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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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 教導団旗艦。
 艦の側面からも、敵艦が迫ってきている。
 これにはアクィラの組が迎撃に出ている。
 煙は箒に乗って闇術で牽制、パートナーらは小型飛空艇から、冥利のミサイルポッド、死者の書の雷術、復活の書の火術と、それぞれの得意技で敵艦を攻撃にかかった。
 トナカイに乗って空を駆けていくアクィラ。アクィラたちは、敵艦の後方に回る。
「さあって、真打登場よ。腕が鳴るわね」と、パオラ・ロッタ(ぱおら・ろった)
「さて、そろそろ行くわよ」とアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)らが続く。
「はわわわわ〜ですよぉ!」クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)が四騎編成の末尾に。「待ってくださいですよぉ」
 みずねこ艇を率い、周囲を警護していたミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)も、各所へ艇を回す指示を送る。
「精鋭のみずねこ小隊、行くぜ!
 ステルス飛行で、敵艦に向かうぜっ」
 
 一方でこちらの旗艦には、すでに上方につけた敵が下りてきていたのだった。
 こちらにも勿論、対応が急がれている。
「な、何。敵が?」「きゃぁぁ」
 艦内の非戦闘員らが慌てて避難している。
「この船は絶対に守りますー!」
 そのなかを、逆方向に、船の外へ駆けていくマティエ
「はっ」
 扉を開けてマティエが見たのは、戦斧をかかえた屈強な賊、虎の面。獣人兵? これが近海の雲賊か。
 獲物とばかりに、かわいい白ねこマティエに斧を振り下ろす。
「りゅ、りゅーき……!」
 マティエの後ろからすぐに追いついた曖浜の則天去私が、敵を打ち抜く。
「悪いけど……あんたらに乗船許可なんて出てないからねぇ!」
 倒れる相手。しかし、その後ろからも、続々と。
 極力侵入させない、いや、絶対に。艦の人たちを守らなければ。曖浜は銃を構え、マティエも勇気を振り絞り立ち向かう。
 艦内入り口付近の随所で、銃声、刃に響きが聞こえ始めた。
「はぁ、はぁ」
 ついに、実戦か……輝石 ライス(きせき・らいす)は、戦闘のその妙な高揚感のなか、前に出たい気持ちを抑えつつ、戦う兵らの後方支援に努めた。握りしめる銃。
 傷付いて退いてくる味方兵ら。戦斧を振り回す虎の頭の大きな戦士を見た。
 ライスも思わず、他の兵と艦内に退いた。外では打ち合う音と銃声、悲鳴が絶え間なく響いている。
 艦内に入り込んだぞ! という声を聞いた。
 警戒しろ。必ず排除せよ――
「はぁ、はぁ……」
 味方と手分けし、艦内を回るうち、ライスは一人になり、この今、すぐ近くを徘徊している敵を見つけた。虎の姿の敵兵だ。相手も一人、手負いだ。武器も持っていない。
「誰か、来ないのか。……白兵戦になったらまずい。
 いや、しかしあの傷だ!」
 ライスはショットガンを握りしめ、思い切って出た。確実に当ててやる。敵は気付き、ブーツから鋭い短刀を抜くと飛びかかってきた。
 そのとき艦が、大きく揺れた。
 


