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リアクション
断章二 〜集結〜
――2015年。
「レバノンでは大変だったみたいだな」
まだ少年の面影が残るマヌエルは、レバノンでクーデターに巻き込まれたときのことをエドワードに話す。
「まあ、無事でよかった」
「それで、エドワード。話って何だ? レバノンから本国に戻ってすぐに呼びつけるなんて」
友人であるエドワードに、訝しげな視線を送る。
「是非会ってもらいたい人がいる」
エドワードの屋敷の中を案内される。
そしてとある一室の扉を開けた。
「この方こそ、主の生まれ変わり。『神の子』だ」
そこには、少年にも少女に見える、美しい金髪碧眼の子供がいた。
マヌエルは無意識のうちに、畏怖を覚えていたことに気付く。
「エドワード、彼は?」
「友人のマヌエルです。この歳で司祭――神父をやってます」
エドワードが恭しく接していることもあり、目の前の子供が只者ではないと感じた。
「まだあなたの力を信じていないようです。『奇跡』を起こして下さい」
次の瞬間、『神の子』と呼ばれた子供が宙に浮いた。
本人だけではなく、周囲の物、そしてマヌエル自身も浮いていた。
「こ、これは何がどうなって……」
「もちろん、こんなのはまだ序の口だ。この方こそ、世界を変える力を持つ者」
そしてエドワードがマヌエルに手を差し出す。
「お前も一緒に、世界を変えてみたいと思わないか?」
* * *
約束の三年が過ぎたため、ノヴァは再び現れた老人に連れて行かれた。
ノヴァをトップに立て、まずは友人を一人引き込むことに成功した。
「エドワード様。お客様がお見えです」
「通せ、ローゼンクロイツ」
この日、自分が募った同志がこの場に揃う。
「エド坊が何か面白いこと始めるみたいだから、ちょっと見させてもらおうと思ってね」
「お前はそういう女だったな、エルザ」
どうみても十二歳くらいにしか見えない少女が最初に入ってくる。
「エドワード、彼女は?」
「お前と同じ聖職者だ。シスター・エルザ。こう見えて、契約者養成校であるイタリアの聖カテリーナアカデミーの校長を務めている」
そして、最後の一人は気付いたらそこにいた。
「来てくれたか、アーサー」
「あくまで我が目的のためだ」
アーサーと呼ばれた若い男が告げる。
「アーサー・クロウリー。かの魔術師の末裔だ」
「ふふ、面白いメンバーね」
「あとは、総帥だが……今はいない。代理でローゼンクロイツが来ている」
マヌエルだけが顔を強張らせた。この中で、総帥の顔を知っているのは彼だけだからだ。
「総帥……何、エド坊。組織ごっこでもやるのかしら?」
「ごっこではない。下準備は整った」
エドワードが告げる。
「あと五人の同志に声を掛けている。彼らが来れば十人」
いずれも、世界で名を轟かせている有名人だという。かく言うエドワード自身も、オックスフォード大学主席卒業、英国王室に連なる貴族の家柄だ。
「世界を変える十人だ」
こうして、十人評議会が誕生した。