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リアクション
☆ ☆ ☆
森に行ったグループは、それぞれの知識を生かして食材を集めていた。
道に迷わないようにということもあって、川沿いを中心にして行動している。
水着に着替えたメイベル・ポーターとセシリア・ライトは、川に入って魚を探していた。水着は、名前を書いた大きな布を胸の部分に縫いつけた紺色のスクール水着だ。派手さには欠けるのだが、いかにも臨海学校という感じがする。
「ミルディアに、川魚が捕れたらお願いって言われたけれど、ちょっと無理みたいですぅ」
何回も水の中に潜った末に、メイベルがさすがに音をあげた。
「うん、難しいよね。諦めて、山菜にターゲットを変えちゃおうよ」
「それがいいですぅ」
セシリア・ライトに言われて、ミルディアが即賛成した。
そのそばでは、トランクスを穿いてパーカーを羽織った御凪真人がキノコを採っていた。
「うーん、毒がありそう……。いや、なさそう……。しかたない、誰かに食べてもらって確かめますか」
ちょっと物騒なことをつぶやきながら、御凪はキノコをパーカーのポケットに突っ込んでいった。
少し上流に行った所では、アラン・ブラックが木の実を検分していた。みんなが手に入れた物は、一つ所に集めて積みあげてある。山菜などは、後でアランが吟味して、食べられる物とそうでない物を選別する予定だ。
「ああ、そこに積んでおいてください」
「分かりました。ここですね」
アランに言われて、アレフ・アスティアはかかえていたスイカで丁寧に小山を築いた。こんなに森の中にスイカがあるというのも、かなり不条理なことだが、臨海学校にはなくてはならないアイテムだ。
「アレフー」
川の中から、水着姿のレイ・レイニーが、手を振りながら大声でパートナーを呼んだ。
「やれやれ。レイ、少しは手伝ってください」
「もう充分集めたじゃない。少しは遊んでよ」
川から上がってきながら、レイがアレフに言った。
「まだまだ足りませんよ。もっとたくさん……うわ、何をするんだ。レイ、やめろ……」
腕を引っぱられて、アレフが思わずいつもの冷静さを崩して叫んだ。そのまま、川に引きずり込まれてしまう。
「なんてことをするんだ。ふざけすぎだぞ」
川の中に尻餅をついて、アレフが叫んだ。かけていた眼鏡が半分ずり落ちて、珍しい彼の素顔が顕わになっている。
「だって、つまんないんだもん。つまんない、つまんない」
抗議するように、レイがアレフの集めた果物を彼に投げつけた。
「こ、こら、やめろって」
飛んでくる果物を腕で防御しつつ、アレフが言った。さすがに、スイカが飛んできたときは完全に身を翻して避ける。川に落ちた果物は、そのまま下流へと流れていった。
「もったいないことを。また集めなおしですか」
眼鏡をかけなおして冷静さを取り戻すと、アレフは溜め息をつくように言った。
「あった。少し種類が違うみたいだけれど、この香りはラベンダーだわ。うーん、パラミタ・ラベンダーとでも名づけようかしら」
小さな紫の花をつけた香りのいい草をたくさん見つけ、無崎みつなは小躍りして喜んだ。
両手にかかえるほどハーブを集めていると、蔓草の葉を集めているミルディア・ディスティンと和泉真奈に出会った。
「葡萄の葉ですか?」
何に使うつもりだろうと、みつなが二人に訊ねた。
「これって、魚のつつみ焼きに使えるらしいんですよ」
真奈が、パートナーの方を見て言った。
「そうなんだよ。後で、あたしが食べさせてあげるね」
ミルディアは、みつなに言ってニッコリと笑った。
「獲物はどこじゃあぁぁぁ」
叫びながら、褌姿の武神牙竜が獲物を求めて森の中を走っていく。
「どこよおぉぉぉ」
武神のハイテンションが乗り移ったリリィ・シャーロックも、同じように叫びながら走っていった。さすがに、こちらは女性なので褌姿ではないが。
それにしても、こんなに騒がしいのでは、とても獲物が捕れるはずはない。捕れるはずはないのだが、追いたてる役にはたってしまったようだ。
「この足音は……」
