天御柱学院

リアクション

　２０２４年９月――。

　新学期を迎え、百合園女学院に生徒達が戻ってきた。
　始業式の後で行われた生徒総会において、役員のティリア・イリアーノとレキ・フォートアウフ（れき・ふぉーとあうふ）の退任が告げられ、百合園警備団、生徒部代表としてイングリット・ネルソン（いんぐりっと・ねるそん）が承認されたことが発表された。
「生徒会執行部の役員として、わたくしがこれまで百合園を護ってくださった先輩と比べまして、とても未熟であることは言うまでもありません」
　檀上で、イングリットは緊張した面持ちで、就任の挨拶をしていく。
　イングリットの就任に対して、反対意見は出なかった。

「候補、イングリットだけとはな……。まぁ素行的な問題とかはないし、教師としては何も言うことはないが」
　舞台袖で生徒会を見守りながら、白百合団ＯＧのシリウスは呟いていた。
「ただ、ちょっと不安もあるからな」
　一人頷いて、シリウスは心に決める。
　自分も、生徒部の顧問か何かの形で、サポートしていこうと。

「……己自身の強さにつきましては、今もこれからも求め続けていくつもりではあります。
　ですが、百合園や生徒の皆様を護る力は、わたくし個人の心身の鍛練で身につくものではありません。
　わたくしは、志を同じくする方々と協力をして、生徒会の先輩方の指導を仰ぎながら、日々、皆様と共に精進していきたいと思っております。
　どうぞよろしくお願いいたします」
　一歩、後ろに下がって、イングリットは皆に深く頭を下げた。
　静まりかえっていたホールに、生徒達の盛大な拍手の音が響き渡った。

　そうして、イングリット・ネルソンは百合園女学院の生徒会役員として、百合園警備団生徒部の代表となった。
　サポートを約束してくれた漆髪　月夜（うるしがみ・つくよ）は、イングリットにより班長に任命された。
　そして教師のシリウスは、相談役として百合園警備団生徒部に所属する生徒達を見守ることになった。