどこかな〜?」
 とりあえずリナリエッタはにこっと笑みを浮かべてコンピューターの前にいる青年に近づいた。
「鍾乳洞の中にいたはずだが」
 竜司も警戒しながら男に近づく。
「ここは、シャンバラ古王国時代に作られた、シャンバラ宮殿の避難用地下要塞。地上との出入り口はない。お前等地球人だろ? 連れ込まれたお前達は死ぬまでここから出られない。諦めろ」
「ち、ちょっと。唐突過ぎてわけがわからないわ〜。あなたも死ぬまで出られないってことかしら? さっきの人は、連れてくる能力を持っているみたいだったけど、外に送る能力もあるんじゃなあい?」
「アイツにあるんじゃない。アイツのパートナーが特殊な能力を持っているだけだ。鍾乳洞に探索に訪れた者を、パートナーに頼んで引っ張り込んだり、始末したりしてるんだ。で、どうする?」
「どうするって……。まだ死にたくないわあ」
 リナリエッタは目を潤ませる。演技で。
「壁を破壊して、出るしかないかァ!」
 竜司は腕をぶんぶん振り回す。
「この要塞は古代の技術で作られてるからな、人力は勿論、イコンでも壁を砕くことはできやしない。でまあ、死にたくないんなら、お前俺の女になるか? そう報告すりゃ、手は出さねーだろうし」
 青年はリナリエッタの魅力的な身体を見ながら言った。
「報告って、この要塞を管理するリーダーに?」
「リーダーは、ニヒルのパートナーのグライド。その下に古代人の守護天使の男性と、ヴァルキリーの女性がいる。この2人に見つかったら、地球人は酷い目に遭うこと間違いなし。ここじゃ魔法の類は一切使えないから、抵抗は出来ないぜ」
「てめえも地球人じゃねえのか? 酷い目に遭わされた後かァ?」
 竜司問いに、青年は軽く笑みを浮かべて首を左右に振った。
「俺はヴコール・アニシン。元天学のパイロット。さっき話した古代人の守護天使、フェクダ・ツァンダのパートナーだ。女の方は、俺の女にしてやってもいいが……おまえはなー。残念だが諦めろ」
「そんなこと言わないで。彼、見かけによらず頼りになるのよぉ。舎弟ってことでどうかしら?」
(天学のパイロットか、舎弟にしてやってもいいかァ!)
 リナリエッタの言葉を竜司は脳内で反対に捉えていた。
「ん、あーそうだな。ちょっと耳かせ」
 ヴコールは竜司に近づくと耳を引っ張って、小声で言う――。
「さっきのアイツ、ニヒルを殺せ。成功したらお前は舎弟だと、フェクダさんに説明してやる」
 彼の眼がギラリと光る。リナリエッタには、野心の光に見えた。


『11.焔狼盗賊団の末路』

 竜司とリナリエッタを見送ったアルファは、念のため水を用意しておこうとオアシスへと近づいた。
「もしかして……あなたも、鍾乳洞が気になって調査をしているのですか?」
 調査を終えて、水からあがったばかりのジャジラッドに尋ねる。
「……ああ、ここには何もないようだ」
「ええ、わたくしが調査した時にも、このオアシスからは何も感じられませんでした、が……」
 アルファは石や木の棒が立てられている場所に目を向けた。
 焔狼盗賊団の墓と思われる場所だ。
「鍾乳洞の前で死んでた奴らの墓だろうか」
 ジャジラッドは枝を引き抜いて、墓を掘り返した。
 そして……墓の中にあった、遺体に触れてサイコメトリで探る。
「……盗賊の方、でしたか」
 アルファが近づいて尋ねる。
「間違いないようだ。コイツらは、鍾乳洞の前で自害した」
「それは、わたくしが入った時と同じように、何らかの力で操られたからだと思います」
 アルファは自分の体験をジャジラッドに語った。
「ここに訪れた盗賊団員を自害に追いやった奴がいる。おまえを操った奴と同じなら、まだこの近くにいるということだろう」
 いくつかの遺体、遺品からジャジラッドはもう一つ、興味深い盗賊達の過去を知った。
 盗賊団員と一緒に、エリュシオンが手配している脱走兵の姿があったのだ。
 魔道書と思われる中性的な若者の姿も。
 どうやら、共に鍾乳洞の奥へと向かったようだ。
 だが、自害したメンバーの中に、脱走兵達の姿は無かった。
「吉永さん達が鍾乳洞に入って随分と経ちますが……まだ戻る気配がありません。テレパシーでの連絡もないですし、心配です」
 アルファは水をくむと、鍾乳洞の側に戻っていく。
(鍾乳洞の奥に何かあるのは、間違いがない。だが、ダークレッドホール同様、リスクが多きすぎる、か)
 ジャジラッドはしばらく様子を見ることにした。


