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リアクション
第1章 仕事の合間に
12月下旬。
誰かを楽しませる為に。
誰かの笑顔を見る為に。
人々は忙しなく動き回っていた。
クリスマスイブを迎える少し前に。
空京の小さな公園の木々が、姿を変えた。
「あれ? 木が増えてるよ!」
訪れた子供が、母親の手を引っ張りながら並んでいる木々に駆け寄ってきた。
いつもの3本の大きな木の他に、お父さんの身長と同じくらいの高さの、三角の木があった。
「モミの木ね、綺麗ね」
「うん、これあの人がやってるの!?」
ぽてぽて音が響いている。
音付きブーツで歩いているのは、赤い帽子と服を纏った、真っ白おひげのサンタさん。
白い袋の中から、飾りを取り出して、モミの木や周りの木々を装飾していっている。
「ジングルベール、ジングルベール、ですよぉ〜」
そのサンタさんの正体は女の子――パラミタ一の画家を目指している師王 アスカ(しおう・あすか)だ。
アスカはとある人物からの依頼で、各地のクリスマスツリー装飾をして回っている。
木々に絵をかいたりはせず、音楽を流したり、時間経過で色が変わるLEDを装飾して賑やかに飾り、人々を楽しませている。
「サンタさん、ありがとね! 頑張ってね!」
「はーい。夜にまた見に来てねぇ」
手を振る子供にそう答えて、手を振り返して。
袋の中から取り出した電球を、ツリーにくるくる巻き付けていく。
「お疲れ様です。これよかったらどうぞ。温かいうちに」
子供の母親が、暖かな飲み物をアスカに差し出す。
「ありがとぉ〜。それじゃ、ちょっと休憩にしよっかな」
ありがたく受け取って、アスカは木の裏側に腰かけて、休憩をとることにした。
温かな飲み物を飲んで、ふうと息をついて。
柔らかな表情で、携帯電話を取り出す。
「皆も頑張ってるかなぁ〜」
まずは仲間に、メールを。
ただいまお仕事頑張り中〜♪
ちょっとサンタの格好が大変だけど、いい感じに進んでるよぉ?
夜には帰れるように頑張るから美味しいシチューよろしく〜!
それから、サンタ姿の自分を携帯のカメラで撮影して。
「何してるかな〜。明日は会えるよねぇ」
写真添付で恋人にメールを出す。
アスカサンタ参上!
心配してくれてありがとぉ、そっちはどう〜?
明日は約束してたデート日だねぇ、楽しみ♪
夜には帰るから鴉も今日はベルと喧嘩しちゃ駄目だよ〜?
そして、最後に。
「ジェイダス様は、何をして過ごされるのかなぁ〜」
飾ったクリスマスツリーを撮って、恩人と思っているジェイダス・観世院にメールを送る。
ジェイダス様へ
もう冬の季節がやってきましたね〜
そちらは風邪など引かれていないですかぁ?
私は今、依頼でお仕事中です
中々経験できないものだから楽しんで仕事をしています
ジェイダス様にも聖夜の祝福を……♪
「こんなものかな〜?」
メールを終えた後。
アスカは携帯電話をぎゅっと握りしめたまま、大切な人達の笑顔を思い浮かべる。
皆に祝福を〜今宵皆に幸あれ〜♪
それからまた、彼女は立ち上がって。
沢山の笑顔を作る魔法を街にかけていく。
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