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あなたが綴る物語

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あなたが綴る物語
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●現代アメリカ 6

 12月、ニューヨーク州ニューヨーク。
 とうとうこの日が来てしまったと、鬱な気分でノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)は頭上を見上げた。
 ここは1階から4階まで、全て本屋という巨大なブックストアだ。どの階からも見下ろせる、一番目立つ吹き抜けの1階フロアは特設会場で、いつも何かしらのフェアが行われている。先ほど3階の柵から垂らされた幕には『ノエル・ニムラヴス サイン&ディナーパーティー』の文字が大きくゴシック体で書かれていた。色は緑に赤。かなり派手派手しいが、クリスマスパーティーも兼ねているのでこの彩色なのだろう。
 立ち尽くす彼女の周りでは着々とその準備が行われていた。数十人のスタッフが走り回り、クリスマスパーティーの様子を整えていく。だれもが自分の為すことを心得ており、まるでビデオの早回しで見ているような錯覚に陥りそうになる。その中央で、ノエルただ1人が何をするわけでもなく半ば呆然と立ち、どんどん完成していくステージを恐々とした目で見つめているのだった。
 サイン会は初めてじゃない。むしろデビューしたてのころは毎週のように地方の本屋を回ってサイン会を開き、名前を売ろうと躍起だった。だけど今回ばかりは無理だ。
 どうしよう? 逃げ出したい。そんな思いでそわついていると、マネージャーのシャロンが近付いてくるのが見えた。
 カツカツカツとハイヒールが今日に限ってはまるで軍靴のように響いて、やけに神経に障る。
「ああ、ここにいたのね、ノエル。ずっと捜してたのよ。あなたに会わせたい人がいるの」
 彼女は満面の笑顔でそう言うとノエルの両肩を抱いて2人のスーツ姿の男性がいる方向へ変えさせた。
「彼よ。クリス・ライト。ライト・インダストリーズの若き社長で、オドネル出版社の大株主でもあるわ。あなたと契約することを強く推したのも彼よ。ここを押さえてくれたのも彼ね。ぜひお礼を言わなくちゃ」
「え? あの…」
 その言葉の意味を理解しきる前にノエルはクリスの前に引っ張り出されてしまった。
 しかし相手は2人いて、1人は黒髪にどこか冷徹そうな目をした青年、もう1人は金髪でにこやかな表情をした男性だ。
 どちらがクリスさんなんだろう? ノエルは少し悩んだ末、三十代半ばに見える金髪の男性の方におずおずと手を差し出した。
「はじめまして、ライトさん。ノエル・ニムラヴスです。このたびはありがとうございました」
 きゃあ、ととなりのシャロンが小さく声を発した。
 しまった、間違えた、と思ったけれどもう遅い。
「あ、あの……えっと…」
 これをどう打開すべきか、さーっと血の気の引いた頭で一生懸命考えていると、黒髪の男性クリスがぷっと吹き出した。
「ご、ごめんなさいっ」
「いえ、かまいません。初見で間違えられたのはあなたが初めてではありませんので。こいつの方がずっと社長らしく見えるのは俺も同意見です」
「シュランツ・ヒルといいます。クリスの秘書をしています。以後よろしくお願いします、ノエルさん」
 金髪の男性シュランツがそう言って、ノエルの差し出したままだった手を握った。
「よ、よろしくお願いします、ヒルさん」
 同じようにクリスとも握手をする。2人とも気を悪くした様子はなく、ノエルはほっと胸をなで下ろした。
「先週出た新作『風変わりな休暇 1』は、早くもハーフに達しているそうですね。このままいけばダブルもねらえると聞きました。さすが先生です」
「そんな…」
 とたん、見るからにノエルの表情が曇る。
「ありがとうございます。今回の新作は実際にノエルの体験に基づいたトラベルミステリーです。本当に読者も同じ客船に乗っているかのような臨場感を体験できるのはわたしが保証しますわ」
 もともとノエルはこういった社交的なことは苦手だ。彼女が返答に詰まったのを見て、すぐさまシャロンがフォローに入った。
「ほう。俺も先生の1ファンですので、それは楽しみです」
