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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

リアクション

 
 ■
 
 パッと照明が灯された時、女達2名が湯船につかっていた。
 遠目からはもうもうたる湯煙りのため、どちらもマレーナに見える。
「標的はマレーナかっ!
 上等だぁ!」
 皐月は叫んだ。
 が、直後に首を傾げる。
 キョロキョロとして。
「ん? 本隊の奴らぁ? どこ行った?」
 マレーナ達の周辺に、「カツアゲ隊東シャンバラ支部」本隊の面々がどこにもいないのだ。
 視線をドラム缶の下に落とす。
 昏倒している、ヒャッハァーな面が。
「まさか! 闇討ちか!?」
 ちっと皐月は舌打ちして、マレーナの周辺を見る。
 
「くそ! 悠司。
 テメー、裏切ったなっ!!」
 ぐうっと、うめき声。
 鳩尾に手を当てている、リーダーの姿があった。
「わりぃな、今夜の宿がかかっているんでね!」
 ダークビジョンを解き、ニヤッと笑う。
 返す刀で味方を斬り、リーダーを捕えることに成功したのだった。
「けど、風呂の周り以外は残ったか。
 さすがに1人の力で全員を相手にするのは無理だぜ!」
 
「1人ではないです。
 手前の力も役に立ったでしょう?」
 フラワシが舞い降りて、狐樹廊の前で消える。
「偽の見取り図も。
 これほどお役に立つとは、思わなかったですが」
 見取り図の違いに戸惑い、逃げ場を失ったカツアゲ隊の姿を回想する。
「そーいう自分は、散々間違えたくせによ。
 フラワシで脅して、計画聞き出しやがって!」
 はっはっは、と悠司は笑った。
「そーいう奴ですよ、マレーナ。
 悠司にも、夜露死苦荘に一晩の宿をよろしく願えませんか?」

 だが――。

「たーこ、どこ見てんだよ!」
 振り向いたのは、マレーナ……ではなく、偽マレーナの和希。
「本物は中だぜ!
 女子更衣室に行って聞くんだな!」
 ざばっ! とたちあがった。
「まぁ、レティシア・トワイニングも一緒の事ですしねぇ。
 あちきは大丈夫だとは思いますけど?」
 やはり恥ずかしげもなく素っ裸で立ちあがったのは、レティシア・ブルーウォーター。周囲を警戒して立ちはだかるのは、ミスティ。
 だがその立派な詳細は、濛々たる湯煙りのためぼやけている。
 2人を合図に、ドラム缶の陰からわらわらと武器を携えた女どもの集団が現れた。
「和希!」
 ガイウスが、遠くからタオルを放り投げる。
 氷点下の上に、彼女は裸だ。
「サンキュー、助かったぜ!!」
 和希は片手を掲げると、そのままドラゴンアーツの構えを取った。
「いくぜ! 皆、新手だ!
 カツアゲ隊なんか、やっちまえっ!」
 
 ■
 
 カラカラカラ。
 
 鳴子もどきが鳴った。
 レヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと)がトラッパーで作った、鳴子だ。 戦闘区域に、敵が侵入してきた合図だ。
「む、主人! 出番ですよ!」
 鬼一法眼著 六韜(きいちほうげんちょ・りくとう)は湯加減を見つつ、襲撃時に明子に着替えサッと渡す。
 自身は波羅蜜多セーラー服をつけて、足下を気にかけつつ更衣室へ。
「ありがとう! 六韜」
 伏見 明子(ふしみ・めいこ)は素早く衣服をまとうと、軽身功で飛び回る。 敵を見つけ次第、則天去私で余さずボコった。
「ったく、あんたたちぃ!
 襲撃なのかのぞきなのかはっきりしなさいよ!」
 照明から外れた暗がりは、ダークビジョンで。
 要人警護で、マレーナに発生しうる危険予測も万全だ。
 女子更衣室を背にして、凄む。
「マレーナさんには、一歩も近づけないんだからね!」
 九條 静佳(くじょう・しずか)は明子の補佐だ!
 撃ちもらした相手を、則天去私等を使って、広く迎撃していく。
 ウルクの剣を両手に二刀の構え。
「『根性』って、こういう意味じゃないよね?」
 にっこりと笑う。
 ザンッ。
 明子が追いこんだ敵を倒して行った。
 口から泡を吹いて、仰向きに倒れた敵を見下ろして。
「大丈夫だよ!
 命までは取っちゃいないからね!」
 ふんと構えたまま、振り返った。
 男どもを倒しながら、和希達が加勢に駆け付けてくる。
 追撃しつつ、笑顔でしびれ粉を敵に振りかけるレティシアが。
 その向こうに、なぜか更衣室前を掃き清めている六韜の姿がある。
「仕方ないですよね、メイド魂。
 体が勝手に動いちゃうのですから!」
 

 ■
 
「ま、まずい! カツアゲ隊がやられていきます!!」
 焦ったのはエッツェル。
 だが、傍らの皐月は不敵な面で、残された仲間達にゲキを飛ばしていた。
「いいか!
 いまこそ、俺達の『漢』が試される時が来たぁ!
 いくぜぇ!」
 おーっ! と拳を振り上げる。
 
 そして、進撃は開始されるのであった。
 
 ■
 
「いいか!
 のぞきの極意は、
 いかに堂々と、
 決然として、
 女性の裸を見られるかだ!」
 臆面もなく哲学を言ってのけるのは、皐月。
「前列!
 横に人一人が通れる程度の隙間を開けて、布陣しろ!
 後列!
 その隙間を通れる位置に並べ! 早く!」
 
 突撃ぃっ!
 
