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神楽崎春のパン…まつり

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神楽崎春のパン…まつり
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○    ○    ○


 百合園女学院の校門前には、沢山の契約者達が集まっていた。
 優子がパートナーのゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)を通して、若葉分校に協力を求めたこと、更にゼスタがキマクで協力を求めた為に、パラ実生の姿が多かった。
「順番にお願いしますね。ダンボールに中身について書いてありますから、中は確認しなくて大丈夫ですよ」
 レキ達により、荷物が運ばれてくる中、志方 綾乃(しかた・あやの)は校門の内側で警戒に当たっていた。
「はい、お願いね」
「頼むアル〜」
 レキとチムチムは、百合園の生徒、それも女生徒に手を出したという噂などがない子から、荷物を預けている。
 ……と、その時。
「俺らが運んでやるぜー」
「宿舎まで超特急でな」
「任せておけ〜」
 モヒカンの少年が3人現れて、百合園の少女の手からダンボールを奪った。
 瞬間。
「だ゛め゛な゛ん゛だ゛よ゛」
「ふげっ」
「うごっ」
 少年達は飛び出してきた筋肉隆々な巨体――仲良 いちご(なかよし・いちご)にぶつかってしりもちをついた。
「お゛姉゛ち゛ゃ゛ん゛が゛、じ゛ゅ゛ん゛ば゛ん゛っ゛て゛い゛っ゛て゛た゛で゛し゛ょ゛」
「そ、そうか」
「仕方ないな。順番待ちだなー」
 言いながら、モヒカン達がこそこそカッターで箱に穴を開けていく様子を、綾乃は柱の陰から見ていた――。
 そして、モヒカンがするすると穴からショーツを取り出したその瞬間に。
「そこまでです」
 綾乃は塀を飛び越えて降り立ち、ショーツを握るモヒカンの手を踏んだ。
「何をしようとしていたのです?」
「ほ、ほらダンボールに持ち手がないだろ! 作ってやろうとしただけだぜ」
「なんだ中出ちまったのか、もどさねぇとなー」
 ごまかして戻す素振りをして袖の中に入れていく様子も、綾乃は見逃さなかった。
「それじゃあな! あとで手伝ってやるぜー」
 綾乃を振り切って、少年達は街の方へと走り出す。

