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リアクション
2・シャンバラ大荒野を進む
天候は良い。
一同は、外敵に警戒しながらも、はるか遠くに見えるアトラスの傷跡に向かって進む。
森を抜け、草原を歩く。
いよいよシャンバラ大荒野だ。
出発したころに比べると、アトラスの傷跡がより大きく見える。
地面にはほとんど植物が生えていない。建物もなく岩や石が多い。時折、前方の進路を確認すると、局地的に発生した砂嵐が激しく渦巻いている。
シリウスを護る比島 真紀(ひしま・まき)は、特殊部隊で訓練を受けていた経歴を持っている。銃を片手に、周囲の敵に備えている。
「いよいよシャンバラ大荒野であります。油断なく参りましょう」
真紀の言葉にシリウスが笑みを返す。
「あなたが近くにいると安心です。ありがとう」
とある戦場で真紀と同じ傭兵部隊に所属していたドラゴニュートのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)が大きく頷いている。
「真紀と俺の側にいれば大丈夫だ。女王器を無事、確保しよう」
赤い瞳の小柄な少女桐生 円(きりゅう・まどか)が口を挟む。
「女王器ってどんなもんなんだろうね。シリウスさんってトレジャーハンターなんだよね、かっこいいよね、ねっ、女王器たくさん持ってるの?ボク女王器見たこと無いんだよね」
シリウスが答えようとするのを、真紀が制する。
「重要な情報はあまり漏らさないほうが良いと思います」
「おおっ〜、こわいのだわぁ〜」
円のパートナー、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が色っぽく呟く。
傍らにいたルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)がにっこりと笑う。殺伐としたシャンバラ大荒野のなかでルミーナの周りだけ花が咲いているかのような、穏やかで温かな空気が流れている。
「どんな遺跡なのでしょうね。女王器やシャンバラ女王様にまつわる物品、きっと素晴らしいものだと思うわ」
少し、周囲の空気が変わる。
小さな動物たちが逃げ出してている。
大地からなにやら音がする。低い震動が微かに体に伝わっている。
ルミーナを護るシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)は、蒼空学園に入学する以前から、未開の地の開拓や未発見の生物を探そうと放浪の旅を続けていた。大地の異変に、何者かの襲撃を察知するシルバ、剣を構えてルミーナの前に回る。
「何か来るぞっ!俺から離れるな!」
シルバの言葉に黒髪の美少女雨宮 夏希(あまみや・なつき)も、日傘として利用していた和傘を構える。この傘が光条兵器なのだ。
ルミーナの横にいた アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)もルミーナを護るために、剣を構える。
ルミーナの周りは禁猟区で護られているとはいえ、どのような敵が来るのかわからない。
地鳴りがだんだん大きくなる。
一行は迫り来る敵に、それぞれの武器を身構える。しかし、空にも、見渡す限りの荒野にも敵の姿はない。
そのとき。
地面が揺れた。
大地が裂け、調査団を取り囲むように、巨大な蟻が姿を現す。全長2mほどのジャイアント・アント(巨大蟻)だ。その体は不気味に黒光りしている。
集団の先頭にいた光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう)は、巨大なモンスターを前に震えていた。恐怖からではなく喜びの武者震いである。
「すっげー!!!こんな連中と喧嘩出来る機会なンか滅多にないけえ、思う存分暴れさせてもらうで!」
エンデュアとディフェンスシフトで自らの守りを固めると、前方にいる比較的小柄なジャイアント・アントに向かってランスを振り回し突進していく。
「じゃけん、いくぞぉ〜おりゃああああああああああああああ!」
とにかく突き進む翔一朗、ランスで蟻を攻撃する。
ジャイアント・アントの外皮は鋼鉄製のプレートアーマー並みの強度を誇っている。翔一朗の一撃は、ジャイアント・アントへの致命傷にはならないが、それでも調査団を取り囲む蟻の輪が崩れた。
「そりゃ、逃げるんじゃぁあああああああああ」
ジャイアント・アントの包囲網を抜けようと、調査団はバイクや銃に護られながら、駆け出す。
しかし藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)だけは違う方向に動いた。
彼女は一見すると育ちの良いお嬢様だが、何の因果か殺戮が大好きなのだ。
「楽しいです〜」
剣を振りかざすと、翔一朗の後を追いかけてゆく。
