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リアクション
数字兵を狙う理由はそれぞれに違えども、薔薇の学舎のローグ、北条 御影(ほうじょう・みかげ)は得点を稼ぐために数字兵を狙っていた。
「白馬を使っても、30分」
西の樹海までの所要時間。飛ばしたつもりだが、それだけを要した。
樹海を歩いて幾らかが経った。小さく空いた更地を見張るポイント、その背後のエリアを狩場と決めた。
森にある更地は警戒されるだろう、罠を張るには適している、ならば、トランプ兵も避ける可能性がある、だからその背後のエリアを狙うのだ。
土に水を含ませたら白馬に歩かせる、範囲を広く取れば立派なゾーンだ。
ワイヤーを用いて足を取る。宙に浮きさえすれば素早さも無効だ。
淡々と御影は罠を張ってゆく。対してパートナーのゆる族、マルクス・ブルータス(まるくす・ぶるーたす)はバウンドしながら御影が張ったワイヤーに触れてみたりしている。
「急に飛び出させたら、怯むか……」
そんな事も思ってみたが、御影はすぐに手元に戻した。
多く倒す事、それは数字兵ならば可能であり、結果、得点も高くなる。
多くの兵が通ること、そして多くを見つけ倒すこと。罠を張ってからは集中の糸を張り詰める作業が始まるようだ。
樹海深くに陣取るのはチーム「PLANT」である。
手際よく作業する薔薇の学舎のローグ、柳生 匠(やぎゅう・たくみ)に感嘆の声を上げたのは、蒼空学園のプリースト、鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)である。
「なるほど、それで発射させるのか」
「あぁ、小さな石でも数があれば脅威に感じるものだからな、動きを誘導できる」
「そこへ、うちの射月が攻撃を仕掛ければ良いんだな?」
「そう、近接攻撃が決まれば威力は大きい。数を獲るには必須になる」
少しばかり緊張した様子で、虚雲のパートナーである紅 射月(くれない・いつき)は首を縦に振っていた。
「俺達は茂みに隠れてれば良いのか?」
「そうだね、合図は俺が出すよ」
そう言って匠は携帯ライトを点灯させて二人に見せた。よく見れば木々の上部、通路からは死角になる位置に幾つかの蛍光ペイントを見ることが出来た。帰り道への目印、ライトを照らせば合図盤になるというわけだ。
「もちろん俺も戦うが、頼りにしてるぜ、二人とも」
「あぁ、戦闘は任せろ」
頼りになるのは匠の方だ、これまでの行動を見れば当然に思った。ありがたい、戦闘に専念出来る。
「さて、ガンガンバトルするぜ、射月がな」
虚雲と射月、戦闘は得意分野、経験もある。出番を思いて十分に胸を高鳴らせていた。
樹海の中にあって木々の切れ目、そんな場所を見つけて蒼空学園のセイバー、樹月 刀真(きづき・とうま)と百合園女学院のナイト、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は拠点とした。
セイバーとナイト、そして刀真のパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はプリーストである。戦闘を行うにはバランスが良い。
「それで、ボクと月夜おねぇちゃんが左右から片腕ずつ相手して、刀真おにぃちゃんが後ろからズバーっと攻撃…… で、あってます?」
「あぁ、隠れるのは、こことそこだ」
刀真は拠点とした木々の切れ目の空き地隅と隅を指差した。
「当然パーティ戦闘の方が有利だ、でもこの戦法は二人が単体で隠れていなきゃならないから、少し危険だぞ?」
特に刀真のパートナーはプリーストなのだ、実の所、直接の戦闘は避けたい。
「大丈夫、いざとなったらボクが月夜おねぇちゃんを守るから、安心して」
「だからって俺がここを離れる事は……」
刀真が森を見回り、絵柄兵を発見次第、拠点に誘導してくる事。ここまでが戦略なのだが、刀真にすればリスクが高まる一方だった。
「大丈夫、私たちは負けないのです」
「ん? どうして?」
「かわいいは正義! 正義は決して負けません」
月夜の肩に飛びついて、ヴォネガットは笑顔を見せた。可愛さが二つ、咲いていた。
「分かった。その代わり俺が戻ってない時は戦闘しないと約束してくれ」
頷くヴォネガットが手の甲を差し出す。月夜、そして刀真もそっと重ねる。想いもそっと、集まり重なったようだった。
樹海において、いち早く数字兵とのチェイスを始めたのはチーム「カードバスターズ」のようです。
木々の間を駆けるは「クラブの5」、追いし面々は皆に速い。
