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記憶が還る景色

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記憶が還る景色

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■迎え



 まだ、美羽が中学生だった頃。
 日本の上空で、その大陸は突如空にその姿を現した。

 澄み切った蒼空に浮かぶ浮遊大陸パラミタ。
 そこに何があるのだろうかと見上げる度に美羽は想像していた。
 どんな場所なのか。
 誰が住んでいるのか。
 想像を広げれば際限は無くて、あの空に描くのは乙女のような空想や、少年らしい冒険譚、真剣そのもののミステリーに、ホラーがあるかもしれない。
 想像はいつか憧れに変わり、やがては、行ってみたいと欲するようになった。
 運命の巡り合わせは美羽をパラミタへと誘うことになったが、

 地球からパラミタ大陸を望む美羽は高鳴る胸を押さえた。

 久しく忘れていた感覚である。
 憧れは勿論、目にするもの、触れるもの全てにドキドキとときめいていたあの頃の感覚は、長いことパラミタで過ごしていた為、極々当たり前になってしまい忘れてしまっていた。

 美羽が立っているのは、パラミタ大陸の存在を知り、初めて見上げた場所。
 懐かしくて、とても新鮮で、なんとも言えない不思議な気分だった。



…※…




 一歩を踏み出した瞬間、美羽は「あれ?」と首を捻った。
 胸のドキドキだけがそのままに、一瞬何かの空白があったことを不思議がる。
「あ、クロフォード!」
 傾げた視界の向こうに破名を見つけて美羽は地面を蹴った。



…※…※…※…




『和ちゃ〜ん、こっちよ〜』
 声が聞こえる。
『お〜い、和輝〜』
 風渡る場所。
 遠く、手招く二つの影。

「……母さん? 父さん?」

 亡き、人達。

 ああ、でも、懐かしい声。



…※…




「……ん? ……記憶が、途切れた?」
 訝しみに眉間に皺を寄せるも「クロフォード」と声を張りすぐ横を駆け抜けていく美羽の先に目的の姿を見つけ、和輝も止めていた足を再び動かした。
 ベンチに座る破名は特に何かをしているようには見えないが、目が銀色に変色しており、何かをやっているんだとすぐにわかった。
「美羽に、和輝か……と、ナオも来たな」
「もー、探しましたよ!」
 走ってきたナオは軽く息を切らせていて、急いで来たんですよと言わんばかりである。
「迎えが三人か……」
 気づけば大人数だなとベンチから立ち上がった破名は大袈裟だと溜息を吐くが、
「お前は前科がありすぎる」
 和輝の台詞にその場に居た全員が頷いたので、破名は口を閉ざし、作業の完了を知らせるように銀色の目を紫色に戻すのだった。