 2人の注意がシャロンに向いたのを見て、ノエルはその場を譲るように一歩後ろへ退いた。そして3人がそのことに気付いていないのを確認して、そのままこっそり抜ける。ある程度離れた所で念のため振り返ってみたが、シャロンの当意即妙な売り込みと返答に2人は満足そうに笑顔で話していた。
(ああ、駄目だわ。ああいうのって心臓に悪い…)
 どうせこのままここにいても何もできることはないし。ちょっと外の空気でも吸ってこよう、と自動ドアへ小走りに駆け寄った彼女に、そのとき硬い何かにぶつかった。
「あ、ごめん」
 反動でよろめき、倒れそうになったノエルの腕が強い力で掴まれる。顔を上げたノエルの目に飛び込んできたのは心配そうな表情で見下ろす少年だった。
 どきりと痛いくらい胸が脈打つ。
 歳は同じくらいだろうか。人見知りでひっこみじあんな傾向が強いノエルは、こんな距離で男性と見つめ合ったことはなかった。
「きみ?」
 ノエルからの反応がないことに、少年が首を傾げる。
「あ、あの。大丈夫です。すみません、前方不注意でした」
 あわてて少年の横をすり抜けてドアをくぐろうとする。ノエルの腕を、またも少年が掴んで引き戻した。
「ドア、閉まってるよ」
「あ…」
 あわてるあまり、注意を怠った。顔面からガラスに激突する寸前だったことに気付いた瞬間、ノエルは真っ赤になった。
 くつくつと少年がふくみ笑っている声が聞こえてくる。
「ご、ごめんなさいっ! ――ああっ」
 動揺した手元から、舞台トーク用にと持ってきていた小説の資料や原稿がはさまったバインダーがすべり落ちた。床に落ちた衝撃で留め金がはずれ、中身が辺りに広がってしまう。
「すみません、ごめんなさい、すぐ拾いますから…!」
 だれにともなく謝罪を口にしながらしゃがんで、とにかく手近にあるものを必死に掻き集める。ノエルの目から、ぽろっと涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
「あのさ。よかったら3階ロータリーの喫茶室で、コーヒーでも飲まない? おごるから」
 拾い集めた原稿を差し出しながら、風馬 弾(ふうま・だん)はそう提案をした。



「落ち着いた?」
 ここのロータリーはセルフになっている。買ってきたコーヒーを手渡しながら弾は訊いた。
「はい。すみません。
 あの。私、ノエル・ニムラヴスといいます…」
「うん、知ってる」
 驚いて顔を上げたノエルに、カバンのなかから本を取り出して見せた。ハードカバーの背表紙には、あらすじとともに作者であるノエルの近影が載っている。
 本は先日購入したばかりの『風変わりな休暇 1』だ。とはいえ、弾はサイン会でブックストアを訪れたわけではなかった。小説を読むのは好きだがそれを書く作者に興味を持ったことはない。今日はたまたま学校で使う参考書が目的で、ここでサイン会が開かれることも知らなかった。
「僕は風馬 弾。それで、訊いてもいいことなのかな? もし駄目ならそう言ってくれればいいけど」
 ノエルは短く数度まばたきをして、再び盛り上がりかけた涙を押し戻した。大切そうに両手で包み込むようにして持ったコーヒーを口元へ運ぶ。そうして寒々とした自分の内側をほんの少しでも温めようと努力した。
「小説が……書けないんです…」
「え? でも――」
 ノエルは小さな声で、訥々と話した。
 『風変わりな休暇 1』は3年前、幼なじみで恋人だった少年が主人公のモデルになっていること。彼がまだ当時無名だった彼女の才能を信じて、何かと力になってくれていたこと。短編が新聞に掲載され、初めて賞をとったことを自分のことのように喜んでくれたこと。そしてそのとき、お祝いにと乗った船が沈没し、彼が亡くなってしまったこと…。
『ジェイク・リードへ。
 人生は喜びと輝きに満ちているといつも言っていたあなた。これからも私を導く光であり続けてください』
 弾は最初のページにあった献辞の言葉を思い出していた。あれはそういうことだったのか。
「私、決めていたんです。きっといつか彼が生きていた証を本にして残そう、彼がどんなにすばらしい人であったかみんなに知ってもらおうと。でもいざ書き始めたら…」
 そのときの出来事がフラッシュバックのようにノエルのなかによみがえった。あのとき彼がどんな服を着ていたか、どんなことに笑って、ノエルを笑わせてくれたか。まるで月日など消えてしまったかのようだった。