 
 旗艦よりやや後方に位置していた、中型艦二隻。ここでも周囲に、ばたばたと敵小型艦が騒がしく飛び交っていた。
 鋼鉄の獅子の艦。
「第一陣前へ……てぇーっ!」
 レーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)が叫ぶ。指揮官の一人として、兵を統率する身だ。
 そんなレーゼマンの様子を見ているのは、クルツ・マイヤー(くるつ・まいやー)。レーゼマンとは、地球での軍学校時代の同期であり、唯一の友人でもあった男。この出兵から、鋼鉄の獅子へ派遣されてきた……強化人間として。――「こちらもいろいろ人手が少なくてな。よろしく頼むぞ」不思議な形での再会だ、レーゼマンは思いは胸に秘め挨拶をする。「お手柔らかに頼むぜ、堅物君」「チャラ男が何を言うか……期待してるぞ」二人は、言って互いにニヤリと笑む。そんなやり取りが見られた。
「俺もここじゃ新参物だからな。大人しくさせてもらうとするさ」当時の実力は、彼、クルツの方が上であった。……レーゼマンはこの再会にどう接していくか戸惑いもあったが、クルツの方は。「(あの堅物君が加入してるという部隊には興味がある。ついでに可愛い女の子でもいたら大バンザイなんだけどな)」――クルツはそうして獅子に合流したのであった。ひとまずは、
「さーて、お手並み拝見と行きますか」
 ということである。
「第一陣下がれ! 続けて第二陣構え!」
 艦の反対側では、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の防衛計画により迫り来る敵を打ち返した後、夏侯 淵(かこう・えん)の訓練の成果、射手たちが一斉に矢の雨を浴びせかけた。
「訓練の仕上げのつもりでいくぜ!
 おお、カルキノス!」
「無事だったのね!」
 守護スキルで味方の守備を高めつつ、即天去私の構えをとっていたルカルカ・ルー(るかるか・るー)、艦へ戻ってきたカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)を船に迎える。
「勿論だ。……鴉の被害が大きい。それでも、よく戦ってくれた。
 まあ、弔いは後。まずは……」
 そしてカルキノスは、背後の雲海からも敵が迫っていることを告げた。
「何。魔物。後方から……!」
 戦闘をかぎつけ、死肉を貪ろうと、雲海に落下していく艦を漁ろうとする、おぞましい雲海の魔物の群れである。
 このことは、同じく後方に位置するもう一隻にも伝えられた。
 こちらNPC兵が大多数を占める一隻は、若干の苦戦状態にあったが、主砲ルノー ビーワンビス(るのー・びーわんびす)の砲撃、乗り込んできた敵相手にはクロス・クロノス(くろす・くろのす)が奮戦し何とかしのいでいた。
 ディテクトエビルのスキルを生かし、艦内に敵が入り込むのを感知し、クロスは兵に指示を出していく。
「はぁ、はぁ、そちらへ一人……お願いします!」
「クロスさん!」
 隣の艦から、ルカルカの隊よりカルキノスが急報に来ているという。
「はい。えっ。
 ……な、こんなときに後方からまだ、……魔物の一群?! ……ですか」
 甲板に下りた賊は、数も多くなかったしどうにか排除しきった。だがまだ、周囲を飛んでいる敵が煩い。
 このままでは、後方に現れたという魔物に追いつかれる。
 クロスは、空飛ぶ箒を持ち出してくる。
「ルノーさん」
「はーいー??」
 ルノーは可能な射程範囲のあらゆる方向に砲撃し必死であった。
「ここは、お任せします。私は、空へ……」
「は、はーいー。頭がこんがらがりそーですけど、クロスさんどうか!」
 ルノーの援護射撃に紛れ、クロスは後方の雲へ飛び出した。
 魔物。どれほどの数の? とにかく、気をそらせることに努めよう。飛空艇に追いすがられては、この状況では振り切れないかもしれない……
 そのとき、隣の艦からも、小型艇が飛び出した。味方勢も、魔物を迎撃に出るようである。
 クロスは、協力できる味方の存在に少し安心した。
 この暗がりの雲海には、不穏で邪悪な気が満ち溢れているように感じられる。一人では、心細い。
 乗り物からは、ルカルカが手を振っている。
「ルカルカさん!」
 幾らも飛ばないうち、雲の向こうに、幾つもの影が見えた。そこから巨大な、甲虫じみた魔物が飛び出してくる。
「わっ」
 クロスはとっさに避け、槍を目一杯振るって打ち付けた。
「く、まだ、まだ来ますね……!」
 嘴の鋭い鳥の魔物、翼が三つも四つもある魔物……雲賊とはまた違う者か、黒い影姿を騎乗させている魔物も見える。数は……見当がつかない。
 クロスは早速、槍をかまえ直し、それらの周りを旋回した。
「ウワ」「ギャァァァァ」「ピーピー」
 その細かい動きに惑わされ、もつれたり、絡まったり、落下していく者もある。それを、別の魔物が啄ばんだりした。
「おぞましい光景ね。早いとこ全滅させなきゃ」
 ルカルカは乗り物から身を乗り出し、霊剣・七枝刀を抜く。
 放たれた真空の刃が、魔物の羽を切り刻み、騎手を空中へ振り落としていく。
 追従する鴉兵の士気をダリルが高める(驚きの歌使用)。
「傷付いた者はこちらへ! 回復魔法もあるから、恐れるな。深追いは、しなくていいぞ!」
 淵は、矢を次々と射つつ言う。その周囲をカルキノスが飛び、神の目で敵を睨み弱体化を試みる。弱体化した敵に、鴉兵がまとまって襲いかかる。しかし雲のなかから突如に現れる魔物に、食われる鴉も多い。ルカルカ艇も四方に注意を払いながら避けつつ、魔物を排除していく。
 雲のなかでの激しい空中戦となった。
 獅子の艦から、その様子は見えないが……
「ルカルカ……上手くやっているか。
 む! さすがに抜け出てきた強者もいるらしい」
 艦の周囲はあらかた片が付いた、後方を見守る月島。雲間からここにまで迫ってきた魔物の影を、一つ、二つ、と見とめた。
「まさかやられてはいまいな?」
「とにかくいきますよ悠くん。ボクに任せて!」
 のガトリングが、魔物を撃ち落としていく。「これくらいの数なら!」
 三、四、……五体め! 見事に仕留めた。
 最後に撃墜した巨鳥の背から、黒い鎧を纏った者が空へ舞い上がり、艦に下りてくる。
「……」黒色の甲冑姿。
「く、できるな。この相手……放っておけないな」
 銃を取り出した月島の前に、翼が立つ。
「悠くん、下がっててボクが」
「……」この黒の甲冑には意思的なものが感じられない。
 しかし翼にガトリングを向けられて、おののくでもなく、向かってくるでもなく佇んでいたがやがて、何がしかの感応が見られた。
「これは。魔鎧……」
「悠くん……に?」
 鎧はひざをつき、屈服の意を示したようである。
「我が名。マクシミリアン・フリューテッド(まくしみりあん・ふりゅーてっど)……」
 
 間もなく、後方から、ルカルカらの乗った小型艇、クロスの空飛ぶ箒が戻ってくる。鴉兵の数も、統率が執れていたおかげかさほど減っていないと見えた。
 彼女らの後を追ってくる魔物の姿は、ない。
「皆、無事か……よかった。よく、討ち果たしたな。
 旗艦は? 些か離れてしまった、こうしてはいられないな。早く向かわねば」
 

 
 教導団旗艦はその頃、黒い煙を吐き出していた。機関部に被弾した、らしい。