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暗き森の泣き声(第1回/全2回)

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暗き森の泣き声(第1回/全2回)

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第10章 魔草の叫び声に打ち勝つか否か爆音対決

「あっ、そうだ・・・!こういう時こそ校長センセに恩売っときゃ、俺・・・もしかしてなんか得するんじゃね?」
 ウィルネストは暢気なことを考えながら、マンドラゴラを捕獲する罠を張っている大地に話しかけた。
「またそんなことを考えているんですか」
 不適な笑みを浮かべる彼に、大地は苦笑いをする。
 野ウサギを捕らえるようなトラップを作り、2人は大木の傍で獲物が来るのを待った。
「何か来ましたよ・・・あれがそうなんでしょうか?」
「やけに小さいけど、マンドラゴラのようだな」
 大地たちは土に埋まったまま動き回る体長4cmの魔法草を発見した。
 声を聞かないように、イヤホンを耳につけて携帯電話の音楽、ヘビメタを大音量で流す。
「(かかったら氷術で閉じ込めてやるか・・・。折角モノホン見つけたんだから、どういう声なのかきーてみたい気もするけどねぃ・・・)」
 作戦内容をウィルネストはシャーペンで紙に書き、大地に知らせる。
 大地が了解のサインをジャスチャーで表す。
 トラップに引っかかった魔法草は逃れるようと、じたばたと葉を動かした。
「(よしっ、ここで氷術を使って閉じ込める!)」
 氷漬けにしたマンドラゴラを引き抜こうとウィルネストが魔法草へ近寄る。
 イヤホンを植物の枝にひっかけてしまい、2人の耳から外れてしまう。
 完全に氷ついていなかった魔法草が、引き抜いたのと同時に叫び声を上げた。
「うう・・・貴重な・・・体験だ・・・っ・・・」
 2人は草むらの中へ埋もれるように倒れて気絶してしまい、活動力が残っていたマンドラゴラは再び地中に根を埋めて逃げていった。



 野外演奏用の機械を重そうに抱えたルナ・テュリン(るな・てゅりん)の体力は限界にきそうだった。
「この機材はここに置いていいかしら?」
「あぁ、そこに置いておいてくれないか」
 永夷 零(ながい・ぜろ)はエレキギターを抱えてやってきた。
「ここまで機材を持ってくるのに、だいぶ時間がかかったな」
 台車からアンプを降ろし丁度いい位置に置き、零はふぅっと一息つく。
「爆音を流せばマンドラゴラの叫び声だって聞こえないだろうな。(たぶん・・・)」
「へぇ〜、いいアイデアじゃないの」
「ぜひ聴いてみたいです」
 演奏の準備をしている零たちを見つけ、波音とアンナが声をかける。
「この方法で成功すればいいんだけど。失敗しちゃったらただの野外コンサートよね」
「それを言わないでくれ・・・」
「あたしたちは特等席で聴けるってわけね。ようしっ、マンドラゴラを引き抜く時に大声を上げてみよう」
 波音とアンナは発声練習を始めた。
「ねぇ、向こうから誰かくるわよ。何かに追われているみたいだけど」
 準備を終えたルナが、息を切らせながら全力で走るゲッコーたちを人差し指で示す。
「その後ろにいるのは・・・マンドラゴラ!?」
「かなりのサイズだな・・・」
「あれだけあれば、いい薬が出来そうね」
 魔法草を探し歩いていた恵が、波音の傍からひょこっと顔を出した。
 零はベースを持ち、彼の傍で同じくエレキギターを抱えたルナは演奏のスタンバイをする。
「来たわよー!」
 恵の合図で2人は演奏を始めた。
「力いっぱい叫ぶよー!せーの・・・あぁあああぁぁあ!!」
 マンドラゴラの両サイドへ波音たちが掴みかかり、魔法草の走る速度を利用して大声を上げながら後方へ思いっきり引っ張った。
「ギョァアアアエエエ!」
 地中から引き抜かれた魔法草は、不気味な金切り声を上げた。
 追われていたゲッコーとイリスキュスティスは、まともに声を聞いてしまい即、気絶してしまう。
「耳が・・・もう・・・駄目・・・」
 恵たちも気絶して、バタンッと倒れてしまう。
「つ・・・次は負けねぇ・・・・・・ぜ・・・」
 ベースが零の手から滑り落ち、彼は雑草の中に倒れこみ気絶した。



「どうやら引き抜いた時に気絶してしまったようですね」
 土の上に倒れこんでいる零たちを見て、武士は冷静に状況を把握する。
 気絶している彼らをマンドラゴラが大口を開けて食べようとしていた。
「とりあえず人命兼、魔法草の確保といったところでしょうか!」
 武士は長いロープをマンドラゴラに括りつけ、バイクに乗り引きずり出そうとするが、魔法草は捕縛から逃れようと暴れだす。
「うぁああ!?」
 転倒してしまい地面に身体を叩きつけられた。
 幸い土の上だったため、かすり傷程度ですんだ。
 無茶苦茶に暴れ、自ら土から出てしまった魔法草は叫び声を上げ、零たち同様に武士もその場で気絶してしまった。
「おっ、すでに引き抜かれたやつがいるぜ。しかもかなり大きいな」
「楽して手に入れるなんてツイてますね」
 ヘッドホンで耳を塞ぎ、大音量で音楽を聴いていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が通りがかる。
「日頃の行いのおかげだろう」
「(日頃の・・・ね・・・どの口で言っているのでしょうか)」
「せっかく用意した道具が無駄になってしまったけど、それはそれで結果オーライということだな」
「で・・・どうやって運ぶんですか?」
 100kgはありそうなマンドラゴラを前に、運ぶ方法を考えていなかった静麻とレイナは、その場で今更ながら考え始めた。