「頭が真っ白になって、手が動かなくて…。まだあと2冊、契約が残っているのに…」
 締切りは迫ってくるのにひと文字も書けない。そんななかでこのイベントが開催されて、ノエルをさらに追い詰めていた。
「うーん」
 弾は腕組みをして視線を飛ばした。その先には例の垂れ幕があって、一番上にはノエルの笑顔の近影が印刷されていた。
 静かに涙を流すノエルに目を戻す。今の彼女にはあのきらきらとした笑顔の片鱗もなかった。何度もこすられた目元が赤くなりかけている。
「次の本の締切りってそんなに近いの?」
「そんなことはないですけど…」
「じゃあさ、もうそれについて考えるのはいったんやめて、今はクリスマスを楽しもうよ。明日何があるか分からない。それでまた書けるようになるかもしれないしね。くよくよしたところで何もいいことはないよ」
「でも――」
「僕に任せて。1つ案があるんだ。それを試してみよう」
「えっ?」
 ぱっと伏せられていた顔が上がり、すがるような目が弾を見つめる。
「それで提案なんだけど。1日は空いてる? よかったら僕につきあってほしいな」
 そう言ってにっこり笑うと弾はコーヒーに口をつけた。



*            *            *



 ツリーを飾る手を止めて。
「え?」
 と、六連 すばる(むづら・すばる)は訊き返した。
「だから、やどり木だってば」
 瀬乃 月琥(せの・つきこ)は持っていた紐をぐるんぐるん回す。紐の先にはクリスマスカラーのリボンを巻いた木の枝がついていた。
「これ、どこに吊るしたらいいと思う?」
「それをツリーに吊るすんですか…?」
 リボンで装飾されていようと、枝は枝である。美しく飾られたツリーには全く不釣り合いだ。かといってそれを吊るす気満々の月琥にストレートに言うのも気がひける。
 どう返答するべきか迷っているすばるに気付いて、月琥は手を振った。
「ああ、違う違う。これはクリスマスのイベント用の小道具でね、やどり木の下の2人はキスしなくちゃいけないっていうのがあるの」
「ああ、そうなんですか」
「そう! でもひとだかりになったら困るから、あんまり目立たない場所で、なおかつ自然に2人になれる場所に吊るさなくちゃ!」
「月琥さん、お目当ての方がいらっしゃるんですね」
 はりきる月琥に直感的にそれと察して、にこやかに言う。月琥は真っ赤になった。
「べ、ベべべつにそんなんじゃ…。そりゃまあ、もし何かがあってこの下で和深と2人になることでもあったら、そのときはキスくらいしてあげてもいいかな、とは思うけど」
(和深さんってお兄さんじゃ…)
 口をすべらせた月琥にちょっと退きかけたが、耳まで赤くなってしどもどになっている月琥を見ているとなんだかかわいく思えてきて、まあそれもいいかと思った。
 部屋の一角を指差す。
「あの辺りなんかどうですか? 入り口の近くなので人通りがあって、長くは留まっていられませんし」
「うん! そうだね! あそこにしよう!」と、さっそく向かいかけた足をはたと止める。「あ、そうだ。今日のパーティーにはゾディアックさんも来るんでしょ? すばるも引っ張り込んじゃうといーよ!」
「えええっ?」
 今度はすばるが赤くなる番だった。
「そんな……あの…っ」
「なに照れてんの? とっくにキスなんか済ませちゃってるんでしょ? 婚約者なんだもん」
 月琥が目線で差しているのはすばるの指にはまった婚約指輪だった。彼女の瞳と同じ、ウイスキーブラウンのトパーズがはめ込まれている。2カ月前、誕生日に食事に連れて行ってもらった際に後見人のアルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)からプロポーズされて受け取った品だ。
 そしてそのとき、彼女のイエスの返事にアルテッツァがしたのは、紳士的に、古式ゆかしく手の甲だった。
「そ、そうですね…」
(い、言えません……まだ口づけもされたことないなんて…)
 口づけどころか抱き締められたこともないような。
「じゃあすばるのためにもバッチリ飾りつけとくからね!」
 ぐるんぐるん回して、あらためて向かおうとしたときだった。
「あーあ。舞い上がっちゃって、ばっかみたい」
 思いもしない言葉が横から飛んできた。そちらを向くと、同じツリーの飾りつけスタッフに選ばれたチェリー・ウィルソンが立っていた。すばるを見る目がぎらぎらと意地の悪い光を放っているように見えるのは、目の錯覚だろうか?