耳をそばだてて、大草義純は言った。すかさず、パートナーのジェニファー・グリーンがランスを持って身構える。
先ほどまで聞こえていた武神の雄叫びが消えると、入れ替わるようにして何か獣の怒濤の足音が近づいてきているのだった。
「きた! イノシシだ!」
アサルトカービンを構えて、大草が叫んだ。
間髪入れず発砲する。
ダメだ、外れた。
「あたしの後ろに!」
ナイトであるジェニファーが、武神を守るようにして前に出た。
森の中に悲鳴が響いた。
「何ですの、今の悲鳴は」
トライデントを使って川魚を捕っていたテレサ・カーライルが、リリィの悲鳴を聞いて水から顔をあげた。
「むこうよね」
岸近くにいたマリカ・ヘーシンクは、素早く川から上がって、声のする方にむかって走りだそうとした。下半身がスパッツ型のユニタードタイプの水着の表面から、流れるようにして水が落ちていく。
「いったい何が出て……」
言い終えるまもなく、ほとんど出会い頭にマリカへイノシシが突っ込んできた。
「なんの!」
ほとんど本能でマリカの身体が動き、イノシシの牙をつかんだ。敵の勢いをそのまま利用し、一本背負いのようにして後ろへと思い切り投げ飛ばす。
がつんと川縁の岩に頭から落ちたイノシシが、川岸に倒れて腹を上にむけた。そこへ、テレサのトライデントが止めをさす。
「やったね、テレサさん」
マリカは、思いもかけず仕留めることができた大物を前にして大喜びだ。よく見ると、イノシシの身体のあちこちには細かい傷がある。ここに飛び込んでくるまでに誰かと戦っていたのだろう。
「はあはあ、こっちに、イノシシきたわよね」
「おお、やっつけたんだ」
草の葉や泥に全身まみれたジェニファーと武神が、息を切らしながら現れた。自分たちがいったんは捕り逃がしたイノシシが、無事仕留められたことにひとまず安心する。
「では、後はあたしがやるからね」
さすがに獣をさばくのはやったことのある者にしかできないと、ジェニファーがそれは一人で請け負った。
思いもかけず大物がゲットできたころ、下流でも事件が起きようとしていた。
「真っ赤なキノコさん、美味しそう。紫キノコさん、素敵だもん。まだらのキノコさん、最高よ♪」
川の中程にある岩に生えているキノコたちを、柳尾なぎこが鼻歌交じりに採っている。見るからに毒キノコのような気がするが、本人はまったく気にしていないようだ。
「やれやれ。無邪気だねぇ」
泳げない東條カガチは岸でそんなパートナーの姿をのんびりと眺めていたのだが、ふいに彼女の背後に迫る黒い影に気づいた。それは、川の水の中を蛇行しながら近づいてくる、かなり巨大な生物のようだ。
「後ろ!」
カガチが叫んだそのとき、水中から巨大サンショウウオが現れた。
「きゃー」
襲い来るぬめぬめしたサンショウウオに、なぎこが悲鳴をあげた。
「早く、こっちへ」
カガチは、必死に叫んだ。なぎこが手の届く所に来なければ、せっかくの光条兵器も使えない。泳げないこの身が恨めしかった。
水の中では簡単に追いつかれるかと思ったが、タイミングよく流れてきた大量の果物やスイカに、サンショウウオの注意が一瞬逸れた。その隙に、なぎこが岸に足をかける。
カガチが、なぎこの手をつかんで引っぱった。だが、水から飛び出したサンショウウオが、そんな二人に飛びかかろうとする。
「今行くぞー!」
突然声がしたかと思うと、バーストダッシュする紫桜遥遠にかかえられた緋桜遙遠が、エンシャントワンドをサンショウウオにむけて構えていた。テント設営後に見回りに出たのだが、みごとに役に立ったというわけだ。
「吹っ飛べ!」
二人に飛びかかろうとしていたサンショウウオの下から炎の柱が噴き上がった。炎につつまれながら、サンショウウオが空高く吹き飛ばされる。
紫桜遥遠が、剣を天に突き上げた。落下してくるサンショウウオがみごとに串刺しになる。
「しっかりと黒焼きにしますかね」
両手の間に炎を生み出して、緋桜遙遠は面白そうに言った。
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