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リアクション
6・罠の道
階段によって【蒼き導き】の面々は薄暗く狭い通路に連れて行かれた。
「……っくー! 俺、先頭歩いていいよなっ!? 燃えてきたぜぇっ!」
レイディスが先頭を歩こうとする。
パートナーのゆる族ルーセスカは、レイディスが方向音痴なのを知っている。
「白ぼさちゃん、ホント懲りないねぇ。ルカルカさん、ごめんだけど先頭歩いて貰っていいかな〜」
白ぼさちゃんは、ルーセスカがレイディスをからかって呼ぶ名だ。
ルーセスカの着ぐるみは熊だが、ツギハギだらけで、荒野で汚れたためか、どこかで引っ掛けたのか、めくれているところもある。
「わかったっ。じゃ、あたしが先頭ねっ」
ルカルカが先頭をあるき、パートナーのダリルが後に続く。身長が190センチあるダリルには、この通路は窮屈で頭をぶつけてばかりいる。
セシリアは、列の真ん中を歩いている。
「ワクワクするのじゃ!奥に何があるのかのぉ、ドキドキするのう」
ランタン、懐中電灯、ロープ、磁石、ナイフ、ワイヤー、方位磁石、持ちやすい方眼紙と筆記用具を用意してもらった。
杖はなるべく早く取れるようにしつつ、方眼紙に筆記用具でマッピングをしながら進んでいく。方向は方向磁石、距離は歩数を基準にして描きこむ。以外にしっかりしているのじゃ。
クリスフォーリルは、銃のほかにサバイバルナイフからワイヤー、磁場対策用コンパス、暗視スコープやライトなども用意している。
ファルチェは天井を警戒しながらあるく。スクラムが落ちてくるかもしれない。
ナナは後方にいる。
ナナは簡易ティーセット(紙コップや魔法瓶水筒)を持ってきている。
先頭を歩くルカルカ、頭を天井にぶつけているダリルが心配でならない。
「スクラムがいるかもっ!もう」
「ああ、すまない。ルカルカも気をつけるんだ。俺たちには罠を見破れるローグがいない」
レイディスはまだ先頭にこだわっている。
「ルカ、変わってくれよっ、いいだろっ!」
レイディスが大きく手を伸ばしてルカルカに触ろうとしたとき、罠にかかった。触ってはいけない壁に触れたのだ。
刃が飛び出してくる。
ルーセスカがとっさにかばう。ルーセスカの気ぐるみが裂けた。
ルーセスカがレイディスをゴム弾で打つ。
「メっ!だよ、白ぼさちゃん、ああ、また破れちゃった、あとでツギ当てしなくちゃ」
クリスフォーリルは気にしていた。
「さっきの大ムカデ、私は残るべきだったのです。残って戦った皆さんに教導団として申し訳ない」
「すまなかったのう、私が手を引いたからのう。しかし。最深部まで行きたいのじゃ。」
セシリアが言葉を続けようとしたとき、
ファルチェが叫ぶ。
「スクラムです!」
天井から音もなく落ちてくるスクラム。
ルカルカと、レイディス、セシリアが、火を使って焼き払う。
ナナはバーストダッシュからハウスキーパーで一撃する。
「逃げろっ!」
駆け出す一同。
○ ○ ○
別の道では、チーム【生贄が必要になるまで】がトラップに苦戦していた。翔が人数分用意したヘッドライトのおかげで光源は十分にあるものの、ローグがいないので、罠を見破るスキルにかけている。
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は、地図を作りつつ目につく進路以外が無いかに注意を払って進んでいるが、頬に幾つかの傷ができている。飛び出した刃をよけきれずについた傷だ。
「かなり進んできたし、もうすぐだと思うよ」
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん) はだんだん細くなる道が不安でならない。
「今度は政敏が前を歩く番よ」
カチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)が二番手を歩いていた緋山 政敏(ひやま・まさとし)を前に押し出す。
「面倒事や厄介事はごめ・・・わーったから、そんな目で見んなよ」
政敏が前に出る。
リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)とユリ・アンジートレイニー(ゆり・あんじーとれいにー)はマイペースに周囲を警戒しながら歩いている。
崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は、足を引きずりながら歩いている。
「もう、どうしてこんなに靴が汚れるのかしら」
「服も泥だらけですわ、着替えを持ってくればよかったわ」
ぶつぶつ呟きながら歩いている。一番前に出ないようする策略のようだ。
葛葉 翔(くずのは・しょう)は前にパートナーのアリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)は後方でグループを護っている。