ジャイアント・アントの背中に飛び乗ると関節めがけて、めったやたらに剣を叩きつける優梨子。顔が血しぶきで染まっている。
アントは反転して、優梨子を地面に投げつける。
優梨子がアントの顔に剣を突き刺す。既に動けなくなっていたアントの固い顎が剣を粉々に砕く。
素早い動きで地面を転がる優梨子、蟻の集団から距離を取る。
銃を出して乱射しながら、周りを見回し、
「楽しいけど、数が多すぎますね。一旦撤退ですわ」
今度は、調査団を襲っているジャイアント・アントに向かっていく優梨子。
ジャイアント・アントはばらばらと調査団に向け襲ってくる。
優しい性格が戦闘には向かないベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)だが、相手がモンスターとなれば話は別だ。パートナーのマナやルミーナたちを護るために一団の側面に回る。迫り来る一体のジャイアント・アントに向かい、爆炎剣を使う。倒れた巨大蟻は、よろよろと立ち上がり、しかし、調査団を襲うことを止めて、蟻の一群に戻ってゆく。
集団で護りを固めるチーム【生贄が必要になるまで】にも巨大蟻が迫る。
黒髪の美少女リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)が、力を加減した氷術を蟻に向ける。蟻が寒さに動きが鈍ったのを見て、光条兵器が現れる。リリの胸のメダリオンから(体を貫いて)背中に翼状の光条が生える。黒光りする外皮の関節を、光条兵器でバッサリと切断する。胴体から二つに割れるジャイアント・アント、切断された下半身を残して、そのまま地中に消える。
「如何に大きかろうと所詮は変温動物なのだ」
同時に剣を構えていた葛葉 翔(くずのは・しょう)が声をかける。
「お見事!だけど俺もセイバーだ!戦いたいぜ!」
再びアントが襲撃をかける。
翔の剣がアントの目をつく。
緋山 政敏(ひやま・まさとし)が、足の稼働部の節をカルスノウトで攻撃。相手の移動力を奪う。
足を引きずりながらも追いかけてくるジャイアント・アント。
「遺跡内にも敵はいるんだ。戦いはまだ序盤だ、ここはまず逃げることだぜ」
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)の言葉に、頷く一同、一斉に駆け出す。
ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は、ルミーナから預かった荷物をスパイクバイクにくくりつけている。動きの取れないなか、左でバイクを操り、右手で銃を持ち、一団に襲いかかろうとするジャイアント・アントを滅多撃ちにしている。
「こっちに来んなぁ!お前らの餌はねえぞぉ!」
鋼鉄製の外皮にはダメージは少ないが、関節や目などには銃弾を受けて、一体のジャイアント・アントが横倒しになった。
クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)も腰に挿していた日本刀、月閃華と陽閃華を抜き、いつでも巨大アントを討ち取れる構えで、調査団を護りながら、アントの包囲を駆け抜ける。
セシリア・ライト(せしりあ・らいと)も光条兵器のモーニングスターを手にしている。
桜井 雪華(さくらい・せつか)は、カルスノウトを手に駆け抜ける。
閃崎 静麻(せんざき・しずま) はレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)を守って、スプレーショットを乱射している。しかし、いつもの落ち着きがない。レイナは様子のおかしい閃崎が心配だ。
一団がジャイアント・アントの囲みから逃げ出すまで、藍澤 黎(あいざわ・れい)は後方からの襲撃に気を配り、ランスを構えている。
ディフェンスシフトを使い、皆の防御を可能な限りあげる。
前方で城定 英希(じょうじょう・えいき)は、火術をかけていた。近づいてきたジャイアント・アントにドラゴン特有の怪力と身のこなしを組み合わせた武術ドラゴンアーツで殴りかかる。
英希は、戦っているうちに、一団から離れたことに気が付かない。
後方からもう一体のありが牙をむいている。このアントの巨大な顎による攻撃は鉄製の防具を易々と貫く。
顎が英希の頭にせまったとき、アントの顎に大岩が投げ込まれる。
粉々に砕ける大岩。
英希のパートナーのジゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー)が、走ってきて英希を抱えると、そのまま逃げる。
「1人で旅行なんでおかしいだろう。だから、後をつけてきたんだ」
一同は囲みから逃げ出した。
ジャイアント・アントの一群が向きをそろえ、ゆっくりと囲みを抜けたルミーナたちに襲い掛かろうと不気味な奇声を上げている。