『12.ありがとう、ごめんね』

 青みがかった黒髪、青い瞳の、30代くらいのヴァルキリーの女性に、マリカは大きな門の前に転送されていた。
 その門には扉は無く、帰還の方法はわからない。
 この世界は酷く熱く、魔力などの力が渦巻いているようで、集中をすることも魔法を発動することも困難だった。
 自分の身に起きていること、これは夢ではない。
 マリカは歯を食いしばると、急ぎ生徒手帳を取り出して自分の身に起きたこと、見聞きしたことを走り書きした。
 受け取っていた地図も、大まかに写してそのページを破る。
 そして、門の側に起き、石を重しに乗せてから、出発した。
(あの女性が言っていた吸血鬼とは……多分、ゼスタ・レイラン先生)
 でも、彼女はゼスタの名前を出さなかった。
 何か意味があるのだろうか。
 そんなことを考えながらマリカは地図を片手に、先を急ぐ。
 門の周りは荒地だった。
 左手側の荒野にいるとは考えにくい。その先には、街があるようだ。
 右手側には、川、その先に集落。
 前方には林があるようだ。
(まずは世界の端を目指そう)
 前方に進み中心点を把握し、そこを拠点に左右へ真っ直ぐ進み、網羅していこうと考える。
 しかし世界の端までは、地図によると100キロくらいある。歩いていたのでは、指定された3時間以内に瑠奈を見つけることは無理だろう。
「ピピ……」
 ヴァルキリーの女性が言っていた、人造人間だろうか。
 エアバイクのような乗り物に乗ったロボットが、マリカの側を通り過ぎて行った。
 人の姿をした、目に輝きのない、無表情な若者の姿もあった。
 こちらも人造人間なのだろうか……。襲い掛かってくることも、話しかけてくることもなかった。
「あのエアバイク、手に入れば。……ちょっと止まってー!」
 声を上げて、マリカはロボットを呼ぶ。
 声に反応し、ロボットと若者達がマリカの方に目を向けた。
 おもむろにロボットに近づくと、「ごめん! 急いでるの!」とマリカはロボットを突き飛ばして、エアバイクを奪った。
 そして急発進し、全速力でマリカは林の方向に向いながら、瑠奈の名を呼び。
 それから、集落の方へと向かった。
 かつて、集落だったと思われるそこには、焼け落ちた家の跡が残っていた。
 家の形状をとどめている建物はほとんどない。
 大きな道を通り、時々エアバイクを止めて、マリカは瑠奈の名を呼んだ。
「風見団長! 白百合団員のマリカ・ヘーシンクです! 風見団長、ご無事でしたら、返事をしてください! 私と一緒なら、人造人間は襲ってきません!!」
 廃墟の前で叫んだその時だった。
「マリカさん、こっち」
 塀の後ろから顔をのぞかせているのは――探していた風見瑠奈だ。
「団長……ッ」
 マリカはバイクを捨てて、瑠奈に走り寄った。
「こんなところで会うなんて、ね」
 瑠奈は何とも言えない笑顔を見せてきた。
 彼女は一人ではなく……気絶した人造人間と思われる少女を一人、抱えていた。
「レイラン先生が危ないの、静かに中へ」
 瑠奈は辺りに注意を払いながら、屋根が残っている建物の中へと入り、マリカもその後に続いた。

