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リアクション
その頃外では。
ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)と柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)は辛くも陣鐘が鳴る前に城に入った。
蟲籠を探すためだ。
「蠱毒っていう呪術があるとは聞くけど・・蟲を従えるのとはまた別だし・・・音・・かな?」
三厳は、蟲がなぜ集まるのかを考えている。
「音・・・ですか?」
ユウは八鬼衆なるものは奇天烈な技を使う化け物なのだから、その成り立ちを考えたことは無かった。確かに蟲が一つの人となるためには、なにやら約束事があるのかもしれない。
三蔵は、蟲の一つが自我のある蟲籠であると考えている。その一つが、
「蟲を操るモノとして蟲笛とか蟲の音そっくりの人に聞こえないような音で蟲を操るんだよ、もしかしたら蟲笛と同様の効果のある蟲を体内に取り込んでるのかもしれない」
と推測した。
「その一つを探してみたいんだ」
「探す・・・分かりました!」
ユウは蟲籠に有効な火の技を持っていない。なのに、戦いを挑むのは無謀でもある。
それでも。
三蔵の願いをかなえようと決意する。
城内をかすかな羽音を探して歩き回るユウ、その後を三蔵が従う。
書院前の犬走りで、ユウが立ち止まった。何かを感じたのだ。
そこにいたのは、大量の手巻き寿司や鉄火巻きを抱えた弁天屋菊だ。
「中に厠があるのは聞いたが、飯はないだろ、差し入れだよ」
菊は、扉前にいる惣介と風祭 隼人(かざまつり・はやと)に鍵を開けるよう頼む。
「なんだよ、あたしを疑うのかいッ」
隼人は、先ほどの戦いで、蟲籠を追い詰めながらも止めをさせなかったことを悔いている。
再度の戦いには秘策がある。
「なんだ、あんた策がありそうだね」
菊は口元だけで笑みを作り、隼人に媚びた。
惣介はその笑みに微かな違和感を持つ。しかし、・・・
「おい、ジョシュア。寿司の差し入れだ」
電話をする。
「そうだね、ご飯、誰も言わないから忘れてたよ、ちょっと待ってて」
ジョシュアは、躊躇した。
「ごめん、少し待ってて!そこに置いてくれたら後で取りにでるよ」
「寿司だよ、腐っちまうよ、それに・・・」
菊はもろ肌を脱ぐ。白晒を巻かれた背中に刺青がある。蠢く刺青。
「こいつが、待ちきれないよ」
菊は惣介の喉元に刃を向ける。
「鍵を開けるよう、いいな」
ユウは、金属音のような羽音を聞いた。ユウに超感覚による聴覚強化で羽音が聞こえたのだ。
菊の頭上、塀の上に見慣れぬ蟲がいる。
「三蔵、見つけた!」
「うむ」
それまで、子どもっぽい少女だった三蔵が自らの気配を消した。
風のように自然に塀に近寄る。
蟲が飛び立つ、刹那、三蔵の剣が空を舞う。
それは一瞬だった。
そこにいる誰もが気付いていない。
「ユウ!」
三蔵がユウに駆け寄る。
風が起こる。地面に落ちた蟲は、小さな四つの塊に分かれて風にのる。
それを合図に菊が倒れた。
背中の蟲が、一つの、先ほどよりももっと小さな老人となって現れる。
「三蔵、あれ!」
ユウが指差す。もしや今切り落としたのは、蟲籠の要ではなかったのか。
いや、三蔵の推測は当たっている。蟲籠は心を失った。
「いまだ!」
隼人が、煙幕ファンデーションの煙幕で蟲籠の視界を封じる。再び小さな蟲に戻ろうとするが、これまでの統率はない、頭から次第に離れてゆく。
その刹那、
隼人が飛び上がり、殺気看破を使い、煙幕の中で赤子のように小柄になった蟲籠の頭より液状の接着剤をかける。
ばらばらと崩れながら固まる蟲籠に、
「やっと決着がついたな」
隼人は、火術をかける。
燃え上がる蟲籠。
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