その少し後ろに、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)と桜井 雪華(さくらい・せつか)とヘルゲイト・ダストライフ(へるげいと・だすとらいふ)がいる。
「この立ち位置、正解!」
トラップは全て前が引き受けてくれるので、安心して進んでいる。
○ ○ ○
もうひとつの階段は多くの人を異なる石造りの回廊へと誘った。数人が降りただけで動きだしてしまった通路もある。
初めの回廊の先頭を行くのは
ヨツハ・イーリゥ(よつは・いーりぅ)だ。針金を曲げただけのものを両手に持って
「両手にダウジングマシンをもって女王器がないか探そぉ」
と意気揚々である。
ライ・アインロッド(らい・あいんろっど)はヨツハをサポートしながら後ろから歩いている。
マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)が突然、立ち止まって振り返る。ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)
「ねえ、ベア・・・あたしをさしだ・・キャぁ!」
頭の後ろを矢が通る。
「マナ、相変わらず強運だな」
○ ○ ○
レティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)と陽神 光(ひのかみ・ひかる)は、宝物を探して、集団からはなれた。地下に降りる秘密の見つけたのだ。
光はローグらしく罠を避けて進んでいる。歩いた道にはスプレー缶でマーキングをして帰り道の確保にも余念がない。
途中、ゴーレムを見かけたが、隠れ身を使って避けることができた。
勇も集団から離れて歩いている。ローグのスキルを使い、他の皆が見過ごした扉をピッキングしたのだ。1つの部屋にたどり着いた。
夢中で写真を撮っている。かつての美しさがいまだに残っている。左右に多くの装飾がなされている。ラルフ・アンガー(らるふ・あんがー)は灯りをもって、勇が動きやすいようサポートに回っている。
大ムカデ退治の後、皆とはぐれてしまったエリス・カイパーベルト(えりす・かいぱーべると)が顔を出す。
「おおっ、宝じゃぁ〜」
古代の鏡台に向かって突進してくる。そのままけつまずくエリス。
「苦労してきたかいがあったのぉ」
浮かれている。
○ ○ ○
国頭 武尊(くにがみ・たける)は狭い坑道にいた。まだバイクに未練がある。
「ちきしょ!バイクさえあればなぁ。だが、なんとしてもお宝まで進んでやるぜ!」
壁を力いっぱい殴る。
「きゃぁー!」
シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)が地面に空いた穴に消える。
「おい、待て!」
滑り台のようになった穴の中で、必死にシーリルの腕を掴もうとする武尊、手と手は結ばれたが、そのまま穴の中にすべり落ちてゆく。
赤月 速人(あかつき・はやと)とカミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)、ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)とアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)は、ときどき襲ってくるスライムを銃で撃ちながら、やっと体がやっと通れる狭い坑道を進んでいる。
いつのまにか周囲とはぐれ、4人だけになってしまった。
「後ろのやつらはついてこなかったんだな」
「ローグのトレジャーセンスを信じるかどうか、まあ、この道の酷さじゃしかたないぜ」
速人は、見つけた罠にマーカーでしるしをつける。後続に触らないようにとの合図だ。
風水羅盤をもってあるいているカミュも頷く。
「あっちは綺麗な回廊だもん。私だって風水がこっち指さなかったら、あっちがよかったよ」
笑顔になると八重歯がみえた。カミュが笑うと、濁った坑道内の空気までが爽やかになる。
ドラゴニュートのアインには、この道は少々狭い。
何度も速人がつけたマーカーに触りそうになっている。
「ああ、うんざりだ、この道!どこまで続くんだい!」
赤月が叫んだ。
「みつけだぞ、きっとここだぜ」
壁を叩く。床が落ちる。4人とも地下に吸い込まれた。
黎明とネアは少し離れて、落ちてゆく4人を見ていた。
「あの穴が正解かわからないが、まあついていってみるか」
天井からスライムが落ちてくる。拳銃で撃つ黎明。黎明の光条兵器は拳銃だ。
頬がスライムの酸で焼けている。
「大変です」
ネアがヒールを使って直す。
○ ○ ○
先ほど速人が選ばなかった道を進んだものもいる。
多くの人数は、この道を選んだ。
細長い回廊のような道を進んでいる。メニエス・レイン(めにえす・れいん)とミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)は、目立たないように後方を歩いていた。