「行くですぅ」
「はいっ」
隊の中心に飛び出して四方の面々に手をかざすのは百合園女学院のプリースト、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)とパートナーのプリースト、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)である。二人は声を揃えて、
「パワーブレス!!」
と唱えた。光を受けて飛び出したのはシャンバラ教導団のソルジャー、比島 真紀(ひしま・まき)のパートナーでドラゴニュートのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)と、蒼空学園のナイト、菅野 葉月(すがの・はづき)のパートナーで魔女のミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)と、イルミンスール魔法学校の高月 芳樹(たかつき・よしき)のウィザードトリオである。
息を揃えて声を揃えて、
「サンダーブラスト!!」
を同時に放たれた強力魔法。辺りの木々に雷の矢が貫き落ちる。3つが重なるは花火の如く、いや、爆発のようにも見えて取れた。
同時行動菅野 葉月(すがの・はづき)は、広範囲無差別落雷からチームを護るべく、小型飛空挺を空へと放っていた。だいぶ前方の敵に放っているとは言っても万が一に備える事もナイトの役目。飛空挺だけでなく、その身を投げ出して護れるように構えてもいたのだ。
サンダーブラストの一撃は数字兵に落ちたようで、動きが止まった一瞬に瞳を見開いたのは、比島 真紀(ひしま・まき)と、高月 芳樹(たかつき・よしき)のパートナーでヴァルキリーのアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)である。飛び出す二人、真紀のアサルトカービンが兵の両足を撃ち抜く、そこへアメリアがソニックブレードを放ちて勝負あり。
振り下ろされた一撃が数字兵を裂き、真っ二つになった瞬間に煙が現れ、煙が晴れれば一枚のトランプが地面に向かって舞っていた。
アメリアは手に取る、トランプを。記載はもちろん「クラブの5」。
何とも良きかなコンビネーション。参加者の中でもレベルが高い面々が組んでいる事もあってか、模範の様にも見える事だろう。戦闘においては、と加えておこう。
何しろ3つのサンダーブラストが辺り一帯に降り注いだのだから。
力を抑える事が課題となりそうである。
他プレイヤーも他チームも、皆がみんな移動を始める中、本陣付近の上空から、四方八方に目を光らせている飛空挺が二機。
目を細めて見下ろしているのは蒼空学園のウィザード、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)である。そこ空を舞う一機、パートナーの紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)から通信が入った。
「ねぇ、遙遠、本当に居るの?」
「あぁ、居る、それだけは間違いない」
間違いないと遙遠は言い切った、しかし、確証は一つも無い、それでもノーム教諭の言葉に鍵はある。姿かたち、獲得ポイント、能力値に至るまで不明な事ばかりであるのだが。
今度も通信。チームの相棒、蒼空学園のセイバー、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)である。
「本陣付近は、いかがです?」
「ダメだ、そっちは?」
「まったくです、と言っても先ほど到着したばかりなのですが」
「そうか、匠からも連絡は無いな」
遙遠が匠と呼んだは柳生 匠(やぎゅう・たくみ)の事であり、ジョーカーを見つけ次第、狼煙での連絡をくれると言ってくれた協力者である。
「分かりました、異変があればすぐに連絡します。それでは」
遙遠が本陣付近から各エリアの手前までを、ヴォルフリートが各エリアの巡回捜索を担当している。
一番の大物を仕留めること、それがチーム「ワイルドカード」の目的である。
ノーム教諭は言った。全部で53体のトランプ兵を放った、と。
絵柄は4種、数字は13。数字・絵柄だけであるならば1枚多い、つまりあの言葉はワイルドカード、「ジョーカー」が居る事を意味しているのではないか。
広大なエリア全体が捜索対象である。己の推論に信念と希望を持って、ジョーカーを捜し行く。
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