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高山花マリアローズを手に入れろ!

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高山花マリアローズを手に入れろ!

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 こうして、なんとかグリズリーの攻撃もかわして先を進むスタイン一行。しばらく行くと川のほとりで昼食をとっているシズル達に追いついた。それで、自分たちも仲間に加わり昼食を食べ始める事に……。
 と、
「大変だわ?」
 ルネが突然声を上げる。
「どうしたの?」
 尋ねるシズルにルネが答えた。
「今、猛さんからまた連絡が入ったの。『ミュゼットの容態は刻々と悪くなっていく、早く帰って来い』って」
「ええ?」
 シズルは困惑した表情を浮かべた。
「困ったわね。これでも十分に急いでいるのよ。でも、ただでさえ人数が多すぎる上に、みな疲れきっていて、急ぐにしても限界があるわ……」
「よし、じゃあこうしようぜ!」
 源 鉄心(みなもと・てっしん)が立ち上がった。
「俺が、マリアローズを預かって、一足先にミュゼットの元に向かう」
「君がか?」
 スタインが鉄心を見上げた。
「ああ。必ず届けてみせる」
「しかし……」
 スタインは迷っているようだ。
「なにためらってるんだ? もしかして、俺が信用できないとか……?」
「そういうわけじゃないけど……でも君一人だけでは……」
 と、九条 風天(くじょう・ふうてん)も立ち上がった。
「ボクも行きます。何かの役には立つでしょう」
 さらに、鉄心のパートナーのティー・ティー(てぃー・てぃー)も立ち上がった。
「私も行きます」
 その顔を見て、スタインがおや…? という表情をする。
「もしかして……あなたは、ティー・ティーさんではないですか?」
「はい。教導団のジャスティシア、ティー・ティーです。見知っていただけているようで光栄です。大事な人の命がかかってるから、人に託すには抵抗があるかもしれませんけど……出来たら頼って欲しいです」
「分かりました」
 スタインはうなずいた。
「みなさんに全てをおまかせします。よろしくお願いします」
「話は決まったな!」
 そう言って、鉄心は一人の少女を指差した。
「スタインさん。マリアローズは、俺たちが責任を持ってミュゼットさんに届けるぜ。その代わりに……といってはなんだけど、そいつのこと、面倒見てやってくれないか?」
 少女は花を手に入れて気が抜けたのか、安心したように眠っている。
イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)っていう名前だ。チビだが何かの役には立つかもしれない」
 スタインはうなずいた。
「分かった。いいだろう。そのかわり、マリアローズは必ずミュゼットに届けてくれ。頼むよ」
「もちろん」
 笑顔で答え、鉄心はティー・ティーや風天とともにマリアローズを持って走り出した。



 こうして、3人は風のように山道を下っていく。しかし、早速行く手に敵が現れた。食虫植物だ! 風天が先頭に出る。
「戦いは僕に任せて、あなた方は先を急いで下さい!」
 そして、目にも止まらぬ速度で海神の刀を鞘から抜いて、食虫植物達に斬りかかった。食虫植物が次々と刈り取られていく。しかし、全てを刈り取る事は出来ず、触手が迫って来る。

「はあー!」

 迫りくる触手をものともせずに風天は斬って切って斬りまくった。風天の後に一筋の道が出来ていく。鉄心とティー・ティーはその後を追って走り続けた。
 しばらく走ると、今度はドリアードが現れた。ドリアードは鉄心の手の中にあるマリアローズを見て叫んだ。
「ちょっと、あんた。それマリアローズじゃないの? 誰の断りを得て取って来たのよ」
「あんたの女王様からだよ」
「女王? 嘘おっしゃい。あのドケチの女王が、そんな事を許すはずないじゃない」
 どうやら、このドリアードは何も事情を知らないようだ。はぐれ者のドリアードなのかもしれない。3人は無視して通り過ぎようとしたがドリアードはしつこく絡んでくる。
「ちょっと、それ、置いていきなさいよ。じゃないと、木の中に連れて行くわよ」
 そう言って、ドリアードは鉄心に向かって口から刺を吐いた。

「はあー!」

 風天が鉄心の前に入り、刀で刺をはじき飛ばす。そして、『爆炎波』で一回威嚇攻撃。ドリアードに炎が向かっていく。
「きゃっ! 何よ! 熱いわね」
 ドリアードは腹をたてた。
「もう、絶対に許さないわ」
 そういって、髪をうねらせる。ドリアードの髪が長く延び、蔦となって風天に襲いかかる。蔦はうねりながら風天の体を絡み取り、そのまま木の幹に縛り付けた。
「このまま、木の中に引き込んでやる……」
 ドリアードは風天を木に巻き付け、ぐいぐいとその体を引きずり込んでいく。
「風天!」
 鉄心が叫んだ。風天が叫び返す。
「僕に構わず行って下さい! 一刻も早く、ミュゼットさんの元へ……」
「……すまない!」
 鉄心は風天に詫びると、そのまま先を急いだ。
「素晴らしい犠牲的精神ね」
 ドリアードが風天のそばに寄って言う。
「アンタみたいな、奇麗な心の男がアタシ達は大好物なの。よかったら木の中で一緒に遊ばない?」
 すると、風天はにやりと笑った。
「せっかくですが、お断りします」
 そして、蔦の戒めから抜け出した。
「あ……あんた、どうやって!」
 ドリアードが驚く。
「巻き付かれる前に、既に斬ってあったんですよ」
 風天は答えると、斬れた蔓を地面に投げ捨てた。そして、
「疾風突き!」
 と、叫んでドリアードの急所に強力な突き技を繰り出す。
「きゃあ!」
 ドリアードが思い切り地面にひっくり返った。その上に馬乗りになり、もう一度急所を突く。
「お嬢さん。命までは取りはしません。けど、これに懲りたらいたずらは程々にしておく事です」
 そう言って、立ち上がると、風天は鉄心達が走り去った方を見つめた。そして、つぶやいた。
「どうか、無事に、ミュゼットさんの家にたどり着けますように……」