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デスティニーパレードinニルヴァーナ!

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デスティニーパレードinニルヴァーナ!
デスティニーパレードinニルヴァーナ! デスティニーパレードinニルヴァーナ!

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第一章


 開園前の園内。
 まだ人のいない空間のど真ん中でドクター・ハデス(どくたー・はです)は高らかに哄笑を上げた。
「フハハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、ドクター・ハデス! デスティニーCの再建ならば、天才科学者であるこの俺に任せておくがいい!」
「ハデス様、こんなところで秘密結社と叫んでいては秘密の意味がなくなります」
「おお、それもそうだな」
 制止したのはアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)。忠誠を誓った騎士はいつもの戯れに軽く息を吐いた。
「しかし、誰も居ないことが幸いでした。開園前でよかったです」
 もし誰かに見られでもしたら、又もや騒動に巻き込まれ、正義と忠誠の狭間で揺れてしまうだろう。
 ホッと胸を撫で下ろし、今回の内容を尋ねる。
「ところで、今回の作戦は何です?」
「ククク、遊園地と言えば、マスコットキャラクターの着ぐるみが定番! そこでこの俺がデスティニーCに相応しいマスコットキャラクター着ぐるみを開発したのだ!」
 大手を振って示したのはハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)だった。
「これ……ですか?」
「その通り! 『破壊の邪鎧<スーツ・オブ・デス>』をベースに最強の着ぐるみを作ってやったぞ。これならばどんなニルヴァーナ生物が襲ってこようと恐るるに足りん!」
 満足顔で説明をするハデス。
「これをとある人物に着けてもらう」
「とある人物、ですか?」
 同時にサッと現れる人影。
「丁度到着したようだな。着てもらうのはアルバイトのキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)である!」
「おう、任せとけ!」
「キロスさん!?」
 開いた口が閉まらなくなったアルテミス。驚愕、当惑、はたまた恋情。色々な感情が混ぜ合わさり、出てきた言葉は、
「えっ、何でですか!? あのキロスさんが着ぐるみのアルバイトなんておかしいです! 何か企んでいるに違いありません!」
 警戒に満ちた言葉だった。
「さあ、キロス・コンモドゥスよ! 『破壊の邪鎧<スーツ・オブ・デス>』を身に纏うのだ!」
「装着命令、確認シマシタ……。着用者ヲ、キロス・コンモドゥスニ認定。蒸着シマス」
 喚く彼女を余所に発明品、『破壊の邪鎧<スーツ・オブ・デス>』は【ナノマシン拡散】から実体化。しっかりとキロスを包んでいく。
「おお、案外着心地いいぜ」
 見た目はパワードスーツのメタリックな外見に近い。だが、表面装甲部にはコミカライズされたインテグラルの描かれていた。
「フハハ、我は天才科学者なのだ。それを忘れてもらっては困る」
 眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げる。
「しかし名前が今のままではキャラクターとしては乏しい。ここはいっそ『インテグラるん』としようではないか」
「名称登録、『インテグラるん』。登録完了」
「へへ、気に入ったぜ!」
 感触を確かめるため手足を動かすキロス。
「ハデス様! 聞いていますか!? どう考えてもおかしいです!」
「何を言うのだアルテミス・カリストよ。悪の幹部とはいつでも何かを企んでいるものだ」
 忠言にも不適に口元を歪めるハデス。これはもう何を言っても無駄である。
「さてと、感触のほうはどうかな?」
 二人の会話などそ知らぬ顔で、キロスは徐にアルテミスへと手を伸ばす。
「これまたすげぇ。ちゃんと感覚があるぜ!」
「ちょ、ちょっと、キロスさん!? な、何で私にっ……!?」
 突然のことに赤面したアルテミスだったが、調子に乗ったキロスは、
「この柔らかい感覚も伝わるんだな。アルバイトしてよかったぜ!」
「って、ど、どこ触って!?」
 あろうことか柔らかい二つのそれに手を触れてしまった。
 突然のことに顔が沸騰する。急いで触れていた手を振り払うとキッと睨みつけ、【魔剣ディルヴィング】を構える。
 騎士の性か、剣を手にしたことでようやく頭が冷め、思考が働いた。同時に言い知れないどす黒い感情も湧き上がる。
「もしかして、それが目的で……?」
 人、それを嫉妬と言うのだが、本人はその感情に気付いているのだろうか。
 それはさておき。
「ん? 何のことかな?」
 切っ先を向けられてもとぼけるキロスにアルテミスは、
「許しません!」
 本気の一撃を振り下ろした。だが、
「無駄なのだよ。その程度では我の発明品は壊れはしないのである」
 言うとおり、『インテグラるん』には傷一つ付いていない。
「我は今から量産体制に入る。さあ、キロス・コンモドゥスよ! その姿でデスティニーCに夢と希望を振りまいてくるのだ!」
「おう! ……あれ?」
「どうしたのだ?」
「足が動かないんだが」
 仁王立ちのまま、一歩も進もうとしないキロス。そこに、『インテグラるん』から発声が起こった。
「システムエラー発生、システムエラー発生。自動操縦ニ切リ替エマス」
「……どういうことだ?」
「どうやら組み込んでおいた自立操作プログラムが起動したらしいのだよ」
「つまり?」
「女性発見。直チニ急行シマス」
「おっ、おう!?」
 キロスの問いに行動で答える『インテグラるん』。近くに居た女性店員へと一目散に向かっていく。
「な、何ですかっ!?」
「オレもよく知らないが……それよりも、お姉さん。綺麗な顔立ちしてるぜ」
「えっ、あ、ありが――ひゃうっ!」
 ギュッと強引に抱き寄せられ、ぺたぺたと触られる従業員。
「お、感触は残ってるんだな」
「ちょ、は、放してっ!」
 早くも被害者一号が出た。
「ハデス様!」
「……我は量産に忙しい。後は頼んだぞ、アルテミス・カリスト」
「な、投げた!?」
 装甲している間にも、キロスは悪行を重ねようと動く。
「もうっ! キロスさん! 離れなさい!」
 後を追うアルテミス。
 それは騎士道故か、気付かぬ自身の感情故か。定かではない。

「おいおい、大丈夫かよ……」
「まだまだ、こんなものじゃ終わらないアトラクションがあるはずよ!」
「これもアトラクションにするのかよ」
「……中の当人には夢の国でしょ?」
 波乱を目撃した三鬼と三二一。
 不安は拭い切れなかった。