リアクション
chapter.27 ブライドオブドラグーン防衛
空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)と長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)少佐の、
「たいむちゃん班」は、さらに3班に分かれることになる。
たいむちゃん班がブライドオブブレイドを、
長曽禰少佐班がブライドオブシックルを、
そして、もう1班がブライドオブドラグーンを預かることになる。
聖・レッドヘリング(ひじり・れっどへりんぐ)は、
長曽禰少佐にブライドオブドラグーンの預かりを申し出た。
「プラヴァーを奪われた事件で、
大荒野の民やパラ実の説得に教導団があまり熱心で無かった事、
国としてのシャンバラにとって大きな問題と考えております
同じシャンバラの住人を軽んじるようでは、
パラミタの危機に共に立ち向かうという事にはならないでしょう。
小競り合いをしている間に大地が失われる可能性もございますね」
先の事件の話を持ち出されて、
長曽禰少佐は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。
「だからこそ」
聖は、執事らしい慇懃な口調で続けた。
「パラ実である私に、
教導団少佐である長曽禰様がブライドシリーズを託して下さる事は、
それだけで後々意味が出てくるかも知れません。
希望的観測かも知れませんが」
だが、そこに、
【シャンバラ教導団少尉】のクローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)が割って入る。
クローラは、聖に頭を下げた。
「俺に預からせてくれ。
今、聖が言った
プラヴァーを奪われた作戦に、俺も末端ではあるが参加していた。
あの時の悔しさを晴らす機会を俺にくれ。
頼む」
「ですが……」
聖は困惑した表情を浮かべた。
長曽禰少佐は、真剣に言うクローラの顔を見て、
それから一同をゆっくりと見回し、静かな口調で言った。
「ブライドオブシリーズは、個人に預けるのではない」
「長曽禰少佐!」
「今回の作戦成功が最優先事項だ。
オレも例の一件は苦々しく思っている。
だから、お前の気持ちもわかるが……」
長曽禰少佐は、穏やかな声で、クローラを説得した。
「オレは組織の長として、作戦成功を第一に考えねばならない。
味方への損害を最小限にすることも含めてだ。
それはわかるな?」
「……」
クローラは、押し黙った。
聖は、コホン、と咳払いをして、続けた。
「シャンバラとエリュシオン……協力かは微妙でございますが、
ポータラカ国際協力隊でもある探索隊の成果である、
ブライドオブシリーズを納める時は誰が独占する訳でもなく、
ニルヴァーナへの道を開く為、
この道行に同行する全てのメンバーでドラグーンを台座に納め
協力の象徴としたいですね」
そして、にっこりと、笑って見せる。
「時に美談も必要かと。
特に人を纏(まと)めようと思うのなら。
嘘にしなければ良い事でございます」
「確かに。
レッドヘリング、お前にブライドオブドラグーンを預ける」
「ありがとうございます」
聖は目を細めた。
「ともに、ブライドオブドラグーンを台座に収めましょう」
「……ああ。わかった」
クローラも軍人だ。それも、規律を重視するタイプの人間である。
上官の判断に従い、クローラは聖と握手した。
■
一方、ゆる族の
キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)は。
「おーっほっほっほ!
キャンティにまかせれば、全て解決ですわ〜」
ライバル視しているたいむちゃんに大見得を切って見せていた。
「お願いするわ」
「あら、やけに殊勝な態度じゃありませんこと?」
ぺこりと頭を下げるたいむちゃんに、キャンティは拍子抜けしたように言う。
「まあ、いいですわ。
このキャンティ、
故郷に帰りたい仲間を手助けするくらい、朝飯前ですのよ」
あくまでプライドの高いお嬢様らしく、キャンティが言う。
「ところで、ひじりんの言ってた話、難しいですわ〜。
つまり、ドラグーンを着ぐるみの中に隠しておけばいいんですの?」
聖が用意した簡易更衣室を使い、
ブライドオブドラグーンを着ぐるみの中へ入れようとする、キャンティだが。
「敵は、ゆる族の身体など突き破って奪いに来るだろう。
その方法は危険だ」
「な、なんて恐ろしいことを、さらっとおっしゃいますの!?」
長曽禰少佐の指摘に、キャンティが身をこわばらせる。
「じゃあ、こういうのはどうかな」
セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)が、
クローラとともに行おうとしていた作戦を提案する。
「僕のエアカーの中に、ブライドオブドラグーンを格納して、
非物質化するんだ。
そうすれば、エアカーごと別次元に収納することができるよ」
「お前の案にも一理ある。
だが、ブライドオブドラグーンは強力な武器でもある。
狙われた場合を考えて、
むしろ、武器として使えるように、
表に出しておいた方がいいだろう」
それに、と、長曽禰少佐は付け加えた。
「敵はどのみち台座に近づく者を全力で排除するだろう。
小細工は通じないと考えた方がいい」
こうして、やはり、最初に選ばれた聖が
代表してブライドオブドラグーンを持つこととなった。
■
こうして、3班に分かれる一行だが。
(俺達はニルヴァーナへの道を必ず開く……
そこにどんな困難が待ち受けようと、
開く事でどれほどの災厄に見舞われようとも
俺達は必ず乗り越え全て解決してみせる!)
聖が、気合を入れている
【西シャンバラ・ロイヤルガード】
樹月 刀真(きづき・とうま)に、微笑みかける。
「無事ニルヴァーナへの道が開かれたましたら、
記念として伝説の【童貞】樹月様のチン拓を温泉神殿の男湯に飾り、
この班のエピソードと共に後世に伝えさせて頂きますね」
「って、俺のチン拓はニルヴァーナと関係ないだろ!?」
ずっこけた刀真は、聖に盛大にツッコミを入れた。
「ほら、『ニルヴァーナへの扉』を開くということが、
象徴的な意味での『筆おろし』的な感じでございます」
「意味がわかんねえよ!」