「恥ずかしいったらないわね。いいかげん、そのへんにしておいたら? あなた、分かってないようだから忠告してあげるけど、自分で恥をばらまいているのよ」
「おい、なんだよ、その言い方!」かちんときて月琥がつっかかっていく。「自分の姉さんがゾディアックさんに振られたからって、すばるに八つ当たりは醜いだけだぞ!」
「なっ、なんであなたそれを…!」
 ずばり言い当てられて、チェリーは狼狽した。
 月琥が知っていたのは彼女の後見人で社交界の華と呼ばれる大富豪ルーシッド・オルフェール(るーしっど・おるふぇーる)が面白おかしく話してくれたからだが、よけいな飛び火になりそうなので答えないことにする。
「ふ……ふん。だとしたって、何も変わらないわよ」チェリーは立て直し、開き直った。「それにわたしは彼女をかわいそうと思うから、言ってあげてるのよ。だって彼女、姉さんよりずっとかわいそうなんですもの。身代わりなんて悲惨だものね」
「なんだと!?」
「それはどういうことですか…」
 いきり立つ月琥の横を抜けて、すばるが前に出た。



「頭が痛い」
 パーティー会場へ向かう車中で出掛けに受けた電話を思い出して瀬乃 和深(せの・かずみ)は深々とため息をついた。
 電話の相手は月琥のバイト先の上司で、そして思ったとおり、内容は月琥が起こした問題についてだった。月琥がスタッフの少女とつかみ合いの取っ組み合いをしたという。
「クリスマスぐらいおとなしくできないのか、あいつは」
 渋い顔をする横で、ルーシッドがくすくす笑った。
「ムリムリ。あの子にそんな器用なこと、できるわけないよ。キミ、1度でもそんな姿見たことある? ボクがキミたちを引き取ってもう4年? 5年かな?」
「5年だ」
「5年間、ずっと一緒に暮らしてきたけど、ボクはそんな月琥見たことないよ」
 妹の名誉のためにも反論したかったが、残念ながら和深も見たことがなかった。いつだって月琥は感情的に行動して、あとから考える。
「いつまで経っても子どもだ」
「それが月琥のいいところでもある。キミもほんとはそんな月琥を気に入ってるんだろう?」
 意味深な視線を向けられて、和深は内心とまどった。何が言いたいんだろう? しかしそのとき幸か不幸か車が目的地へ着いて、滑るように歩道へと寄せて止まったおかげで和深が答えを出す必要はなくなった。会話は打ち切りとなり、先に降りた和深の手を借りて、ルーシッドも車を降りる。
 肩にかけた毛皮のコートを彼女が着ている間に車のドアを閉めた。先に立って進み、自動ドアを開けるとエレベーターを操作する。淡々とこなすその姿は彼女のパートナーというよりも、まるきり執事だ。
「キミはすっかりそういうのが板についてきたね」
「引き取ってもらったことは感謝しているよ。だが甘えて暮らすわけにはいかないからな。おまえがうちの親に払った分はきっちり働いて返させてもらう」
「生真面目だなあ」
 ルーシッドはため息をつく。
 和深と月琥は負債を抱えた両親に保険金をかけられ、その金目当てに殺されかけた過去があった。和深が機転を利かせたおかげで2人とも生き延びることができたが、実の親に殺されかけたショックからか、この件に関して和深は冷めた反応を見せるようになった。それ以外のときは昔のまま、よく笑う気のいい青年なのだが。
「パーティーに執事はいらないよ」
 たしかに今は被保護者と保護者の関係だが、幼なじみとしては、もう少し気晴らしもさせてやりたい。ルーシッドは和深のひじに手をかけた。
「執事の和深が必要ならセドナと一緒に屋敷へ残してきたよ。キミがここにいるのは、ボクがパーティーのパートナーを必要としているからだ。だからキミも今夜はそのつもりで楽しむといい。もちろん、月琥とともにね」
「ルーシッド」
 感謝するように和深がルーシッドを見る。
 月琥が見たのは、まさにそんな2人のツーショットだった。
 腕を組み、互いに優しい目をして見つめ合いながらパーティー会場の入り口をくぐってくる。
 月琥は常々2人の仲を疑っていた。もともと幼なじみの関係だし、親のことを和深が相談した相手もルーシッドだったし。
 もしかしてあの2人……そういう関係なんじゃ…。
 離れた所から自分たちを見つめている月琥に気付いたのは、ルーシッドが先だった。ルーシッドは名前を呼んで声をかけようとしたが、強張った表情で立ち尽くしている月琥の様子に、ひと目で彼女が何を考えたか思い当たる。
 月琥が和深のことをどう思っているかなんて、ルーシッドにはとっくにお見通しだ。
 ふとルーシッドのなかでいたずら心が起きた。
「和深」
「ん?」
 外套を預けていた和深を吊るされたやどり木の下に引き込んで、見せつけるようにキスをする。
 もちろんやどり木イベントのことは知っている。
「ルーシッド?」
 和深は今さら彼女とのキスぐらいであわてたりはしなかった。ただ訝っただけだ。が、月琥は違った。
「あーーーーーーっ!!」
 と会場いっぱいに響く、怒りの声を発する。
「ちょっとルーシッド! 何やってくれてるのよーーーーっ!!」
 それ、私がねらってたのにーーーッ!!
「ふっふっふ。ああいいなー、あの打てば響く反応。思ったとおりだ。月琥は期待を裏切らない ♪ 」
「ねらいはそこか」
 涙目で突撃してくる月琥を見ながらにまにま笑っているルーシッドに、意地が悪いと目を伏せる。
 月琥もいいかげん、ルーシッドの目的が自分の方にあることぐらい気付けばいいのに。自分は月琥をからかうダシに使われているだけだ。
 和深は深々とため息をついた。