校長室
生贄の遺跡を攻略せよ!
リアクション公開中!
蒼空学園図書館は、イルミンスール魔法学校ほどではないが、かなりの蔵書量を誇っている。 休日でも多くの生徒で活気のある図書館の窓際の席に座って熱心に本をめくっているのはヒメナ・コルネット(ひめな・こるねっと)だ。 内気そうだが、黒い瞳には強い意思が宿っている。 「そろそろ連絡があっても良いころですが」 机に置かれた携帯電話を見つめているが、鳴る気配はない。 電話の横には一枚の用紙があり、「遺跡調査団募集」の文字が躍っている。 1・出発の朝 「遺跡調査団募集」のお知らせには、ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)の名前があった。 ルミーナは、 御神楽 環菜(みかぐら・かんな)のパートナーで美しい6枚の羽を湛えた守護天使だ。 『アトラスの傷跡』近くに、まだ最深部まで調査されていない遺跡があるので、その調査隊を募りたいというのが用紙に書かれた趣旨だが、遺跡最深部まで進むためには「大切な人を差し出す」必要があると明記されている。 用紙を見た生徒たちは、それぞれに「大切な人」を思い浮かべ、遺跡調査への参加を迷っていた。 出発日、朝日が昇る前の集合にも関わらず、ルミーナの元には蒼空学園生徒だけではなく、他学校からも多くの生徒が駆けつけた。 遺跡探検に出発する前に、事前の準備を行っていたものも多い。 募集要項にあったルミーナに購入を頼んだものも多くいる。 仲間を募って グループで動くもの、ルミーナを心配して護衛をかってでたもの、遺跡調査を目的として様々なアイテムを用意したもの、思惑はそれぞれだ。 集まった多くの生徒たちを前にして、今回の遺跡探検の依頼主、シャンバラ人のシリウスが目的を話す。 褐色の肌と強い瞳が印象的で、人を魅了する力を持っている。 「私は、各地に点在するシャンバラ古王国時代の遺跡を巡り、『女王器』を集めています。今回の遺跡最深部 にも女王器が残されているとの文書を発見しました。みなさん、是非ご協力をお願いいたします。助けてください。それでは、日の出と共に出発です!未知の遺跡です、きっと幸いがあるはずです」 シリウスの言葉には、人を明るくする力がある。 東の空が明るくなっている。朝日が昇るまでわずかな時間しかない。 グループを組んだものはそれぞれに荷物を確認している。 グループ【生贄が必要になるまで】は9名が参加している。 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす) 葛葉 翔(くずのは・しょう)とアリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん) リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)とユリ・アンジートレイニー(ゆり・あんじーとれいにー) クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)とクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん) 緋山 政敏(ひやま・まさとし)とカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど) 翔は用意してきた人数分のヘッドライトを配る。 「遺跡内の光源だ。各自で保管してくれよ」 政敏は、ルミーナに頼んであった、マスクとロープを人数分、受け取ってくる。 カチェアは、双眼鏡を用意している。 「荒野を進むときにモンスターのいない道を探しましょう。私が先頭を歩くわ」 「俺はその後を行く」 政敏の言葉にグループ全員が頷く。 守護天使であるルミーナの周りは希望した3名で護りを固めることになった。 シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)と雨宮 夏希(あまみや・なつき) アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ) 「ルミーナさんはきっと私より強いけど・・・」 アリアは控えめにいう。 「環菜様の大切な人を危険な目には合わせません。自分もルミーナ様をお護りします」 シルバと夏希は、ルミーナを護るために今回の調査に参加している。 蒼空寺 路々奈(そうくうじ・ろろな)もルミーナの近くにいる。 振り回しても大丈夫なように安いエレキギターを持って参加した路々奈は、パートナーのヒメナを図書館に待機させている。携帯電話の電波を切らさないためにも、どこにいても電波が受信できるルミーナの近くにいる必要があった。 シリウスの護りは、下記2名が中心となって固める。 比島 真紀(ひしま・まき)とサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ) 真紀は、今回の募集に、遺跡で見つけた成果を盗もうとする不届き者がいるのではと憶測している。 ルミーナとシリウスの警護のため今回の調査団に参加したが、警護が手薄なシリウスの護りに専念することにした。 シリウスの近くに他には、 桐生 円(きりゅう・まどか)とオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)がいる。 円は女王器を見たいことも目的だが、トレジャーハンターのシリウスに興味を持っている。 五条 武(ごじょう・たける)とイビー・ニューロ(いびー・にゅーろ)も、シリウスの近くに陣取っている。武は、ヘッドライトなどのほかに、薄型デ ジタルカメラやメモ手帳を用意している。 「シリウスさん、俺、君のこと尊敬してます。探検や冒険をしたくてシャンバラに来たんです。是非、同行します」 普段は男性言葉で荒っぽい武だが、尊敬するシリウスを前に、敬語で話そうと努力しているようだ。 女王器よりも遺跡自体に魅力を感じているものもいる。 城定 英希(じょうじょう・えいき) ロイ・エルテクス(ろい・えるてくす)とミリア・イオテール(みりあ・いおてーる) 水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)と鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる) 羽入 勇(はにゅう・いさみ)とラルフ・アンガー(らるふ・あんがー) 英希はパートナーを置いて一人で参加している。遺跡が見たくて参加したのだが、 「もし大切な人を差し出すなんてことになったら、大変だから」とパートナージゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー) には1人で小旅行に行くと 嘘をついて出てきた。 ロイは、好奇心旺盛なミリアの遺跡調査の助けになればと参加を決めた。 睡蓮も事前の準備は十分だ。アウトドア用の電灯や携帯食料、調査したものを持ち帰れるだけのリュックサックなどのほかに、図書館からコピーしてきた古文書も持ってきた。資料と実物の対比や、仕掛けの仕組み、術式などについての調査を行うつもりだ。勿論、その巨大な荷物を持ち運ぶのは九頭切丸だが。 報道希望で常にカメラを持ち歩く勇は、ラルフを荷物持ち&灯り持ちにして、今回もスクープ写真を狙っている。 【蒼き導き】と名をつけたグループは小型飛行機によって遺跡に赴くことになっている。 メンバーは8名、4台の小型飛行艇が用意していた。 