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令嬢のココロを取り戻せ!

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令嬢のココロを取り戻せ!

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 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)がどたばたと壇上に現れた。黒服に仮面という、ただでも目立つ姿に、前座、と書かれた鉢巻が異様だ。
「俺は落語を披露させていただきましょう」
気取った態度で、彼は言った。
「とある男が父親に『この娘さんと結婚したい』と話しますと、猛反対。よくよく聞けば、彼女は、父親が若い時に間違いを犯し、余所の奥様に生ませた子だと言うではないですか。つまり男とは異母兄妹。絶望した男が涙にくれておりますと、母親が訳を尋ね、男は諦めるしかないと頭を垂れます。
すると母親が『大丈夫、お前達は結婚できます……誰にでも、間違いはあります。実はお前は、父さんの子ではないのです』……えー。おあとがよろしいようで」
即座にシャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)によるハリセンが、クロセルの頭を見舞った。ぎゅうぎゅうとクロセルを押さえつけながらシャーミアンがひたすら謝罪する。
「相手をわきまえなさいっ!!!! エレーナお嬢様、クロセルが大変な失礼を致しました……申し訳ございません!!」
「……なるほど……遺伝学的に……」
と、エレーナ嬢。

 粗暴な男そのものといった風貌の黒髭 危機一髪(くろひげ・ききいっぱつ)が、ぬっと現れる。
「んじゃ次は俺だな。若い男が集まって、ろくでもない話が始まった。誰のモノが一番大きいか、てな話だ。最終的には『きっと腕ぐらいの大きさはあるだろう』とドージェがパラミタ一だと話が締めくくられようとした時だ。ある男が『腕ぐらいだなんて小さいな』と反論したんだ。その言葉に他の男達がありえないと色めきたったが、男はしたり顔でこう言った。
『葦原島に住んでる俺の親友が空京に単身赴任してる間に奥さんが孕んでるんだ、そりゃあデカイのを……」
 そのとき顔を真っ赤にしたシャーミアンが黒髭を恐ろしい力で引っつかみ、樽に放り込んで蓋をし、くぐもった喚き声の抗議もものともせず、釘付けにした。そのまま樽を庭園の横手の斜面に投げ捨てる。
「……大変なお耳汚しを致しまして……申し訳ございませんっ!」
エレーナはきょとんとした表情で、
「……はい」
と言ったのだった。

 可愛らしいドラゴンニュートのマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)がチョコチョコと進み出た。
「私も小話を披露させて頂きますね。ある男が百万G入りの財布を拾い、大喜びで家に帰り、大酒喰らって眠ります。翌朝、拾った財布について妻に尋ねると、
『寝惚けてるの?』
夢かと落ち込む男に妻は『あんたなら稼げ』と言い、男は酒をやめ、仕事に精を出し出世しました。
そんなある日、妻がそっと例の財布を差し出します。
『降ってわいた大金があると夫は駄目になる』
と、落とし主不明で戻ってきてからも隠していたというのです。騙した事を謝る妻に男は礼を言い、
妻は気分直しに酒を出そうといいました。男は笑って
『やめとくよ、また夢になるといけない』……いかがでございましょうか」
シャーミアンが目を輝かせて叫ぶ。
「流石はマナ様、素晴らしい小話です。 某、感動いたしましたぁああああ!」
エレーナは考え深げな表情で、静かに微笑んでいた。

 金色の髪をサイドポニーにした秋田 ネル(あきた・ねる)は、自作の詩を自慢の声で読み上げた。身振り手振りを交え、華やかに。
「いかがでしたでしょうか? 美しい晩秋のお庭をイメージして創った詩です」
「あなたの声の華やかさとあいまって、映像が浮かぶようでしたね」
エレーナはそういってうなずいて見せた。