空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

忘新年会ライフ

リアクション公開中!

忘新年会ライフ

リアクション

 魔王軍ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)ルイ・フリード(るい・ふりーど)シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)東 朱鷺(あずま・とき)ルビー・フェルニアス(るびー・ふぇるにあす)は、108階までのツアーコンダクターという仕事終えた充実感を噛み締めながら、{SNL9998777#魔威破魔 三二一}が再生するビデオカメラに見入っていた。

「ふはははっ、俺が魔王ジークフリートだ! ツアコンなど容易いこと! 貴様達を大いに盛り上げてやろう!」
 ダンジョンツアーに集まった客達を前に、高笑いをするジークフリートの姿からその映像は始まった。
「ジークのペットのセラです」
 ジークフリートに続いて冗談混じりに自己紹介をするセラ。参加者の反応を楽しみにしてのセラなりの冗談であったが、客達がざわつく。
「あんな少女を……」
「流石魔王を名乗るだけはある」
「ロリコ……?」
「ふ、ふはははっ! さぁ、魔物巣食うダンジョンへの装備を整えるがいい!」
 自分の自己紹介で掴みはパーフェクトだと思っていたジークフリートは、セラの発言により確固たる地位を参加者達の間で築くのであった。
 最後に映像を売るため、式神化したデジタルビデオカメラで床スレスレ、天井ギリギリ
人の手では映せないアングルでベスト記録を撮っていたのは朱鷺である。
 道中、真面目に護衛するジークフリート達の姿を自在に動く式神を使って映しつつ、朱鷺は解説&助言に徹していた。
 彼女の解説には、やや癖あった。
 眼の前に出現するゾンビとツアー参加者の戦いは以下のように表される。

※ゾンビが現れた
※冒険者1の攻撃
「うおおおーーッ!」
※ゾンビにダメージ
※ゾンビは冒険者1に攻撃
※魔王は冒険者1を庇った
「俺のツアー客に何をする!」
※なんと 魔王はダメージを受けていない
※朱鷺の助言が聞こえる
「頭を狙ってみましょう」
※冒険屋2の攻撃
「やああぁぁぁ!!」
※SMAAAAASH!! ゾンビに大ダメージ
※ゾンビは動かなくなった
※冒険者2はレベルアップした

「ねぇ、あんた。何でこんな解説にしたの?」
 映像を見ながら三二一が言うと、朱鷺は肩をすくめて笑う。
「なんとなく、売れる映像になる気がしません?」
 助言の方は、朱鷺の知りうる範囲で弱点を教えてあげていた。
「普通、弱点教える? ゲームでも初めの戦闘くらいだよ?」
「……だって、地下108階なんですよ。マワシテ行かなきゃ、除夜の鐘に間に合う気がしません。道中はさっさと進んで行きましょう……あ、三二一さん、早送りお願いします」
「……うん」
「ちょっと! 我が頑張ってやったマッパーや治療はスルーなの?」
 叫んだのはルビーだった。彼女はフラワシを具現化し、「道に迷ってる時間なんてない」とばかりに【描画のフラワシ】と【ハンドベルト筆箱】でダンジョンの地図を作成していた。尚、その地図は最後に映像特典として売却する予定だ。
 ルビーは他にも道中で冒険者が怪我した時に【慈悲のフラワシ】で回復したり、自身も「白衣の天使」で応急手当してツアー客をドギマギさせてからかったりしていた。朱鷺に「これだけで数名は買うんじゃないか?」という程の映像になっている。ここでお見せできないのが残念だ。
 早送りされた映像には、褌一丁のルイが最深部で悩む姿が映っていた。
「この時、私は筋肉をアピールしたポーズを重視か……いや、濃厚なスマイルも捨てがたい……と色々思考していたのです」
 自らの映像を見ながらルイが解説する。
「……悩んだ後、コレか」
 ルイは、参加者達が到着するやいなや
「いらっしゃ〜い♪」
 サムズアップと頬の筋肉を動かしてのスマイルでお出迎えする黒色の筋肉ダルマ。
 その後、ジークフリート達に向かって、「おつかれさまです(では打ち合わせ通りに)」とルイがウインクして言った事により混乱が始まる。
「知り合いか?」
 ジークフリートに尋ねた参加者を彼は(優しく)弾き飛ばす。
「ふはははっ、ここまでのツアー楽しんでいただけたかな?」
 豹変する魔王。
 動揺が走る参加者達。
「ど、どういう事だ?」
 不敵な笑みを漏らすジークフリートが宣言する。
「何を隠そう、俺と魔王軍がこのダンジョンのラスボスと言うわけだっ! この先を通りたくば、我々を倒してからゆけいっ」
 ジークフリートを筆頭に、ルイ、セラ、朱鷺とルビーが参戦し、魔王軍対ツアー参加者の戦いが始まる。
 セラにより召喚された不滅兵団をけしかけると、『コピー人形』で自身をコピーしその後、式神化した朱鷺とルビーがこれに続く。
 朱鷺本人は「魔王さん達と連携して戦って朱鷺の姿で負けないでね」と式神にハッパをかけて見学し、相変わらず解説に徹している。
ジークフリートはルイと共にお互いをカバーしつつ前線で肉弾戦を担当していた。
「【歴戦の武術】と【歴戦の魔術】と【歴戦の立ち回り】を見せてくれる!!」
「様々な人と戦えますのは貴重な体験です! こちらも戦闘技術は出し惜しみなく行きますよー!」
 当初の目的を忘れ気味なルイが全力を発揮しようとすると、ジークフリートがこっそり耳打ちする、
「(ルイ。対応はソフトにな? 本気でやって怪我させると、永光ある魔王軍の収入が減る)」
「(ハッ! 私としたことが……)」
 ルイにセラも耳打ちする。
「(セラも魔王軍の財政が危機に瀕してお小遣いの量が減るのは耐えられないの)」
 ジークフリートの言葉に頷いたルイは飛び込んできた参加者を(優しく)ラリアートで吹き飛ばす。
「……ふむ、エンターテイナーも大変だな……だがツアーイベントを盛り上げる為だ、仕方あるまい! さぁ、来るがいい、冒険者たちよ! 貴様らを倒し、我が軍の緊縮財政を乗り切ってくれるわ!!」
「プッ」
 吹き出したのはルビーである。
「……貧乏な魔王って。ごめん、ツボに入ったわ」
 朱鷺もルビーに同意した。
「あれから数ヶ月……久々の魔王軍として参集を受けたら、バイトで金稼ぎって……」