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フロンティア ヴュー 2/3

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フロンティア ヴュー 2/3

リアクション

 
 
 刀真達がカサンドロスに挑む一方で、清泉 北都(いずみ・ほくと)は飛行翼で上空から遺跡の舞台を確認した。
 パートナーのクナイ・アヤシ(くない・あやし)から引き続き、『禁猟区』を施したハンカチを持たされているが、地上のクナイがこちらを見守りつつも動かないのだから、反応は無いのだろう。
 目立っているだろうとは思うけれど。
「こっちに気づいてないわけは無いと思うけど、とりあえず戦意が無ければ無視、ってことかなあ」
 呟きつつ、床を見下ろして、成程ね、と思う。
「思った通りだ」
 大きな舞台の周りには、幾つもの小さな舞台があるが、大きな舞台に接触している舞台は六つだけだ。
 そしてそれは、大きな舞台に刻まれている六芒星の鋭角の放射上にある。
「あの六つの舞台を使うんだ、多分」

 一方ではダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が遺跡の天井を調べる。
 大舞台の六芒星の、丁度真上の位置、天井にも六芒星が刻まれていた。
「こちらは、床のものより大きいようだが……」
「多分、周りの小舞台を含めて六芒星の形にすると、この大きさに丁度よくなるんじゃないかな?」
 北都の意見に、ダリルも成程と思う。
 これで、あの六つの小舞台を使うのだろうという線が濃厚になってきた。

「私達には舞台に見えるけど、私達でも『小さい』って思う舞台が、巨人族が舞台には使えないんじゃないかしら」
 リネン・エルフトが首を傾げると、布袋佳奈子も頷く。
「私も思ってた。
 この舞台は、ドワーフの人達が、巨人族と一緒にコーラスする為の舞台なんじゃないかな?」
 うんうん、とトゥレンが頷いている。リネンが彼を振り返った。
「知ってるの?」
「いんや。こっちも予測だよ」
 だが、彼等はアンドヴァリに場所を聞いて来た自分達とは違い、自力で此処を探し当てて来たのだ。
 ある程度の予測はついているのだろう。
「巨人族ならね、大きい舞台ひとつで事足りるんだろうけど、俺達みたいな小人では、一人では足りないから、ドワーフは小人も此処を使用できるように、小さい舞台を作ったんじゃねーの、と」
「私達サイズの人間が門を使用するには、周りの舞台も必要、というわけね」
「必要以上の舞台が大量にあるのは、ドワーフの遊び心なんじゃないの?
 連中、そういうの好きだからね」
 トゥレンの言葉に、先に訪れた巨人族の遺跡を思い出し、納得して佳奈子は頷く。
「それにこれなら、コンサートにも使えるものね」

 音響効果と位置についての関連性は特に無いようだと、クリストファー・モーガンとクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)は、念の為に音の反響具合を調べてみて思う。
 やはり、北都が見つけたように、関係しているのは魔術的な形、六芒星の位置なのだろう。
「へー。おたく歌姫なの。
 もしかしたら、巨人一人分くらいの能力あるかもね」
「でも、人数に余裕あるんだし、確実な方法を取った方がいいんじゃないかなと思うけど」
 それでも、能力的に、中央の舞台にはクリストファーが立つことになった。
 六芒星を位置する小舞台には、それぞれ、クリスティー、佳奈子、エレノア、ルカルカ、先程陽気に歌ったアキラに本番も頑張れと任せ、残る一ヶ所にはジール達三人が立つ。歌うのはジールだけのようだが。
 残る者達は、歌うのは任せつつ、クリストファーと共に中央の舞台に立った。
「念の為」と、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、他の小舞台にも、ジュニアメーカーで作り出したコピーを配置する。
 歌を歌わせるだけだ。劣化しても問題ないだろうと、舞台の数だけコピーを作った。
「問題は、秘宝の歌が実際に歌えるかどうか、だけど」
 クリスティーが呟く。
 頭の中にある“歌”は抽象的で、実際に口にしてみるまでは、不安な部分もあったからだ。
 できるのだろう、とは思うけれど。
 何にしろ、秘宝の歌も、それで巨人の遺跡の門を開けることも、吟遊詩人としては得がたい経験だと思う。

 クリストファーの歌い出しに合わせて、全員の声が、その旋律を奏でる。
 秘宝を受け取った時、脳裏に浮かんだ“歌”は、それぞれ微妙に違っていた。
 受け取ったものを、自分の中で、自分なりに変換した、ということなのだろう。
 きっと言葉も、遥かな昔、巨人が使っていたものとは違う。
 けれどその歌は、不協和音にならずにひとつになり、遺跡の中に響く。
 美しい歌だ、とクリストファーは思った。きっと全員が思っている。
 これは、誰かに呼びかける歌だ。

 透明な、光の柱が噴き上がったような気がした。
 舞台から発せられた六芒星の形の光は、全員を包み込み、天井の六芒星と繋がり、一気に押し上げる。
 天井も地中も空も突き抜けて、一気に上昇し、気がつくと、そこに居た。