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リアクション
第十一章 〜追憶〜
・提案
「よく来たね」
司城 征(しじょう・せい)に案内され、桐生 ひな(きりゅう・ひな)とジャスパー・ズィーベンはイコン製造プラントの中に足を踏み入れた。
彼女が司城と話している間、ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)とルチル・ツェーンはアンバー・ドライの案内でプラント内を見て回っている。
「この前の話の続きになりますが、プラント自体に過去の遺産にまつわることが秘められているのですか〜。それは調査のし甲斐があるそうですねー、納得なのですよっ」
「とはいえ、未だ進展なしなんだけどね。ワーズワースの知識面に関しては、ごっそり抜けてるわけだし、それにもう戻ってこないからね」
その顛末はひなも知っている。
だが、プラントの謎に迫るよりもまずはやっておきたいことがあった。
「今頃ちょうど会議が行われてますよねっ。製造段階になった際には私もがっつり協力するですー。当時のことをもっと知りたいのもありますけど、司城さんのお手伝いもしたいですしっ。ジールさんへも宜しく伝えてくれると嬉しいのですよ〜」
まずはイコンだ。
それは、友人であり、もはやパートナー同然の存在となっているジャスパーのこともあるからだ。
最初はこんなにも可愛くて仕方がないと感じるようになるとは想像だにしていなかったのだが。
五機精を巡る一連の出来事を通して絆を深めたのは、やはり大きかったのだ。
「とはいえ、やっぱり専用機ってのは難しいよね。でも、内部機構はなんとか出来るんじゃないかな」
「確かに、今はワンオフ機を造る余裕はなさそうだからね。研究する分には大丈夫そうだけど」
それでも、意見は出しておく。
「研究ぬちては高機動型イコンの実現に力を注ぎたいのですー。ジャスパー達の力を最大限生かせるモノを造りたいですからね〜」
「ただ、彼女達基準にすると、並みの契約者は耐えられないことになるよ」
「やっぱり一緒に乗るパートナーも極度なGに耐えられないとなのですかー。実現を目指すとすればパイロットスーツの改良が無難ですかねっ」
「まあ、そうなるね」
高機動、と言っても人型イコンで実現出来るスピードには限度がある。そのため、どちらかといえば急制動における機動性、ということになる。
「パイロットスーツの改良を模索するために、私の心身を強化しようと思ってますですっ」
そのためにも、超人的な肉体を自身も手に入れておきたいところだ。
「あと、具体的にはスーツが重力で身体を圧迫するのを抑えればいいですね〜。宇宙服とかレーサー服の生地を応用しながら、重力の軽減を模索したいですー」
「素材については、宇宙服は確かに有効かもね。ただ、それを身体にフィットさせる、それでいて耐久性を持たせ、さらに普通の服と同じような感覚に出来れば理想だよ。それについては、ポータラカからジールが何らかの技術を持ってくることに期待したいところだね」
一方、ナリュキ達はプラントの設備についてアンバーから解説を受けていた。
「この前案内した通り、ここの通路を真っ直ぐ進んだところにあるのが制御室じゃ。で、この吹き抜けの下が格納庫になっておる」
第二世代機開発プロジェクトで使われているのは主に居住区域だが、今彼女達がいるのは、基地区域だ。
「使ってるはこの辺だけかにゃ?」
「うむ。制御室、格納庫、それからあの扉の先にある生産工場くらいしか実際は動いておらん。まあ、それでも十分なんじゃが」
「じゃあ、使われてない部分に何かまだ秘密があるのかもしれない、ってことかの?」
「そうなる……って何をするか!」
真面目に説明しているところ、ルチルがアンバーの頬をつねったりしている。どうやら退屈凌ぎのつもりらしい。
このまま遊びがてらプラント内を駆け回られるのも困りものだから、いささかマシではあるが。
「何にせよ、五千年前に一度稼働しているってことは、一万年前だけじゃなくそのときの情報もあるかもしれんのう」