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー) クリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと) レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)とルーセスカ・フォスネリア(るーせすか・ふぉすねりあ) セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)とファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ) ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく) セシリアはランタン、懐中電灯、ロープ、磁石、ナイフ、ワイヤー、方位磁石、持ちやすい方眼紙と筆記用具をルミーナに頼んでいる。 メイドのナナは、簡易ティーセット(紙コップや魔法瓶水筒)、ライト、ヘルメット、長い棒、ロープなどを用意している。 進みの速い飛行隊は、本体を追い越して進むことになるだろう。飛行隊は、調査隊が安全に進めるよう進路の外敵を探知、ルミーナたちが 砂漠で窮地に陥っていたときには、空から援護することに決めた。 他のメンバーはそれぞれ隊列を作り、遺跡を目指すことになる。 ローグはその能力を生かすため、先行隊と本体の前線に分かれることになった。 先行隊は志願した3名。ローグとそのパートナーで構成された。 羽入 勇(はにゅう・いさみ)とラルフ・アンガー(らるふ・あんがー) 陽神 光(ひのかみ・ひかる) パートナーのレティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)は別行動でルミーナと行動する。 ローグであるサトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)とアルカナ・ディアディール(あるかな・でぃあでぃーる)、赤月 速人(あかつき・はやと)とカミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)は、隊列の先頭を歩く。 藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ) 光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう) 藤原 和人(ふじわら・かずと) 片野 永久(かたの・とわ)と三池 みつよ(みいけ・みつよ) が先頭集団を作り、その後にルミーナとシリウスが続く。 後方の護りは、希望した2名 藍澤 黎(あいざわ・れい)が主に気を配り、亡霊 亡霊(ぼうれい・ぼうれい)も後方につく。 他の参加メンバーは下記の通り。 レティナ・エンペリウス 神代 正義(かみしろ・まさよし) エリス・カイパーベルト(えりす・かいぱーべると) ファニー・アーベント(ふぁにー・あーべんと)とフィール・ルーイガー(ふぃーる・るーいがー) ライ・アインロッド(らい・あいんろっど)とヨツハ・イーリゥ(よつは・いーりぅ) ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)とファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす) 樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ) 各務 竜花(かがみ・りゅうか)と斗羽 神山(とば・かみやま) イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)とアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ) ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)とマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり) メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)とセシリア・ライト(せしりあ・らいと) 黒崎 天音(くろさき・あまね)とブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす) ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)とアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす) 閃崎 静麻(せんざき・しずま) とレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど) クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)とユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ) 桜井 雪華(さくらい・せつか)とヘルゲイト・ダストライフ(へるげいと・だすとらいふ) メニエス・レイン(めにえす・れいん)とミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと) ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)とロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ) ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど) バイクで駆けつけたものは、ルミーナが用意した探索に必要な道具をくくりつけ、隊列を護るように囲んで進むことになった。 小型飛行艇は、既に4機が空からの守りにある。シャンバラ大荒野は日に何度も砂嵐が起る飛行の難しい地域だ。小型飛行艇でやってきたもの以外は、今回は徒歩での移動を主として進むことになった。 今回の探索のメンバーは、それぞれがそれぞれの思惑で参加している。全てがルミーナの呼びかけに善意で応えているわけではない。宝を横取りしようと企む輩も当然のように混じっている。 さて、隊列が出発する前に、遺跡を目指したものもいる。 ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)は、独自に出発していた。 朝5時に行動を開始したが、朝日と共に動き出したシリウスたちと後に遭遇、そのまま一緒に行動することになる。 そして、もう1人神代 正義(かみしろ・まさよし)は、普段はシャンバラ教導団歩兵科に所属する熱血青年であるのに、自前のヒーローお面を被ると性格が変わってしまう特撮オタクだ。 シリアスの話を聞いている途中で、 「そうか…この遺跡にはプレシャス(財宝)が存在するのか!こいつはちょっとした冒険だな!!」 と勝手に盛り上がり、突然、 「アタック!シャンバラン!」 と指パッチンをしながら説明の途中で駆け出していった。 シリウスの言った言葉・・・ 「遺跡の入り口は巧みに隠れていて、ローグ以外には見つけにくいでしょう」を聞く前に。