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0・序
葦原藩の祖が封じた怪人、ナラカ道人を封じた祠が破られた。陵山は八鬼衆の一人、大太によって崩され、ナラカ道人の復活まで猶予はない。
葦原明倫館で山々を燃えつくす黒煙を見ていた葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)は、八鬼衆の一人、霧のように姿が朧な幽巫によって闇空に連れ去られた。
その頃、総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)は、祠に向かう途中に陣を留めていた。
祠を護る葦原太郎左衛門は、山陵の崩壊で土砂に埋まるが、辛くも助け出される。
度会鈴鹿らの懸命な介護によって、既に動ける状況だが、剣を振る腕に普段の冴えはない。
八鬼衆は、姿を現した。
現在生き残っているのは、五名。それぞれに奇天烈な術を使う。
「困ったことになりましたなぁ、房姫さま、なんとかご無事で」
葦原明倫館では、目の前で房姫を連れ去られた橘 柚子(たちばな・ゆず)が戦支度をしていた。木花 開耶(このはな・さくや)と安倍 晴明(あべの・せいめい)も同行する。
「式神に何が出来るのかわかれへんけど、房姫様をお護りしてるはず」
「戻ってこないんどすから、きっと房姫はんは無事なのでしょう、はよう助けてあげたい」
浅間大社の奥宮で木花開耶媛命として祀られていたが開耶は、目覚める前までの記憶を失っている。
「ナラカ道人はんは、目覚めたとき、記憶はあるんやろか」
開耶は失われた記憶のかけらすらない。
「行こうぜ、同行させた式神も気がかりだ」
安倍 晴明(あべの・せいめい)は式神が房姫を守りきれるか、時間との勝負だと思っていた。
柚子は、房姫の袖に紛れて共に消え去った式神の気配を追って城を後にする。
禍々しい前兆に気付いていながら房姫を敵の手に落としたレン・オズワルド(れん・おずわるど)は、既に城を発って祠へと向かっていた。
なぜ、祠に向かうのか。レンには房姫が幽巫と共に祠にいるであろう、そう考える確信があった。
イルマ・レスト(いるま・れすと)は俯き加減で唇を噛んでいる。
「襲撃があることを予想しておきながら、まんまと房姫を攫われるなど、屈辱です。」
既に身支度を整えた、朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)がイルマの言葉に心では頷きながらも首を振る。
「正直な気持ちをいうと今すぐにでも房姫さんを助けに行きたい、だけど・・・」
言葉を濁した。
「わかってる…次に危険なのはハイナ総奉行だよね」
「その通りですわね、皆が房姫を助けにいけば、手薄になるのは、ハイナさんの警護ですわ」
二人とも心情では房姫を守りたい、しかし次なる標的はハイナと見て、ハイナの元に向かう。
トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)と蘭堂 一媛(らんどう・いちひめ)もレンと同じだ。
「側に付いていながら守れなかった…この借り、絶対に返す!」
既に祠に向かっている。
織部 イル(おりべ・いる)は怪我をおった赤城 長門(あかぎ・ながと)を城の医者まで運んできた。
しかし治療が終わるや否や長門は姿を消す。戦いに戻ったのだ。
「なんと、せっかちな」
イルも戦地で負傷した兵を治療する度会 鈴鹿(わたらい・すずか)を気遣う。
「今頃、鈴鹿はどうしているであろう?芯の強い子故に気丈に振舞っておるだろうが、やはり気掛かりじゃな」
イルは、城内の警護など太郎左衛門宛の密書を持ち、山に戻る。
ハイナと房姫のいない葦原明倫館、既に多くの兵が祠へと向かっている。警備は手薄だ。主のいない城は、生気がない。
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