校長室
年の初めの『……』(カギカッコ)
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●教導団の閲兵式(本編三) 会場に着くまでは、 「なんだよー。正月早々から仕事かよー」 と愚痴っていた天海 北斗(あまみ・ほくと)だった。ところがそれが今、壇上で力の限り、つっかえつっかえながら宣言しているのである。 「……おっ、オレは…レオンの恋人として、恥じないような立派なパートナーになるにょ!」 極端に緊張した結果だ。裏返った語尾もご愛敬、笑うような人はいなかった。 そのかわりに、温かい拍手が北斗を迎えてくれたのだった。 鋭鋒団長も微笑ましいと言わんばかりにコメントしてくれた。 「そうか、ダンドリオン少尉も鼻が高いだろう」 北斗は『メカ』という言葉の似合う機晶姫であり、灰色の顔部品に赤面する機能はない。ないのだが、胸の内がカッカと燃えるように熱いと北斗は感じていた。 なぜって、 「いきなりオレの名が出たからたまげたぞ!」 と言いながら、立ち上がって拍手してくれているのが、まさに北斗の恋人レオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)だからであった。レオンは照れくさいような顔をしているが、その目はじっと、北斗に注がれている。 つづいて、北斗の弟にあたる天海 聖(あまみ・あきら)が宣誓する。 「平和で安全な世界の実現の為に、全力で皆さんをサポートして行きます」 「安全という言葉は大切だ。我々は、平穏をもたらす者でなければならない」 鋭鋒が評価してくれたので、聖は深く頭を垂れた。 その横で、未だ興奮冷めやらぬ北斗とは好対照といえよう。 そして、少尉へと昇進した天海 護(あまみ・まもる)が壇に上がった。 昨夜より、護たち三人は、設営に尽力していた。彼らが属する総合支援課は、その名が示すように派手な部門ではない。後方支援を主担当としており、最前線には滅多に接しない。だけど、いや、だからこそ、設営のように着実さが要求される作業は得意なのである。 制服をパリッと着こなし、髪も撫でつけて護は壇上に登った。 会場中の視線という視線が一斉に集まる。壇上が急に狭く感じられ、緊張で視界が揺れた。 しかし、それは一瞬だった。 (「僕は少尉だ。士官になったんだ。その任を果たさなければならない」) そう決めた途端、嘘のように緊張は消えた。 かくていっぱしの士官らしく、堂々と護は宣言したのである。。 「世界の平和と、国民の安全に貢献できる“強き善き士官”になります」 「少尉の襟章は飾りではない。これは高い能力と、それに伴う責任を表現したものだ。貴官のより一層の努力を期待する。無論、功績には応じるつもりだ」 と言って鋭鋒は拍手した。それが嬉しい。団長がちゃんと、護のことを知り、励ましてくれたのだから。 (「確実に、着実に功績を積み、より上を、昇進を目指して頑張ろう」) 護は心のなかでこのことも誓った。