突如、道が途絶えた。ふさがれたのだ。
壁穴を通じで、小型のジャイアント・センティピートが降りてくる。
ミストラルがメニエスの前に出る。
氷術で足元を凍らせる。動きが取れないセンティピート。雷術を放つとそのまま息絶えた。
息絶える瞬間、センティピートの麻痺毒がミストラルにかかる。
水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)は慎重に行動していた。怪しい所には近場の石を投げるなり、棒でつつくなりして、罠にかからないよう動いている。事前に古文書を読んでいるので、大体の地図も頭に入っている。
「そろそろ、目的地につくころだわ」
睡蓮を護るように鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)は前後左右に気を配っている。
突然目の前を歩いていたメニエスが見えなくなった。目の前に、石の壁ができている。
はやり小型ジャイアント・センティピートが降りてくる。
『…………』
九頭切丸が爆炎波をセンティピートに浴びせる。焼け焦げるセンティピート。
睡蓮「もしかして、あの古文書の地図も罠・・・」
各務 竜花(かがみ・りゅうか)は前を歩く睡蓮の後ろ姿をみて歩いていた。ところが突然、頭上から壁が降りてきた。
はやり小型ジャイアント・センティピートが壁と共にやってくる。
斗羽 神山(とば・かみやま)が戦おうとすると、竜花が前に回った。
竜花は温和な普通の女子学生に見えるが、その割には意外と戦い好きなのだ。火術を使い、センティピートを焼き尽くす。
ドラゴンアーツで加勢しようとする神山を竜花が止める。
「ああ、1人で大丈夫だよ。いつも守られてばっかりじゃないんだからね?」
センティピートが麻痺毒を出す。
マジックローブで、防ぐ神山。
「しょうがねぇなぁ・・・フォローするか、ってこれ各務の口癖じゃねぇか」
メニエスは焦っている。衰弱してきたミストラル助けなければ。
「きっと出る方法はあるはずだわ」
そのとき、足元の岩からギターの響きが聞こえてきた。
どこからか音が漏れている。
「ここだわ」
エンシャントワンドで叩くと、床が崩れた。メニエスたちだけでなく、個室に閉じ込められた全員が下に滑り落ちる。
ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)はローグのスキルである隠れ身を使い、分かれ道に潜んでいた。
どちらも、最深部までいけるような気がする。しかし回廊は危険な匂いがする。第六感がそう告げている。
「ヒヒヒ、しばし待つか」
回廊から、続けて叫び声が聞こえてくる。
「こちらはムカデの餌場なのか。ヒヒヒ、喰われたやつもいそうだな」
狭い坑道を進み始めるナガン。
そのあとを、ジャイアント・センティピートと戦った永久とみつよがやってきた。皆とはぐれてしまった。永久は、気休め程度にランスを十フィート棒代わりにして床やら壁やらたたきながら進んでいる。
○ ○ ○
ルミーナとシリウスは一緒に行動している。
広い回廊を進んでいる。微かに天井から灯りが入っているようだ。
回廊内は真っ暗ではない。古代の彫像や美術品が回廊の左右に並べられている。
先頭を歩いているのは、ローグの五条 武(ごじょう・たける)とイビー・ニューロ(いびー・にゅーろ)だ。
ヘッドライトをつけた武は、写真を撮ったり、メモをしたり、忙しく動いているが、時々、
「そこだ」
ターニングダガーを投擲してトラップを確認、イビーに頼んで伸び縮みする棒の先についたマーカーペンで印を書き込んでいる。武はマーカーの用意していなかったが、ローグ同士の間で罠(トラップ)を見つけたら、印をつける約束をしていた。帰り道のことも考えて、危険は少しでも減らしておいた方が安心だ。
桐生 円(きりゅう・まどか)とオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は、シリウスにぺったり寄り添って離れない。
「いっぱい、いろんなの持ってるんだろうな、見たいな。ねっ、今度ボク遊びに行ってもいい、悪い子にならないからさぁ」
円もオリヴィアもこの程度の暗さは大好きだ。
魔物についてはシリウスについていれは安心、円はそう思っている。
比島 真紀(ひしま・まき)とサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)もシリウスの近くにいる。
「自分は、生贄を差し出すつもりはありません。儀式が終わるまで護衛させてください」
シリウスが頷く。
「有難い申し出です。大切な人のいない私は最深部には入れませんので」
円が口を挟む。
「ボクは行くよ。きっと女王器持ってくるよ」
真紀がきっと睨む。
「どうも嫌われているようだわぁ〜」
オリヴィアはどこ吹く風だ。
樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)もシリウスの側について最深部までいくつもりだ。そして・・・
刀真は、光条兵器「黒い刀身の片刃剣」を構えて歩いている。考え込むあまり無口になる。どうすればいい、やはり月夜を差し出すことはできない。たとえ、女王器を得ることで親の敵が討てたとしてもだ。
ロイ・エルテクス(ろい・えるてくす)は意気揚々と進んでいる。最深部に進むため、生贄になるつもりだ。別に生贄になるのが嬉しいんじゃない、ミリア・イオテール(みりあ・いおてーる)に大切な人と認められたのが嬉しいのだ。
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)とファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)がその後ろを歩いている。二人は、他人とは異なる秘めた思いをもって参加している。
城定 英希(じょうじょう・えいき)はジゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー)と一緒にいる。
「もう帰ってもいいんだよ」
英希はそういうが、ジゼルは耳を貸さない。
神殿内に置かれた調度品を見て、ルミーナが声を上げる。
「素晴らしいものばかりですわ」
ルミーナの前にはアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)がランタンをもって前を歩き護衛についている。
アリアはその1つに触ろうとしてが、思いとどまった。
どこに罠があるかわからない。最深部に行くまではルミーナをお護りしなくては。
アリアがルミーナに話しかける。
「私は、大切な人が遠くにいるのです。ですから最深部まで行くことができません」
「私もですわ。環菜は今、学園にいます」
にっこり笑うルミーナ。
「共に最深部に行ったものたちの帰りを待ちましょう」
シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)と雨宮 夏希(あまみや・なつき)はルミーナの背後の護りを固めている。
「俺も最深部には興味がないんだ。夏希は妹みたいなもんだ。人質なんかにさせないぜ。」
「一緒に帰りを待ちます」
蒼空寺 路々奈(そうくうじ・ろろな)はルミーナの近くにいる。つなぎっぱなしの携帯電話は蒼空学園に残るパートナーヒメナ・コルネット(ひめな・こるねっと)とつながっている。
「ほんと、やったね、ヒメナ!」
ヒメナは、この神殿に関する新しい古文書を発見したのだ。
「わかった、次、左ね。(前に向かって)アリアさん、次、左だよ」
「よくやったよ、お礼に・・・♪ジャーンヒメナ、聞こえる?ヒメナにささげる曲だよ」」
ギターを弾き鳴らす路々奈。
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)とファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)がその後ろを歩いている。
ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)とロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)はその後ろだ。ブレイズの背中には魔法の箒を背負っているが、時折、壁にぶつかりそうになる。そのたび、ロージーが箒の向きを直している。
金色の髪に赤い瞳を持つイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、類いまれな才能を持っている。今回の調査隊ではモンスターや罠の解除は他人に任せ、最深部に行くまでは消耗しないように心がけている。
「こうなると思っていたよ。もうすぐ女王器が見られるだろう。それまで大人しくしていよう」
「イエス」
答えたパートナーのアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)も赤い瞳をしている。銀色の髪が暗い回廊のなかでも光っている。
閃崎 静麻(せんざき・しずま) とレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)はこのグループの最後方にいた。
イーオンが静麻に話しかける。
「無傷でここまできたのか」
「まあな。もうすぐらしいな、お前の目的は女王器か」
イーオンは答えない。
「そうか、おれは迷ってるんだがね」
静麻は大切な人レイナを差し出す気はない、既に家族を失っている。しかしそのことは伏せて、最深部までたどり着こうと考えている。
ヒメナの言葉通り、左に曲がり、足元の小さなボタンを押すと扉が開いた。
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