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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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序章


 残された時間は24時間。されど時計の針は時を刻む。
 パルメーラ・アガスティア(ぱるめーら・あがすてぃあ)は森の頂きに。
 本能のままに森を喰らい成長を続けるアガスティアを愛おしそうに眺めていた。
 流れた血もまだ乾かないほろびの森駅には、立ちすくむ影や蜘蛛の子を散らし逃げる影が見られた。
『アクリトは君のこととっても警戒してたけど、なぁんだ、あんまり人望ないんだねー』
 奈落の世界樹の化身は薄く笑う。
『可哀想にー。でも心配しなくていいよ、誰も逃がす気なんてないから。皆仲良くこっち側の仲間にしてあげる』
 横転したナラカエクスプレスのそばで御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は見上げていた。
 遠く森の上に豆粒のように見えるパルメーラなのだが、不思議なことに声ははっきりとここまで届いてる。
「第一段階はクリア……と言ったところでしょうか」
 影野 陽太(かげの・ようた)が言った。
「勝利の塔の制圧、およびカーリーの追撃に向かった生徒を恐慌状態による逃亡に偽装しました」
 手元にはノートパソコン、ナラカにいる信頼出来る生徒すべてに通信が繋がっている。
「しばらくは敵の目をこちらに引きつけることができるでしょう」
「ええ、ありがとう」
「いえ、あなたを守ることが俺の願いですから……」
 影野陽太の永遠のライフワークは、御神楽環菜を幸せにすること、そして幸せにし続けること……。
 彼女の幸せを守るために、彼はここにいるのだ。
「環菜、トリニティさん、お二人は残ってください。あなた達がいないとこちらの計画に気付かれるかもしれません」
「あなたの指示に従うわ。今の私にできることは少ないもの」
「環菜……」
 小さな手を優しく握り、陽太は励ます。
 それからナラカエクスプレスの車掌兼ガイド、トリニティ・ディーバに目を向ける。
「そのようにいたします。列車がこれでは私も通常の業務を行えませんから」
「ありがとうございます。お二人は俺が守ります。トリニティさんからすれば頼りないかもしれませんが……」
「いいえ、お気遣い痛み入ります」
 そこにエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が周囲の警戒から戻ってきた。
「周辺に敵対勢力はいないようですわ。とりあえず奇襲の心配はありません」
「そうですか、おつかれさまです」
「あら、わたくしの居ぬ間に……」
 手を繋いだままの陽太と環菜にくすくすと笑った。
「え?」
「こ、これはその……」
 慌てて手を解く。
「わたくしは気にしませんのに」
「人前だとその……、あ、いえ、それより駅周囲の情報をおしえてください」
 陽太は彼女の得た情報を頼りに、迎撃フォーメーションを組む。
 PCの画面に構築されたそれは、中心に環菜を据え穴ができないよう防御主体で展開されている。
「防衛計画があるにこしたことはありませんが……とは言え、ここまで攻め込まれたら……」
 ここまで攻め込まれたら敗北は確定する……そう言おうとしてエリシアは言葉を止めた。
今はただ、皆さんの力を信じましょう……!