このアントの巨大な顎による攻撃で、中で戦っているうちに傷ついたものも多い。
ルミーナたちが、再び戦闘に向け体制を整えていたとき、荒野に銃の音が響いた。
「荒野に響く銃声・・・・うーん、せめてリボルバーでもあればカウボーイ気分を味わえるんだけどな・・・」
比賀 一(ひが・はじめ)とパートナーのハーヴェイン・アウグスト(はーべいん・あうぐすと) だ。
アントの一団とルミーナたちの間にゆっくり歩いてくる。
ハーヴェインもゆっくりくる。
「間に合ったみたいだな。おい、愚痴ってる暇があったら手を動かせ手を」
顔を見合わせる二人。
ハーヴェインの言葉を合図に、銃を乱射する二人。
比賀が後ろにいるルミーナとシリウスに背中越しに語りかける。
「俺たち、遺跡にもお宝にも興味はないんだ・・・興味があるのは、こいつらだ。行けよ、ここは俺らに任せろ」
「少し多いけど、なんとかなるだろ」
黒光りするジャイアント・アントが比賀を狙って、じりじりとよってくる。
翔一朗が二人の横に駆け寄ってきた。
「俺もここに残るんじゃ。戦う方が面白いけんねぇ」
「よし、まず走るぞ。やつらをルミーナから引き離す」
ホーリーメイスを手に走り出すハーヴェイン、比賀も銃を乱射しながら後に続く。
翔一朗もランスを手に後に続く。
ほとんどのジャイアント・アントは三人に向かってきている。
残った数匹が、ルミーナたちに向かおうとしたとき、
空から、小型飛行艇が姿を現した。砂嵐に巻き込まれ、なかなか調査団を見つけることができなかったのだ。
別々の機に分乗して乗っているルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)、ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)、クリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと)はシャンバラ教程団に所属している。空から見て、地上で起こっている事態を把握し、揃って行動を開始する。
飛行艇を操縦するセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)たち蒼空学園のメンバーに飛行艇の隊列を作ってもらう。調査団とジャイアント・アントの間に、攻撃を仕掛け、大きな溝と巨大な砂煙を起こす。
クリスフォーリルは、狙撃手かつ銃格闘術を叩き込まれている銃のプロだ。的確な射撃で、数匹のアントを攻撃したのち、調査団とジャイアント・アントの間に、一斉射撃を仕掛け、大きな溝と巨大な砂煙を起こす。
残っていた数匹のアントも、目の前の敵である比賀とハーヴェイン、翔一朗に向かう。
小型飛行艇は4機横並びになって、アントの本体に攻撃を仕掛ける。巨大蟻の群れは、蒼空学園のあるツァンダ方面に走っていった。
三人の前に残されたジャイアント・アントは2体だ。
「おう、この数なら俺たちだけで大丈夫だ。少なすぎるぐらいだ」
比賀は小型飛行艇に手を振る。飛行艇は大きく旋回すると、ルミーナたちを追って消えていった。
比賀がジャイアント・アントの足の節を狙って、銃を乱射する。動きの取れなくなったジャイアント・アントをハーヴェインがぶったたく。
「・・・なあ、遺跡の事なんだけどさ」
戦いの中で比賀が呟いた。
「あぁ?何だ、急に」
「あの紙にあっただろ、大切な人を差し出す、だったっけ。もし俺たちが・・・その、そういう事になったら・・・」
「どちらかが犠牲になるってか?はっ、小さいねえお前は。契約を交わした仲だ、ちょっとやそっとじゃ切れねえよ」
もう一体のジャイアント・アントが背後から襲ってくる。
身をよける、巨大蟻はそのまま進み、目の前の岩をその強靭な顎で砕く。
「お前のセリフ・・・・・・・・くさっ」
「・・・・人がせっかくいい話してる所に・・・!」
「はいはい、しゃべってる暇があったら手を動かす」
ハーヴェインが向きを変え、翔一朗に向かっていったジャイアント・アントの加勢に行く。
「こいつら、しぶといけん・・・」
翔一朗は、既に事切れていると思っていた数体の蟻が再び動き出したことに驚いている。
「鋼鉄のからだじゃけん、剣や銃弾は届かんのじゃ。失神してただけじゃ」
砂塵は消えて、ルミーナたちの姿は消えている。
「俺らも十分戦ったし、こいつらが生き返る前に退散しようぜ」
比賀に言葉に、翔一朗が答える。
「じゃのう・・・」
ひっくり返っていたジャイアント・アントが起きだして、翔一朗に襲い掛かってきた。
「おっと、これは俺の獲物だ・・・!」
比賀が大きく開いた顎に向かって銃を乱射する。もんどりうつジャイアント・アントを翔一朗のランスが突き破る。
「さあ、行くぞ」
肩で息をする三人。
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