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リアクション
《VS ルドルフ&エリザベート&コリマ》
「ハイナ!」
大爆発を起こしたハイナを、驚愕の表情で見つめるルドルフ。
「今だ!」
「もらった!」
その一瞬の隙を、鬼院 尋人(きいん・ひろと)と呀 雷號(が・らいごう)は見逃さなかった。
2人の乗るビーシュラが、ルドルフに突きかかる。
「し、しまった!」
絶妙のタイミングで繰り出されたファーントが、ルドルフの【裁きの刀】をはじき飛ばす。
「行くよ、雷號!」
「ああ、任せろ!」
バシュ!という音を立てて、ビーシュラの両手から、【ワイヤーロープ】が打ち出される。
遠心力の付いたロープは、ルドルフの身体に接触すると、そこを軸にクルクルと回り、ルドルフの身体に巻きついた。
「な、ナニッ!」
一瞬で、身体の自由を封じられるルドルフ。
「だりゃぁぁぁぁ!」
雷號は、ビーシュラのバーニアを全開にして、操縦桿を力一杯手前に引いた。
ルドルフをぶら下げたまま、急上昇するルドルフ。
重みに耐えかね、ロープがギリギリときしむ。
数十メートルに浮かび上がった所で、雷號はビーシュラの両手を力一杯振り上げた。
つながれたままのルドルフが、天高く持ち上げられる。
「尋人、歯ァ食いしばれ!」
そこで雷號は、機体を急降下させた。
強烈なGが、尋人たちとルドルフを襲う。
一気に地表スレスレまで降下したビーシュラは、両手を勢い良く振り下ろした。
「う、うわあああぁァァァ!」
ロープで縛られたままのルドルフは、受身すら取ることも出来ず、物凄い勢いで大地に叩きつけられる。
激しい地響きが起き、大量の土砂が舞い上がる。
ルドルフは、半ば大地にめり込んだまま、意識を失った。
「思い知ったか、偽物め!」
思わずコックピットでガッツポーズを取る尋人。
『よくも、校長の姿を掠めとったな!』と、激しい敵愾心を燃やしていただけに、狙い通り偽物を生けどりに出来たことが相当嬉しいようだ。
「こちらビーシュラ。ルドルフの捕獲に成功した」
「了解です。お疲れの所申し訳ないですがが、こっちも頼まれてくれませんか?」
黄山のパイロット、叶 白竜(よう・ぱいろん)が渋い顔で答える。
「状況は?」
「今のところ上手く進んでいますが、こちらの被害も甚大で……」
「アルマイン・ハーミットは?」
「ウチも、何とか動いてるといった状態です。是非とも、お手伝いをお願いしたいですね」
ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)も、疲労の色が濃い。
黄山とハーミットは、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)とコリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)の2人と戦っていた。
強力な魔法と超能力の使い手である両校長対し、2人は敵の魔力を使い果たさせた上で、捕獲する作戦を取った。
黄山は防御、ハーミットは回避に徹して、何とか魔力を枯渇させる事に成功したものの、黄山は駆動系、ハーミットは両腕をやられ、捕獲することが出来なくなってしまったのだ。
「了解。すぐに行く」
白竜が送ってきた位置情報を元に、逃走する校長たちの頭を押さえるように移動するビーシュラ。
すぐに、逃げる2人の姿が見えた。
「ビーシュラ、こちら黄山。今から送る位置へ、移動して下さい」
「分かった!」
送られて来たデータを手早く確認する雷號。そこに、コリマとエリザベート、それに自分たち3機のイコンの未来位置が書きこまれている。
そこにはエリザベートとコリマを中心に、黄山、ハーミット、ビーシュラが、ほぼ三角形に配置されていた。
「これは……!三方から2人を包囲しようという訳ですね」
「その通りです、急いで下さい!」
「分かった!飛ばすぞ、尋人!」
一気に加速するビーシュラ。
「あとどれくらいだ、白竜?」
世 羅儀(せい・らぎ)が白竜に訊ねる。
すっかり固定砲台と化した黄山は、逃げる校長たちを予定地点に追い立てようと、【アサルトライフル】を撃ち続けていた。
「あと15秒」
「分かった、何とかしてみる!」
残弾を確認しながら、羅儀が切羽詰まった声で言う。もう間もなく弾切れなのだ。
「ハーミット、予定地点到着」
羅儀の焦燥などまるで気にした風もなく、白竜が淡々と言う。
「ビーシュラ、予定地点まであと5秒。4、3、2……今だ!」
「おっしゃぁ!行っけーーー!」
黄山の腰から、2本のワイヤーロープが虚空へ向け発射される。
「来るぞ、ザカコ!」
モニターを確認しながら、強盗 ヘル(ごうとう・へる)が言う。
「……見えた!」
高速で飛来したワイヤーに向かって、肘から先が吹き飛んだ右腕を伸ばすハーミット。
ワイヤーが、その肩口に巻き付く。
「よっしゃァ!」
思わず歓声を上げるヘル。
「こちらビーシュラ、ワイヤーを確保した」
雷號からも、成功の報が届く。
「ヨシッ!巻き上げ、開始!」
「大捕物の開始だぜ!」
黄山のウィンチが、ギャギャギャギャと軋みながら、高速で逆回転を始める。
「一気に行くぞ!」
「突っ込め!」
ハーミットとビーシュラは、ワイヤーの巻き上げと同時に、校長たちを中心とした弧を幾重にも描く。
「なんだと!」
「きゃあァァァ!」
あっという間に、コリマとエリザベートはワイヤーでぐるぐる巻きにされた。
「後は、任せろ!」
「『こんな事もあろうかと』用意しておいた『大いなる力』の出番です!」
コンソールの一際目立つ赤いボタンを、力一杯押すザカコ。
ハーミットの腰部背面にある【自称反陽子爆弾】が、怪しく明滅を始める。
「尋人さん、雷號さん、早く離れて!」
「な、何をする気だ!」
「大丈夫、自爆する訳じゃありません。これで、気絶させるんです。ちゃんと、爆発への対処方法も用意してあります」
おもむろにキャラクターキーを取り出し、モップス・ベアー(もっぷす・べあー)に変身するザカコ。
「イコンの中にいるし、これでたぶん大丈夫……なんだな!」
「ヘルは!?」
「ま、まぁ一応俺もゆる族だし……大丈夫じゃないか?死なばもろともってヤツだ!」
親指をビッ!と立てて破顔するヘル。
やる気満々である。
「い、イヤですぅ〜!もう痛いのはイヤですぅ〜!」
泣き叫ぶエリザベート。
コリマはというと、捕縛された屈辱にワナワナと震えている。
「これ以上、ウチの校長で姿で暴れられるのは迷惑なんですよ。それでなくても、ホントにやりかねない人なんですから……」
「ま、観念しろや」
「認めんっ!私は認めんぞ、こんな結末!私が、我が校長帝国が、敗れるはずは――」
反陽子爆弾の爆発に飲み込まれ、エリザベートとコリマは気絶した。