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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 4年ぶりの帰郷 ■
 
 
 
 一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)が帰郷するのは4年ぶりだ。
 4年前……養父が他界するのと同時に、アリーセはパラミタに渡った。
 それ以来、これが初めての養父の墓参りとなる。
 複雑な家庭の事情で、アリーセは実父母の元で育てられることはなく、半ば無理矢理に近い形で親戚のもとに預けられた。一条というのは、預けられた養父の苗字だ。
 養父であっても彼はアリーセに心を配ってくれた。機械の扱い方を一から教えてくれたのも彼だった。
 独語が不得手だった養父だけれど、アリーセとは機械を通じてコミュニケーションが取れていた。あるいはそれが、養父がアリーセに機械のことを教えた理由だったのかも知れない……。
 
 日頃の無沙汰を詫びた後、養父の墓に手を合わせ、アリーセはこの4年のことを思い起こす。
 養父に教えられた知識と技術を支えにパラミタに渡ったアリーセは、長曽禰少佐やヒラニプラの職人に出会った。その中でプライドを折られたり、学ぶことが数え切れないほどあったり、という刺激を受けて今は向こうでの勉強がとても楽しい時期だ。
 地球にいる頃には養父と兄ぐらいしか心を開く相手がいなかったけれど……とアリーセが考えていたのが聞こえたかのように、兄のステファン・キスリングがやってきた。
 ステファンは三人兄弟の中で唯一、アリーセに関心を持ってくれている人と言える。パラミタに行ってからも定期的に手紙のやりとりをしている。
「帰ってきたのか」
「ただの墓参りですよ」
 それももう終わりましたけれど、とアリーセは養父の墓から数歩距離を取った。兄が墓参りをするのではないかと思ったのだが、ステファンはそうはせず、アリーセの顔を見つめている。
「……地球に戻って来ないか」
 元々ステファンは、アリーセがパラミタにいるのは地球に居場所が無いからだと思っている。そしてその責は自分にもあると。
 これまではそんなことは言えなかったけれど、ようやくある程度立場も固め、自分の身辺にも余裕ができた今なら、帰ってこいと言える。
「遠慮はいらない。4年前とはこちらも状況が違う。もし帰ってきたいのなら……」
 ステファンは尚も地球への帰還を勧めたが、アリーセはきっぱりとそれを断る。
「帰るつもりはありません。パラミタもなかなか、悪くないところです」
 断るだけでなくアリーセは、兄もパラミタに来ないかと誘った。
 そのアリーセの様子に、ステファンは僅かに目を細める。4年前のアリーセは、こんなことを言うような弟ではなかったから。
 アリーセがパラミタに行ってからの4年。向こうで上手くやっているだろうか、地球に戻りたくはないだろうかと、ステファンは心配し続けてきた。
 けれど……。
「そうか、悪くないか」
 ステファンはそう呟き……何か1つ肩の荷を下ろしたかのように深い息を吐いたのだった。