「志方ありません」
 綾乃は残念そうに目を伏せた後、パワーブレス、チャージブレイク。
 そして、ジェットハンマーを振り上げた。
「天誅です!」
 ガッゴーン!
 なんだかすっごい音がして、地面が陥没した。
 男達の体は潰されて、跡形もなくなった。
 即死、だった……。
 あ、嘘。
 ちゃんと直撃は外した為、ぴくぴく生きてるようだ。
「い゛ち゛ご゛ち゛ゃ゛ん゛み゛た゛い゛な゛純゛真゛無゛垢゛の゛女゛の゛子゛達゛の゛心゛を゛踏゛み゛に゛じ゛る゛な゛ん゛て゛ひ゛ど゛い゛」
 かろうじて逃れた一人には、いちごが飛びついて、強烈なハグをする。
「ふぎゃーーーーっ……………………」
 こちらは泡を吹いて、気絶した。
「それでは、この方々を詰め所に連れて行きますので、少し離れますが、どうか皆様お気をつけ下さい」
 綾乃は倒れた男達の襟首を引っ張って、ずるずる連れて行く。
「起゛き゛て゛、ね゛え゛、起゛き゛て゛。い゛ち゛ご゛ち゛ゃ゛ん゛の゛太゛く゛て゛長゛い゛ホ゛カ゛ホ゛カ゛の゛小゛麦゛色゛フ゛ラ゛ン゛ス゛パ゛ン゛を゛食゛べ゛て゛も゛ら゛お゛う゛と゛思゛っ゛た゛の゛に゛」
 いちごは意識のない少年をガクガク揺すって、意図せず止めを刺しながら綾乃の後に続いていった。
「…………」
 引きずられていかれる、同志――いや、同業者の姿を、国頭 武尊(くにがみ・たける)は静かに見ていた。
 武尊は白百合商会の企ては当然知っていた。
 だが、優子やアレナの周りにいる者達は百選練磨の契約者達だ。
(正直な所……この学生達の目を掻い潜り目的のブツを確保するなんて、オレでも無理な話だな)
「国頭、どうかしたかァ?」
 一人、真剣な表情で考え込んでいる武尊に、若葉分校番長の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が心配そうに声をかける。
「いや、なんでもない。悪いが、オレはもっと確実な方法を目指す為、先に行くぜ」
「そうか、無理すんなよォ?」
「……くっ、吉永番長……その優しさ、余裕ってわけか。じゃあな」
 武尊は手を上げて、その場から去っていく。
(パーティーに出席し、その席上で神楽崎から直接貰う。これしかない) 
 キリッとした顔で立ち去るその姿は、凛々しかった。
「無茶すんなよォー!」
 恋い慕われている、オレの女である優子から(竜司妄想)、武尊が病気だというようなことを聞いている竜司は、可愛い分校生である彼のことを心底案じていた。
「優子に『協力して欲しい』と懇願されたんだ、てめぇら分校の名にかけて守りぬけ、優子総長の名を汚すんじゃねぇぞ!」
 武尊に負担をかけないためにもと、竜司は分校生を鼓舞していく。
 分校生達からは、オーという元気のいい声が発せられる。……その中には、生徒会庶務の、ブラヌ・ラスダーの姿もある。
「ええっと、ディテクトエビルに反応あるようなないような……だけどっ、明らかに不自然な人がいるー」
 魔法少女に変身して荷物を運んできたがマジカルステッキを向けた先には、くたびれた着ぐるみのゆる族の姿があった。
「変態? 変態? ぶっとばすのかにゃ? やっていいのかにゃー!?」
 イングリットは両手の野球のバッドを振り上げた。
「変態? 変態? どこカナ? 不審者なんて見当たらないヨ〜」
「おまえだ」
 スチャッと、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が銃口をそのゆる族――百合園生茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)のパートナーで不審者のキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)に向けた。
「アレナさんの助けにきただけヨ! ミーのどこが変態に見えるとイウノ!」
「校門前でいつも、警備員さんに押し返されてるの」
 葵の説明を受けた呼雪が、引き金を引こうとしたその時。
「あ、キャンディスさん。お久しぶりです」
 現れたアレナが、キャンディスにぺこりと頭を下げたのだった。
「アレナさん、会いたかったヨー。今日は、お友達として手伝うワヨー」
「はい、よろしくお願いいたします」
「…………」
 呼雪は不審気にキャンディスを見るものの、アレナが親しげにしていることから銃を下ろしたのだった。
 しかしその後も殺気だった目で、周囲を鋭く見回し、時折苦悩するかのように眉間に皺を寄せる。
「あの時、アレナが離宮を封印する事にならなければ……こんな事態にもならなかったのかも知れないな」
 そして、アレナに目を向けて「何もしてやれなくてすまなかった」と、謝罪の言葉を口にする。
「えっ……いえ、呼雪さんには、たくさん大切なこと教えていただいています、から。今日も手伝いに来てくださり、ありがとうございます」
 アレナは呼雪にもぺこりと頭を下げた。
「普段のアレナ様のお姿、変態さんにも見られていると思いますから、逆に少し目立つ格好をすれば誤魔化せるのでは?」
 呼雪の後ろから、ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)が服を持って、現れた。
「そう、でしょうか」
「出来ることはしておいた方がいい」
「はい」
 呼雪の勧めもあり、アレナはユニコルノが用意してきた服に着替えることにした。
「どなたかとは申し上げませんが、約一名不審な方もいますし、私もアレナさんに同行いたします」
「そうですね、ダンボールもお運びいたしますわ」
 百合園生の中から、アレナの護衛を申し出たのは冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)とパートナーのエノン・アイゼン(えのん・あいぜん)だ。
「宿舎の傍にも水が流れてるヨー。水路で行こうネー。大きな船アルヨ」
 キャンディスが運河の方に皆を案内する。
 木陰で着替えたアレナと、呼雪、ユニコルノ、ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)。そして小夜子とエノンはアレナと一緒に荷物を持って、宿舎へ向かうことになった。
「気をつけろよー。オレの女のパートナーを頼んだぜェ。危なくなったら駆けつけるからよォ」
「先に行ってるよ。任せて〜」
 竜司の言葉に、ヘルが手を振って答える。
「……でもさ、ね、呼雪」
 ヘルは呼雪の隣に歩み寄って、聞いてみる。
「あの番長、優子さんと付き合ってるの? 面白い組み合わせだね♪」
「いや……」
 呼雪は軽く眉をひそめる。
「そんなことはないと思うが……」
 とはいえ、絶対違うとは言い切れない。
 アレナはぺこぺこ竜司に頭を下げていた。