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リアクション
・システム構築
「クク、見ない間に随分と力をつけたようだナ」
メニエス・レイン(めにえす・れいん)はヴィクター・ウェストの元を訪れていた。
「少し時間はかかったけど、アールマハトはなんとかしたわ。魔導力連動システム、やってもらおうかしら?」
ヴィクターの手によって復元された全能の書 『アールマハト』(ぜんのうのしょ・あーるまはと)も、かつてに近いところまで力を取り戻している。
「前に話した通り、術式を刻み、そこを魔力の中心として出力を全能の書本体、魔力の吸収・還元を全能の書の実体にとする流れを作れば、汎用的に使える簡易的魔導力連動システムが出来るはずよ」
「これならバ、実現可能だろウ。準備を始めよウ」
が、始める前にメニエスは一つの提案を行う。
「それと、これをやる上で、イコンの方にも少し手を出したいわ。次世代機の一環として、魔法主体の機体を造りたいわ。あのクルキアータにイルミンスールのアルマインのような性能を付与したものを。そうすれば、搭乗者の魔力によって更に全体性能の底上げが出来る機体が出来るんじゃないかしら?」
さらに提案を続ける。
「もし、また寺院用のイコンとして運用するなら、一定の魔力を持った素体から一定の魔力を持ったクローンが作れればいけるんじゃないかしら? 天御柱なりの連中が魔法に関連したシステムをすぐ受け入れて組み込むとは考えにくいし、一歩先をいけるかもしれないわ。
……それとも、貴方も魔法なんてあまり信用ならないクチかしら?」
「オレはそれがオレの興味を引く限リ、魔法だろうとなんだろうと許容すル。それ二……あの女と同じことはしたくないからナ」
ヴィクターが微笑を浮かべる。
やはりこの男は、科学至上主義者というわけではないようだ。
「うまくすれば、もうじきEMUでミスティルテイン騎士団が堕ち、ホーリーアスティン騎士団が台頭する可能性がありますわ。そうなれば、そこへ機体を横流しすることも出来るかもしれません。十分有用性はあるはずですわ」
ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)のその言葉を聞いて、尚更面白そうにヴィクターが笑う。
「クク、それだけじゃなイ。既に聞いているだろウ」
メニエスがそれを口にする。
「『EMUにイコン技術を提供するため、ミスティルテイン騎士団からポータラカに人材が派遣されている』だったわね。イコン発祥の地とされるポータラカの技術がEMUにもたらされ、貴方の技術も合わされば……」
EMUがイコンに関する技術を手に入れれば、そのEMUをホーリーアスティンが掌握した際、フルにそれを活用出来る。
「よシ、既存のガラクタの改良から始めてみよウ。シュメッターリンクとシュバルツ・フリーゲモ、魔術回路を載せることが出来れバ、ガラクタからプラモデルくらいには昇格出来るかもしれなイ」
ヴィクターはやはり乗り気だ。
「もちろん、あたし用のはあたし用に調整して欲しいところだけど。折角魔導力連動システムがあるのだからね」
「既に用意はしてあル。ガ、その前にシステムの構築ダ」
準備に取り掛かる。
「アールマハト!」
「はい、マスター」
メニエスとアールマハトが術式をその身に施す準備をする。
「あくまで簡易的なものダ。それほど大掛かりな施術ではなイ。主に魔力の循環経路の作成となル」
手術台に横になるメニエス。
「わたくしも可能な範囲でお手伝いしますわ」
ミストラルが加わることで、アールマハトとメニエスの二人に対し、同時に術式を施せるようになる。
ヴィクターがアールマハト、ミストラルがメニエスの担当だ。
「終了ダ」
施術が終わり、術式が刻まれたはずだが、身体に変化は感じられない。
「魔力を使うとき二、身体に刻まれた術式の『印』が浮かび上がるようになっていル。魔法陣というよりハ、直線を組み合わせた幾何学に近いナ」
やり方次第では、アールマハトの魔力を完全に吸収し、自身の魔力をブーストして渾身の一撃を放つことも可能だという。
「さすがに詠唱動作カットは無理だったガ、これまでよりも魔力を効率良く使うことが出来るはずダ。それと――来るがいイ」
ヴィクターに案内された先には、一機のイコンがあった。
「クルキアータに魔術回路を載セ、魔導書本体をイコンのパーツとして組み込むことデ、イコンでも魔法が出力出来るようにした機体ダ。優秀な魔法使いと魔道書がいないせいデ、まだ試作段階の域を出ないガ」
その機体を見て、メニエスが笑みを浮かべる。
「ちょうどここに魔法使いと魔道書がいるじゃない」
「これをキミ向けに調整しよウ」
魔導力連動システムを適用出来るかはまだ分からないが、攻撃魔法を使えるのは魅力的だ。
「ありがたく使わせていただくわ。で、この機体に名前は?」
「元々はF.R.A.G.の部隊長専用機『七つの大罪』の一つとして考案していたものダ。【ルシファー】、それがこの機体ダ。キミにはぴったりだと思うガ」