 龍騎士の面をかぶった皐月は号令をかける。
 前列が、和希達と組み合う。驚きの歌で和希達を怯えさせる。
 隙間から後列が飛び出し戦線を突破――しようとした。
 その先に、ドラム缶風呂。震えながら、少女がつかっている。
 
「見ろ!
 あそこにまだ……標的がいるぞ!!」
 後列の者共は、ドラム缶に殺到する。
 
「あっま――いっ!」
 待ってました! とばかりに少女は伸びあがった。
 B99(G)W65H94の肢体を惜しげもなくさらけ出し、丸腰の透乃が立ちはだかった。
「パンダ隊をナメないでよね!」
「……て、おま、裸じゃねーか!」
 カツアゲ隊の手が止まる。
 邪魔な湯煙りを払っている間に、のぞき共目掛けて、お湯をかけて目眩まし。
 侵入共には等活地獄を食らわせる。
「女だと思って、甘くみないでね!」
「囮役! お疲れさん!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が加勢する。
 バスタオルを巻きながら。
「これでも食らえっ! 怒りの蹴りよ!」
 すらりと長い脚が、カツアゲ隊の面々に叩きこまれる。
 さらに――。
 こそこそする者は逮捕術でとらえる、念の入れようだ。
 カツアゲ隊・のぞき実行班は次々と美羽達の毒牙にかかって行く。
 雪白は「調理用ミキサー」を動かし始める。
「そーか!
 こうやって使えばいいんだね!」
 キュイイイイイイイイン、と、挑んできた隊員達に向ける。
「これで、家庭科はばっちりだよね! マレーナさん!!」
 振り返って親指を掲げた。
 正しく無い使用法を覚えてしまったようだ……。
 
 女子人の数は増え……皐月はスタンクラッシュで応戦するも、彼一人の力では手には負えない。
 カツアゲ隊は防戦一方の苦境に立たされてしまった。
 
「くっ、だが、俺は!
 味方を、ぜってぇー見捨てたりはしねーっ!」
 護国の聖域で、魔法攻撃を防ぐ。
 だが振り向くと、エツェルの姿はなかった。
「愛の伝道師」とはいえ、そこは軽薄で冷徹な彼の事。
 つまり、皐月達は見捨てられたらしい。
「こうなったら、せめてキヨシのために!
 マレーナのだけでも拝ませてやるしかねぇ!!」
 だがそれは、ピンクのデラックスモヒカン男――ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)によって阻まれる。
「何すんだぁ?
 このおっぱいは俺様のもんじゃぁ!」
 鉄甲で鉄拳制裁。
 どさくさにまぎれて力強くマレーナを抱き寄せて、胸を揉みしだこうとする。
 だが、それはそれで、女性陣の反感から袋叩きにあうのであった。
「くそっ! 全員撤退だ!」
 自分はしんがりに。
 全員を闇に乗じて逃げさせる。
 女どもは全裸だ、深追いはしない。
 
 のぞきは失敗した。
「そもそも湯煙りで、全然見えやしねーぜ。
 冬は避けるに限る、か……」
 皐月はキヨシを背負い、一旦自分の部屋へと退却する。
 カツアゲ隊達は蜘蛛の子を散らすように、逃げ去って行く。
 
「でも、あれ、キヨシに似てなかったか?」
 和希は腕組みしてう〜〜〜〜〜〜〜〜〜むと唸る。
「あの、それについて、だけど……」
 レティシア・トワイニングがおずおずと告げる。
「悠司が、その……正体を知っているそうだけど」

 おお! と歓声が上がったのはいうまでもない。
 
 ■
 
 そのころ、女子更衣室ではチョットした騒動が起こっていた。
「ま、マレーナさんがっ!」
 急に、石化してしまったのだ。
「ほんの少しの間じゃんっ!
 姐さんから目を離したのは……っ!」
 クラウンは歯ぎしりする。
 これでは、ナガンを管理人室に向かわせた意味がない。
「玄人の仕業よね?」
 風呂場の騒動から戻ってきた美羽が、首を傾げる。
 和希は舌打ちした。
「タチの悪い奴だぜ!
 表も片付いたことだし……てことは、殺気はねぇはずだな?」
 ニッと歯を見せて、攻撃の姿勢を見せる。
「『殺気看破』! 使っても大丈夫か?」
 
 そうして、彼女はマッシュのしっぽをいぶり出すことに成功した。
 彼は『黒影』でマレーナの影の中に潜み、機会を窺っていたのだ。
「まぁーったく、こんな技で捕まっちまうなんて!」
「きれいら人、石化しらかったらけらよっ!
 にゃぅぅ……」
 マッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)の弱点は尻尾。
 へたりこんだ彼は、その場の全員にすごまれ、仕方なく「石を肉に」を使わされた。
「よかったぜ、マレーナが元に戻って」
「でももう、同じ下宿生なんだから!
 マレーナさんにイタズラなんかしないでよね!!」
 散々言い含められて、部屋に返されるマッシュなのであった。