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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

リアクション

 
 ■

 きゃああああああああっ!
 
 悲鳴を上げて逃げるのは、オルフェリア、ミネッティ、兎の3名。
 九十九はキングドリルの背にかばわれている。
「きゃあ、いやあぁ! こないでぇ!」
 兎はともかく。オルフェリア、ミネッティは、所詮お嬢様。
 カツアゲ隊の襲撃などと言うものは、恐怖以外の何物でもない。
「へっへっへっ! もらってくぜぇっ!!」
 でもその前に、と卑しい目つきで2人を眺める。
 その場にへなへなと倒れて、オルフェリアは泣き始めるのであった。
「見ないで下さい、見ないで下さい! どーせ、ちっぱいですからっ!」
「そーいう問題かいっ!」

「じゃ、こっちのお嬢ちゃんにしようかな♪」
 ヒッ、と後ずさったのはミネッティ。
 パニックのあまり、足がもつれて転倒し、バスタオルがすっ飛んだ。
「だ、誰かっ!
 助けてっ!!」
「駄目だぜぇ!
 いっただきまぁ〜〜〜〜〜〜〜……」
 男はミネッティに飛びかかろうとする。
「おやめなさい! 下衆がっ!」
 カンッ!
 タオルで胸元を押さえ、マレーナが桶を掲げた。
 男は脳天に直撃食らって、苦悶する。
 だが、その一撃で桶はすっ飛んだ。
 男は額から流れる血を舌ですくうと、パキポキと指を鳴らす。
「へ、ドージェのパートナも大したことねぇや!」
「く……っ、ドージェ様……」
 マレーナは唇を噛んで、無意識のうちに元の主の名を呟く。
 男が再び攻撃の姿勢に入る。
 だが、パートナーロストの影響大きい自分では、これが精いっぱいだ。
「貴方達だけでも!」
 マレーナが覚悟を決めて、ミネッティ達の背を押し、両目を瞑る。
「姐さん!」
 クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)は敵に体当たりをかませる。
 カツアゲ隊隊員の巨体は吹っ飛ぶ。
 美羽と沙幸が間に割って入る。
 だが、まともに戦えそうな者は、美羽、沙幸、クラウン、マレーナの4人だけのようだ。
 
 万事休す!

 その瞬間――。
 女風呂の照明が、総て消えた。
 
 ■
 
「何ですか? いいところですのに???」
 飛散した衝立を盾に、のぞきを行っていたエッツェルは、チッと舌打ちをした。
 闇の中だ。何も見えない。
「だんなぁ。
 これが『愛の試練』って奴ですかい?」
「はい、そうですねえ……」
 エッツェルは曖昧に笑うと、知るもんですか! と毒づいた。
(何者かが、私達の計画を知って邪魔をしているのですね?)
 このタイミング。
 しかも、十名以上更衣室に入ったはずの女達のほとんどは、風呂場にいなかった。
「これは……ハメられましたかね?」
「そうみたいだな!」
 飄々とした少年の声。
 おや? とエッツェルが振り向いたのは、聞覚えがあったから。
 闇の向こうから、皐月が現れた。
 キヨシに肩を貸している。
「俺の特技は『サバイバル』さ、問題ねーだろ?」
「僕はねぇから、死ぬ寸前だけど……」
 ガクッ。
 キヨシは意識を失いかける。
 穴に落ちた時、打ちどころが悪かったようだ。
「馬鹿やろう!
 これからが本番だ!」
 皐月はすでに傷だらけで朦朧としているキヨシの耳元で告げた。
「頑張れ! キヨシ!
 お前にマレーナさんの総てを拝ませてやるからな!」

 だが、そのマレーナには、チョー強力な助っ人たちがついていた。

 ■
 
 女子更衣室――。
 暗がりの中で、レティシア・トワイニングはマレーナに頭を下げていた。
「ごめんなさい!
 勝手にお風呂の照明消しちゃって!」
「いいえ、礼を述べなければならないのは、私達の方ですわ」
 レティシアの手を取って、
「管理人として、礼を申し上げますわ」
 もう、大丈夫ですのよ? と震えるミネッティを抱き寄せる。
「あなたの助けが無ければ、私達はどうなってしまったことか……」
「ボクと言うより、ボクの契約者の『発案』なんだけどね」
 呟いた後、レティシアはハッと我に返って、口をつぐむのだった。
「あ……と、今のはまだ聞かなかったことにしてよ!」
「でも、なぁーんかこれって、嫌な予感がするんだよな?」
 過去の十分過ぎる経験から、和希がう〜〜〜〜〜むと首をひねる。
 彼女はパートナーのガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)から噂を聞きつけ、正義感から「退治役」を買って出た1人である。
「ガイウスが心配していたんだ。
 管理人さんが気の毒じゃねぇかって。
 けど襲撃が目的じゃなかった、てことか?」
「私もそう思うよ!」
 和希の予感を、確信に変えたのは、透乃だった。
「パンダ隊の勘だけど!
 この件の裏にはきっと……『のぞき』があるね!」
 そこに、適度に戦いつつ逃げおおせた兎が戻ってきた。
 等活地獄を解きつつ。
「『のぞき』って、誰かが言ってたよ〜」
「だとしたら、狙いは唯一つ!!」
 巨乳だし、と2人はマレーナを見る。
 そして不思議そうな顔つきの彼女からタオルを借りると、レティシア・ブルーウォーターを呼ぶのであった。
「私達が囮になります」
「マレーナさんは、安全な場所に避難していて下さいねぇ」
 ふっふっふ……と嫌な笑いを浮かべる。
 和希は血の予感に、指を鳴らすのであった。
「おしっ!
 悪い子達に、お仕置きに行くとすっか!」
 殺気看破を使おうとする。
 マレーナはその手を止めた。
「これほど『殺気』の充満しているところでは、敵味方の区別さえつきませんわ」
「ああ……それもそうだな。
『残心』だけで対処することにするぜ! ありがとよ!」

 ■

 和希達は浴場へ向かう。
 その様子を、物陰から眺めている少年の姿があった。
 両手に闇を纏い、小声で。
「マレーナ、こっちに来ないかな〜?
『黒影』で影の中に忍び込んじゃうよ! ヒャハハ」
 すぐ傍で、マレーナはレティシアに照明の入れ方を教えている……。