 今にも崩れそうな部屋の中で、ゼスタ・レイランが倒れていた。
 彼の肩には、光の刃のようなものが深く刺さっており、酷く苦しそうであった。
「連れてきました……。まずは治療を」
 瑠奈は人造人間の少女をゼスタの隣に寝かせる。
 ゼスタは少女の腕を引っ張ると、血を吸っていく。
 その様子を、瑠奈は悲壮な目で見ていた。
 瑠奈自身も、怪我しており、体力的にもとても辛そうだ。
「そうだ」
 マリカは女性から受け取っていた水筒を取り出すと、まず自分で飲んで中身を確かめた後、瑠奈へと渡す。
「スポーツドリンクみたい。あたしは大丈夫だから、全部飲んで」
「ありがとう、凄く助かるわ」
 瑠奈は感謝して水筒を受け取り、半分くらい飲んだ。
「先生のあの光の刃、抜いてから治療した方がいいのでは?」
 マリカが尋ねると、瑠奈は首を左右に振った。
「特殊な魔法の刃のようで、抜けないの。術者が消すか、術者が死亡するしか消す方法はないみたい」
 何らかの理由でその刃を肩に受けたゼスタは、こうして時々人造人間から血を吸う事で生きながらえているとのことだった。
「で、お前もダークレッドホールに飛び込んだのか?」
 多少回復したゼスタが身を起こしながら、マリカに尋ねてきた。
「ううん、あたしは突然拉致られて、変な実験をされて……」
 マリカは自分の身に起きたことを、2人に話して聞かせた。
 そして、瑠奈から、瑠奈達はダークレッドホールに飛び込んでここに訪れたということを聞いた。
「それから……」
 迷いながらも、マリカはあのヴァルキリーの女性が、瑠奈を連れてくるようにと言っていたこと。
 百合園生が人質になっていることも、話した。
「どのみち、ここにいんじゃ、風見団長の体力が持たない。先生だって、魔法を解いてもらわなきゃ……いつどうなるか分からない状態だよね。これは先生に渡しておいた方がいいかな」
 マリカは嵌めていたブレスレットの効果――人造人間に襲われないという効果を話して、ゼスタに見せた。
 いざとなったら、自分が囮になって人造人間を引き付けるつもりだった。
「……多分、お前に瑠奈を連れてくるよう命令した女は、この魔法を放った女だ」
 マリカからブレスレットを奪うようにとり、ゼスタが暗く鋭い目を見せた。
「風見」
「は……はい」
 ゼスタの暗い声に、瑠奈がびくっと震えた。
「理由は分からないが、あの女の目的がお前なら……渡さない為に、確実な方法をとる」
「は、い」
 青ざめる瑠奈をゼスタが引き寄せて……。
 彼女の首筋に、牙を立てた。
「!?」
 驚くマリカを見ながら、瑠奈が小さな声で言う。
「約束だから……剣として役に立てなくなったら、食事になるって……。ごめんね、私自身の手で守れ、なくて……。皆に、ありがとう、ごめんねって……」
 つたえて、と。掠れた声でそう言った後、瑠奈は動かなくなった。
「案内しろ」
 口についた血を脱ぐと、ゼスタはマリカを抱えて、飛び出した。
 黒い翼を広げて空を飛び――右手を振り上げて打ち下ろす。
 雷が集落に落ちた。
「くっ、大して威力でねぇな」
「セイゾンシャ、ハッケン」
「ホカク、ホカク」
 人造人間が気付き、ゼスタとマリカに光の弾を放ってくる。
「門はどっちだ」
 マリカは何が正しいのか判断できないまま、門の方向を腕で示す。
 ゼスタは光の弾を躱しながら、門へと飛んだ。

 この悪条件下での魔法の発動、そして巧みに攻撃を躱す様に、マリカは彼の実力を知っていく。
(この人なら、あの女を倒せるだろうか? でも……人質助けようとはしてくれないよね)
 倒れた瑠奈のことを想い、ヴァーナーの姿を思い浮かべ、マリカは悲しくなった。
「リン!?」
 門が見えて来た時、ゼスタが声を上げた。
 マリカが門の方を見ると、光が降り注ぐ門の中にロボットが進もうとしているところだった。
「……生き残る事だけを考えて、隠れていろ。団の仲間が必ず助けに来る」
 ゼスタはそう言うと、低空を飛び、マリカを岩陰に下ろした。
 それから、門の方へと飛び、ロボットが運転していたエアバイクに飛びついた。
 エアバイクの後ろには、少女が括り付けられていた。
 手刀でロープを切り、彼女を抱えると、ゼスタは強い力でロボットを蹴り飛ばした。
 そして、門の向こうへと、消えた――。
「隠れて助けを待っているだけ、なんて無理。あたしだって、白百合団員だもの」
 マリカは拳を握りしめて、立ち上がる。
 マリカの腕にはもうブレスレットがなかった。
 そういえば、人造人間はゼスタに攻撃を仕掛けていた。ということは……。